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080 サクラの花の下には死体が埋まっている様なもの .feat しまっちゃわれるおじさん

今回はストーリーです。


帝国アルペンド地方統制審査官ミヒャエルは報告書を読みながら次のターゲットを模索していた。

知り合いが少なく、家族などは遠い場所に居り、既に潜り込んだ工作員が近くに、出来れば周囲が全員そうならありがたい。そうやって該当しそうな者を幾人かピックアップさせ次のターゲットを決めるのがミヒャエルの役割だ。

アルベンドにあった共和国は数十年前に滅んで今は帝国の一部だ。抵抗も厳しく激戦であったが滅亡するよりはと降伏を受け入れたらしい。その為か帝国も多少は譲歩した政策を実行していた。


表向きは。


激しい抵抗にあって戦った挙句に皆殺しにしました、では周辺諸国の感情を煽り、荒れた土地を抱えてレジスタンスを相手し周辺諸国からの攻撃に備えないといけなくなる。帝国民としては増え続ける自国民を移住させれば良い程度には思うのだが"蠍"はそう思わないらしく軍部にしゃしゃり出てきて今回の作戦を強引に押し付けた。飼いならした家畜に荒れた土地を耕させれば良いだけだし、家畜が多少死のうとも大きな実害にはならないのだから死んでも勝手に増えて補充される奴らの損耗を気にしても仕方ないと思っても上からの命令は絶対で渋々とミヒャエルも先輩に倣って受け入れている。農耕機械や土木機械でしかないあいつらを大事にしたいのかね、とミヒャエルは考えながらもこの遠回しな侵略行為をパズルを組み立てるように楽しんでいた。


ミヒャエルが今回目をつけたのはDブロックのアンダーソンだ。30代だが先日父親が死に1人暮らしになった。数年前まで女と付き合っていたがその女と喧嘩し別れて女の方は他の男と結婚してミヒャエルはまだどこかそれを引きずっていたようだ。ようだ、というのは今付き合っている女が居て、実の所こちらから送り込んだ。帝国にいる有象無象の1人を教育をして使えばこんな事は造作もない。食うに困る状況からまともに生活出来る状況にしてやるのだ。これ位は働いてもらわないとこちらが困る。

そうしてアンダーソンを監視し、アンダーソンの周囲を工作員で固める。アンダーソンの仲の良い同僚も工作員だ。帝国からこの地方の人間に似た容姿の者を連れてきて「田舎からやってきた」と言わせれば、大抵はすんなりいく。田舎の情報を叩きこんで多少の訛りと方言があればその田舎の事を知らない奴は大抵騙せる。時々、情報不足でその田舎の者が居たり、送り込んだ工作員が話をする者の知り合いの知り合いくらいに居てバレる事もあるが、余所者が保身の為に自分を偽って良く見せようとした程度にしか思われないから目的に気づかれる事は滅多にない。体よく誤魔化す振りをさせてそそくさと立ち去らせるか一度戻せばよい。気づいた側も嘘がバレて気まずいから逃げた程度にしか思わない。それはそうだ。そんなものがもっと大きな計画の一部だなんてただの一般市民が考えるはずがない。その大きな計画に気づいたら気づいたで別に問題はない。世の中には突然起こる不幸な出来事なんてざらにある。


ミヒャエルが報告書から目を話し、作戦実行部のある部屋へと足を向けた。実行部のある部屋ではモニターが並べられ、魔道具からの映像を映し出していた。街のあちこちの映像を切り替えながら監視して情報を集めているのだ。市民が隙を見せた時に不幸な出来事が起きたり、この場合は盗難や強盗、そういやレイプもあったな。工作員の奴らがこぞって参加しようとしていたのは笑った。連中にしてみれば割の合わない日常仕事の合間にいきなり通信が来てボーナスが発生するようなものだ。普段はまともな生活の振りをしてこちらの指示に従えば楽に旨い良い目を見れるのだ。ヒナが口を開けていれば餌が勝手に入ってくるようなもので大人しくおりこうさんにするのも納得だ。


例えばだ、ある店の店主が用事で少し店から目を離して店を空けたとしよう。ほんの少しだけなら大丈夫だろう、という気の緩みがいけない。彼を知る知り合いである工作員が彼のその行動を見た、または監視カメラにその行動が映った、ならこれはもう不幸な出来事が起きるしかない。なぜ?市民とは清く正しく美しい生活をせねばならないからだ。店の用心も忘れて出歩くなど市民として恥ずべき行為だ。


