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農民無双  作者: 弘松 涼
10/27

10 身分制度

 士農工商しのうこうしょうとは――

 儒教において社会の主要な構成要素(官吏・農民・職人・商人)を指す概念である。「 四民」ともいう。 日本では、近代になり江戸時代の身分制度を意味すると捉えられるようになったが、1990年代ごろから実証的研究が進み、誤った認識であることが理解されるようになった。(Wikipediaより抜粋)



 ただ聖騎士ファラードの言う士農工商とは、身分の序列であった。

 

 農民たちは喜んでこの身分制度を受け入れた。

 このエルフの村では騎士が最高位となり、その下に農民、更に下に鍛冶屋や大工といった職人、最期に薬屋やアイテムショップを経営する商人といった順序だ。



 農民は上位階級であり、下の階級をタダで使えるようになった。それがこの村の新しい掟だ。

 エルフ達は大喜びしている。



 が。


 この村は貧しい農村である。

 店を開いて商売を始める奇特な奴なんていないし、だから工業が発達する事もなかった。

 士農工商は、この村でしか適用されないローカルルールだ。

 どうする、エルフよ。



 俺の目にはファラードという人物が、最初は言葉巧みにエルフ達の人気取りをしているだけに思えた。

 

 だが奴は、なんと商人や職人をどこともなく呼び寄せたのだ。

 そして店や工房を作り、更には病院や寺子屋という小さな学校まで作ったのだ。

 農民は商人からタダで物を買えるし、病院の受診も無料。さらにエルフの子ども達は勉学まで受けることができるのだ。



 エルフの子どもは学校に行けば、甘いキャンディーやスナック菓子が貰えるのだ。農エルフは貧しい。まだ育ち盛りの年齢だというのに、生の大根をかじっていた。芋なんてある日には手を叩いて喜び、兄弟で取り合いになっていた。

 そんなエルフの子ども達だ。

 毎日のように学校に行く。

 農エルフはほとんど勉強などしたことがない。自分たちの子どもが算術を覚え、田畑の測量を始めた日にはたまげた。

 まさに農エルフ達にとって、ファラードは神的存在だった。

 皆、ファラードを称え、中にはファラードの像を作り彼に祈りをささげる農民まででていきた。




 俺は前の領主を殺っている。

 エルフ族のお尋ね者だ。みんなの前に出る訳にはいかない。しばらくの間、ひっそり隠れて様子をうかがっていた。

 もちろん森の木々達が、ファラードのことをよく言わなかったのが気になっていたからだ。だけどファラードはあまりにも紳士すぎた。

 一軒一軒農家を訪ね、困っている事を聞き出しては解決していく。

 もしかして古き森の守り神は、よそ者がやってくることを好ましく思わなかっただけなのだろうか。

 ――そのように思えることもあった。



 だが。

 その頃からだった。

 エルフの子ども達が妙な事を口走るようになったのは。妙とは語弊があるかもしれない。それに、それはほんの些細なことだった。


 エルフの子ども達は、親に優しさを説こうとするのだ。


 それは良い事だ。

 エルフの子ども達は、数術の他に歴史や道徳まで学んでいるらしい。

 優しい心とは何かを、寺子屋で一生懸命勉強しているらしい。


 だけどその様子を木陰に隠れて監視していると、いつもひっかかるのだ。ファラードはその様子を穏やかな眼差しで見ている。

 だが奴は時折鋭く笑うのだ。


 ほんの一瞬。


 まただ。

 また笑った。


 

 俺は見逃さなかった。

 ファラードの口角が一瞬だけ鋭く吊り上り、誰にも聞こえないような小さな声でこう呟いたのだ。

 

 俺はレベル9999の小作人。

 視力:99999999999999999

 聴力:99999999999999999

 蚊の鳴く声すら的確に聞き分ける事が出来る。

 


「ククク……。ちょろい。ちょろすぎるぞ。所詮エルフなんて単純。我々の士農工商は間もなく成就する。糞笑えるぜ」

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