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あぶはちとらず  作者: 井氷鹿
Grisp all , Lose all. Ⅰ 1995年 春 亘編
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落花情あれど流水意なしⅤ The love is one-side.

「ところで、社内でよく話す子って誰かいる」


「は?」


 何ですか突然。女性と話すって、あんまり無いけど。

 うーん。


「生方さん?」


「経理の? 口悪いけど、経費だけは神速の」


「ほんと助かってます。先輩の分まで毎回一緒に出すから」


 両手で角を作ってやると、先輩は「はいはい」と笑って頷いた。


「あはは、学生インターンなんて初めてだからな。子供に金払わせてって言いたいんだろうな」


「良い人っすよね」


「他には」


「……すわさん?」


 だったよな。名前を覚えるの苦手なんだよ。


「久美ちゃんか。総務の。相談役してんだよな」


「先輩と諏訪さんの夫婦漫才、好きです」


「なんだそれ。今年からインターン制度入れたからな。各部署のプレッシャーすごいんだよ」


 言いながら生を飲み干し、空のグラスを掲げ「レモンハイ」と大声で叫んだ。

 わぁ、これもジョッキで頼むんだ。

 しかし、元気だこの人。


「これ、先輩の案だったんですよね」


「俺だけじゃないよ。お国も噛んでんだ」


 届いたレモンハイで一息つく。

 もう、半分飲んでんじゃん。


 バブル期の青田買いと違って、今は氷河期だからなぁ。

 残りカスでもいいから、何か無いんですかね。


「この数年、地方に良い人材、流れちまったからな。学生の質は上がってるはずなのにさ」


「確かに」


 先輩はそういってまたジョッキを傾けた。

 飲み干す勢いだな、よく飲めるよ。


「外に打って出られる人材が欲しいんだよ。内需だけじゃ回らないからな」


「バイリンガル、まではいかなくても」


「そういうこと」


 国立大だけど、俺らのとこは企業寄りだから顕著なんだと、先輩は笑った。


「だからお前を真っ先に寄こしたんだよ」


「僕なんか推薦されてたんですか?」


「ヤマちゃん先生がな」


 やまちゃん先生? ええっ、山寺助教授ってそう呼ばれてたんだ。

 へぇー。


「……でも人妻好きは知らなかったなぁ」


「ぶはっ」


 思いっきりむせた。

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