彼の事情?そんなものは知らん。


だからその周辺にいる彼とは面識もない工作員、場合によっては必ずバレないのが分かっている時は知り合いでも良いが連絡を入れて店に入って不幸な出来事を起してもらう。そして彼が戻る前に退散させればほら不幸な出来事が起きてしまった。そして彼は悲しみ次は同じ過ちを繰り返さないと誓うだろう。その損失で店が潰れなければだが。


例えばだ。ある女が毎日通う道とは違う道を選んで帰ろうとした時に、その道にはたまたま一目につかない場所があったとする。いけない。市民はもっと自分の街の事を良く知らなければならない。ならこれはもう不幸な出来事が起きるしかない。


彼女の事情?そんなものは知らん。


現場近くで暇している工作員に連絡して現場に急行させる。ほら、不幸な出来事が起こった。そして彼女は悲しみ次は同じ過ちを繰り返さないと誓うだろう。まあ、脅されて搾取されるような状況に陥らなければだが。


例えばだ。母親が目を離した隙に子供が一人で出歩いた。その気の緩みがいけない。良き母親とは子供をしっかり守り育てるものだ。ならこれはもう不幸な出来事が起きるしかない。


「ミヒャエル様。アンダーソンの準備が整いました。」


ミヒャエルがモニターを見ながら回想に耽っていると部下が声をかけてきた。

モニターに映る市民は何事もなく生活しているように見えた。それもそうだろう、今ミヒャエルはアンダーソンに重点を置いて彼らの為の舞台を用意していない。

部下に声を掛けられ該当するモニター群を見るとそこにはアンダーソンが映っていた。アンダーソンは今、女と旅行中なのだ。上手く誘い出してくれた様で、これまでの苦労が報われそうでミヒャエルは機嫌が良くなった。アンダーソンの作業の相棒に工作員を配置し、アンダーソンの父親が不慮の事故で怪我して弱った後に病気にかかって死に、女をあてがいアンダーソンの周辺の人物を綺麗にするのはとても苦労したのだ。

アンダーソンの昔の女にはアンダーソンの事を世間話で嘘を教えたしその旦那は工作員だ。彼女に関してはおまけで現地民の戸籍が欲しいだけだからしばらく放置で良い。そもそもが帝国民の男の子を産むのだ。歓迎しよう。旦那は田舎から来たと思っているだろうが。

アンダーソンの父についてもそうだ。たまたま不幸な出来事が起きたから監視していたら弱ったので病気持ちを頻繁に出会わせていたらまた不幸な出来事が起こった。弱ると流行り病にかかりやすいというのは本当なんだなという教訓になった。


さて、アンダーソンの状況はと、ミヒャエルは現在のアンダーソンの状況を確認する。画面にはアンダーソンを人気のない場所に誘い込み、アンダーソンの注意を上手く逸らしている状況が映し出されていた。騙されているとも知らずにアンダーソンは女と仲良く戯れている。すると作戦開始の合図を部下の1人が出しランチタイムだ。特製の隠し味でアンダーソンは瞬く間に眠った。最後まで気づかずに眠くなっただけだと勘違いして女の膝枕を気持ちよさそうに堪能しながら目を閉じた。

女がアンダーソンの頬をつねっても起きない事を確認してから他の工作員が作業を開始した。アンダーソンを縛り箱に詰めてからもう1人のアンダーソンを女の膝枕で寝させる。その間に女は最近のアンダーソンの動向を膝で寝ている男に教えて情報を擦り合わせ、他の工作員は箱詰めアンダーソンを運んで退散した。周囲を監視している工作員から異常の連絡がないから誰にも気づかれていないだろう。後は荷物と化したアンダーソンを運び出せばよい。荷物運搬なんてどこでもある光景だ。


あのアンダーソン2号、これからはあれがアンダーソンだが、帝国民でアンダーソンと同じ体型の者に成形させて作り出し、そして結構今回はなかなか上手く出来ていると自分でも思う。アンダーソンの経歴、出身、家族構成、全て調査済みで、映像記録と工作員の情報から仕草、癖、話し方などほぼ完璧に模倣出来ている。細かい部分もアンダーソン自ら女にベラベラと喋るから大変捗った。考え方や行動の基準まで大体把握したからこそ実行に移したがどうやら問題なさそうだ。

これで奴隷が1人手に入り、戸籍も奪い、かつ帝国民の1人を従順に操れる。1石3鳥だ。この時ばかりはこの面倒な方法もこれはこれで良いかと思える。何より周辺諸国には、というよりアンダーソンの周りでさえ騒ぎにならない。"蠍"もネチネチした方法を良くも思いつくものだ。


