6 天敵
ハードメイルに身を包むオークの群れは、エルフの村を襲おうとしている。
村にはみんなが……
みんなは俺を村八分にした。
でも、それはみんな力を持っていないから。
怖いから。
それに――
それでもローザは、俺を守ってくれた
農民は必ず俺が守る。
おもむろに立ち上がると、声を張り上げた。
「待て! 薄汚れたオーク共。ここから先へは行かせない!」
オークは行進をやめ、こちらに視線をぶつけてくる。背丈は高く、丸太のように太い腕には斧や槍を握りしめている。
「なんだなんだ? てめぇ? 見たところただの小汚い農民じゃねぇか? 兄貴、どうする? こいつも殺して食っちゃう?」
兄貴と呼ばれた他の連中よりも一回り大きいオークは、ニタニタと笑いながら近づいてきて俺を見下す。
「威勢がいいのはいいけどさ、こちとら急いでいるのよ。新しい領主とやらが来る前に仕事を終えなくちゃなんねぇからね。おい、おめぇら、とっとと殺してしまえ。こいつの肉は早い者勝ちだ」
「ヒャッハー!」
一斉に飛びかかってくるオーク共。
右手に14体。
左手に6体。
正面からは14体。
背後から4体か。
いいだろう。
こっちも一匹ずつ血祭にあげる手間が省けた。
「死ねや。小僧!」
俺は瞑目し、スキルを発動させた。
――奥義。稲刈り斬!!
稲刈り。
それは熟したイネを収穫するために切り取る農作業である。 プロの農民が一日がかりで収穫できる量は、1反歩(「いったんぶ」=10アール=100×10メートルの広さ)と言われている。
稲刈り斬は、それをたったの一撃で刈り取る驚異的な斬撃農奥義である。
俺の手には白銀に輝く鎌が現れ、同時に刃の先から一陣の真空派が生まれる。
プロの農民の前に、無防備な恰好のまま襲い掛かってくるなんてなんて間抜けな野郎共だ。飛び交うオーク達は、鋼の鎧もろとも分裂されていく。
顔が真っ二つに分断されていくオークは、
「あれれ? 農民エルフが二人になっていくよ、アニキ。あれれ? アニキも二人になっちゃった。あれ、あれれれ???? あぎゃぁ!!!」
それが奴の遺言となった。
残ったのは親玉のオークただ一体になった。
「な、なんだ。何者だ。てめぇ! もしや領主を殺ったってのはおめぇか?」
「そうだ。俺が領主を仕留めた。俺は職業――小作人」
「小作人といえば、一般農民より更に低ランクのクソ雑魚に部類される生命体。それがどうやって???」
最初は驚いていたオークだったが、何を思いついたのか急に笑い出した。
「ぐふふふ。あはははは。でも、まぁ良いわ。領主を殺ったのがお前で安心したぜ」
「それはどういう意味だ」
「お前、少々修行をして鍛えているのかもしれんが、所詮小作人とは弱点の多いタイプ。
小作人とは、自分の農地を持たず、預かった農地を守るのがミッションの最弱ユニット。
小作人は天候に弱い。
小作人は害虫に弱い。
そして小作人は害獣に弱い!」
ムッ。
「ククク。俺達オークは長年田畑を荒らしてきた。先祖代々お前達農民の天敵としてそのスキルを磨いてきたのだ! 見せてやろう。我が一族に伝わる農民殺しの秘奥義――田畑荒しを!!」
そう言いながら、オークは両手で虚空を回し大気をうねらせる。




