表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤独死したおっさん、高校時代へタイムスリップ  作者: 雪だるま
橘彩音ルート

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/46

30 両親へのプレゼント

 十二月。


 夕方。


 街は完全にクリスマスだった。


 イルミネーション。


 赤と緑。


 ケーキ屋の行列。


 カップル。


 クリスマスソング。


「のだぁ……」


 レイは人混みの中で妙に感動していた。


「都会、光りすぎなのだぁ……」


「田舎のおじいちゃんみたい」


 橘彩音が笑う。


 今日は私服だった。


 白いコート。


 マフラー。


 冬らしい格好。


 可愛い。


 めちゃくちゃ可愛い。


「メリークリスマスなのだぁ♡」


「まだクリスマス前だけどね」


「気分なのだっ♡」


 だが。


 今日のレイはいつも以上に機嫌が良かった。


「うむ!」


 なぜなら。


 ついに。


「原稿料もらえたのだぁぁぁぁ♡」


「ほんと嬉しそう」


 レイは封筒を抱えていた。


 雑誌投稿。


 小コラム。


 ゲーム誌の読者コーナー。


 小さい掲載。


 小さい金額。


 でも。


 人生初の“文章で稼いだ金”。


「のだぁ……」


 レイは本当に嬉しかった。


 前回人生。


 何かを“作ってお金を貰う”ことに、ずっと憧れていた。


 でも。


 怖くて本気でやらなかった。


「うむぅ……」


 だから。


 数千円程度でも。


 めちゃくちゃ嬉しい。


「おめでと」


「のだっ♡」


 彩音が少し笑った。


「最近ほんと頑張ってるよね」


「うむ!」


 レイは胸を張る。


「量を書きまくってるのだぁ♡」


「授業中もネタ帳開いてるけど」


「創作魂なのだぁ♡」


「教師に怒られてたじゃん」


「芸術家は孤独なのだぁ……」


「クラスに友達いるでしょ」


 だが。


 レイは今日は本当に浮かれていた。


「のだぁ♡」


 その時。


 レイはデパートのショーウィンドウを見た。


「…………」


 ネクタイ。


 マフラー。


 財布。


 食器。


「のだぁ……」


 真顔になる。


「どうしたの?」


「吾輩、ママとパパにプレゼント買うのだぁ」


「…………」


 彩音は少し目を丸くした。


「え、偉い」


「のだっ♡」


「何買うの?」


「のだぁ?」


 レイ、停止。


「…………」


「…………」


「何買えばいいのだぁ?」


 彩音、吹き出す。


「ノープラン!?」


「うむっ♡」


「勢いだけで来たの!?」


「愛はあるのだぁ♡」


「雑!!」


 だが。


 レイは本気で悩んでいた。


「のだぁ……」


 前回人生。


 親にプレゼントなんて、ほぼ買っていない。


 照れ臭かった。


 面倒だった。


 でも。


 タイムスリップしてから。


 母親のご飯。


 父親の何気ない言葉。


 全部。


 妙に沁みるのだ。


「うむ……」


 レイは真剣にショーケースを見つめる。


「ママぁ……」


「うん」


「なんかエプロンとか好きそうなのだぁ」


「いいんじゃない?」


「あとパパぁ……」


「うん」


「…………」


「…………」


「わからないのだぁ」


「お父さんかわいそう」


 彩音は笑っていた。


 だが。


 レイはかなり真面目だった。


「男の人って何あげれば喜ぶのだぁ?」


「お酒とか?」


「のだぁ……」


「あと仕事で使うものとか」


「うむぅ……」


 レイは考え込む。


 そして。


「マフラーなのだぁ!」


「おぉ」


「冬だし暖かいのだぁ♡」


「いいと思う」


「うむ!」


 レイは急に元気になった。


「買うのだぁ♡」


 そして。


 二人で店を回り始めた。


「これどうなのだぁ?」


「派手すぎ」


「のだぁ」


「これは?」


「お父さんには若すぎる」


「難しいのだぁ……」


「ちゃんと考えてるの偉いけどね」


 彩音は笑っていた。


「…………」


 レイはふと彩音を見た。


「のだぁ」


「何?」


「お主、将来良い奥さんになりそうなのだぁ♡」


「っ……!」


 彩音、真っ赤。


「急に何!?」


「一緒に買い物してくれるの優しいのだぁ♡」


「そ、それくらい普通でしょ」


「普通が一番すごいのだぁ」


「また変なこと言ってる」


 だが。


 彩音は少し嬉しそうだった。


「…………」


 そして。


 レイは突然立ち止まった。


「のだぁ?」


「どうしたの?」


「彩音へのプレゼントも必要なのだぁ」


「えっ」


 彩音が固まる。


「い、いいよ別に!」


「駄目なのだぁ!」


 レイは真顔だった。


「彼女なのだぁ♡」


「うぅ……」


「クリスマスなのだぁ♡」


「…………」


 彩音は顔を逸らした。


 耳まで赤い。


「……高いのはいらないからね」


「のだっ♡」


 レイはニコニコしていた。


「うむ!」


 そして。


 アクセサリー売り場を見る。


「…………」


「…………」


「のだぁ……」


「何」


「高いのだぁ……」


「高校生だからね」


 レイは真剣だった。


「もっと売れっ子にならなきゃなのだぁ……」


「そんな焦らなくていいって」


「だが吾輩、稼ぐのだぁ」


「…………」


 彩音は少しだけレイを見た。


 本当に。


 最近のレイは変わった。


 前向きで。


 いっぱい動いて。


 いっぱい笑う。


「…………」


 その時。


 レイは小さなヘアピンを見つけた。


 シンプル。


 可愛い。


「のだぁ♡」


「?」


「これ、お主に似合いそうなのだぁ♡」


「…………」


 彩音は少し固まった。


「…………」


 レイは本当に嬉しそうだった。


 親へのプレゼント。


 彼女との買い物。


 初めての原稿料。


「のだぁ……」


 前回人生では。


 想像もしなかった冬だった。


「うむっ♡」


 レイは笑った。


「今年のクリスマス、人生でかなり好きなのだぁ♡」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