そうミヒャエルは思い、部下に指示を出す。


「Dブロックに面する中央大通りに桜の木を一本追加だ。これでDブロックの進捗率は大体70%になる。工作員には時折桜の木がどれくらい増えたか確認させておけ。」


ミヒャエルの指示を聞き、了承したように頷きそれぞれの行動をする部下たちの一人がミヒャエルに確認しに来た。


「ミヒャエル様。先日、工作員が店の前で暴行事件を起こしそれを止めに入ったディレクの店に強盗が押し入った件ですが、店が潰れて工作員が貸した高金利の利息が払えない為に夜逃げしました。いかが致しましょう。」


「念のために捕まえて奴隷として売れ。貸した金の回収だと言えば黙るだろう。誰か別の者に店を出させろ。戸籍自体はディレクのを使っておけ。どうせ誰もそこまで確認せん。十年もたてばそいつがディレクと名乗っても誰も気にしないようになるし、出資くらい連中から巻き上げた予算がある。そこを橋頭保にしてAブロックの攻略に使うぞ。工作員の情報交換場所にしろ。」


「では、先日、住む家の方で火事があったと工作員に唆されて急いで帰って被害にあった女はいかが致しましょう。強請られて金が払えず身売りして周囲から孤立しました。」


「なら、遠くで幸せになってもらえ。色んな男と出会えて幸せだろうさ。代わりに出来そうな女はいたか?」


「はい。それほど目立った容姿ではないのでいつも通りに成形させます。環境自体が変わったので気づく者など居ません。わざわざ娼婦になった女と付き合いを続けようとする者などいないでしょう。」


「ならそれで良い。だがな、あまり派手な事は避けろ。あくまで、自然に、だ。何かが変だと思わせたらダメなんだよ。わかるだろ?蛙は蛙らしく居て貰わないと俺が困るんだよ。」


「はい。気を付けます。それと子供の売却先が決まりました。その後はいつも通りで良いでしょうか。」


「ああ、巧く丸め込んで養子でも取らせろ。出来なきゃ次は数年後に感動の再会だ。時期が来たらまた報告してくれ。ガキが忘れないうちに情報は抜き出しておけよ?」


「はい。では作業に戻ります。」


部下が去りミヒャエルはモニターも見飽きたので執務室に戻り呟く。


「今日も従順な市民が増えて結構結構。」


よくある「消防の方から来ました」とかのアレです。知らない方は調べてみましょう。

同じような事ですが、戦後、誰が死んだかどうかが分からず、本人確認も難しい状況では周囲の人間が死に、本人以外に本人を主張してそれを確認できる者が居ない状況というのが良くあります。

例えば、沖縄ではいっぱい死にました。生死不明の状態の戸籍とその戸籍が欲しい誰かが居て、戸籍の内部事情に詳しい者が手助けすれば本人だと主張させればその戸籍を乗っ取る事が出来る状況が作られます。そして現地民らしくその方言や訛りを使っていればバレにくい、というものがあります。そもそも田舎は互いの距離が物理的に遠く、他人に会いにくい為にバレにくい、という利点があります。

そこから発展し、その人物を本島に移住させます。「島の方から来ました」と言わせて訛りのある言葉で方言を使って、その地方の食品などが好物だとか言わせておけば、良く知らない者はかってに錯覚してくれるし、騙されてくれます。さて、近い島のどこから来たんでしょうね。そして、本当に沖縄から来たとして、その人物は本当に沖縄に元々住んでいた方なんでしょうか。という問題が生まれます。

そしてあなたに近づいて後ろからズドンです。

なんて書くと地方の方を差別している様な発言になるのでここまでにしておきます。そして疑心暗鬼を生み出す話ですので|過度[・・]に広めるような真似はしない方が良いでしょう。

ですが、戸籍乗っ取りは常套手段ですのでそういった事があるくらいは知っておくべきです。


そういえば、どこぞの国は成形技術が進んでいて、人造美女軍団なんて持っていたような気がします。


後、この話に関連する話に妖怪「ぬらりひょん」があります。この話を読めば「ぬらりひょん」が何の事か分かりやすいと思います。詳しくはここでは省きます。「ぬらりひょん」がどの地方の話かが結構重要です。


前回の小話における「サクラ」の違う表現です。権利が他人のもの、そこにいる人物は別人。なりすまし、乗っ取りの後にいる人物を指す言葉です。


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