S064 真・わらしべ長者
ちょっと書き方が下手くそですいません(え?、いつものこと?)。
昔々あるところに貧乏な若者がおりました。
若者は一回でいいから豪遊してみたいと思っておりました。
そしてその願いが叶わないかと教会で神様に祈りました。
すると神様は言いました。
「最初に触ったものを持って旅に出なさい」
若者はそれを信じて旅に出る決意をしました。
とりあえず家に戻らないといけないので教会の扉にも触らないように気を付けて帰りました。
若者が家の前に来た時です。
飼っている鶏が柵を飛び越えて外に出ているではありませんか。
驚いた若者は『逃がしてなるものか』と慌てて鶏を捕まえました。
そこで若者は、しまった、と気づきます。
折角今まで何も触らないでいたのに鶏を触ってしまったのです。
触ってしまったものは仕方ない、と諦めた若者は旅の準備を終えると鶏を抱えて旅に出ました。
そして村を出ようとした時です。
「おお、吾作。丁度良い所に来た」
若者の名を吾作と言い、村長が話しかけてきました。
何事かと思った吾作ですが村長から話を聞くと、村にお偉いさんが来てもてなさなければならないからその鶏が欲しいという事でした。
吾作は神様から言われた事を守って夢を叶えたいので村長の申し出を断ったのですが村長も引くわけにはいきません。それに目の前にさも使ってくださいと言わんばかりに鶏を持ってきているのですから。
しばらく押し問答を続けた2人ですが村長が大分と譲歩して、村のとっておきの干し肉とワインを代わりにやるからと言い、吾作も欲につられてそれなら、と交換しました。
良いものが手に入ったと喜ぶ吾作はそのまま村を出発しました。
既に神様との約束も叶っていそうなのですが吾作は既にそんな事も忘れてしまっていました。
そして数日後、吾作は行き倒れている冒険者に出会いました。
どうやら腹をすかしているようでしきりに吾作の方を見てきます。
吾作は相手すると面倒だな、と思い通り過ぎようとしますがやはり呼び止められました。
「すまない。何か食べ物を恵んでくれないか」
吾作はそんな余裕はないと思って、『ただでくれてやるものなんてない』と突っぱねました。すると冒険者はムッとしたようですが腹が減って力が出ないらしく弱々しくこう言いました。
「なら、クッ・・・、この剣と交換でどうだ?それならいいだろう?値打ちものだぞ?売れば結構な値段になる」
確かにその剣は高そうでした。
それなら良いかと吾作はとっておきの干し肉ではない干し肉と水を冒険者に渡しました。ワインはもう飲んでしまっていましたのでありません。
冒険者は久しぶりの食事のようで吾作には見向きもしないで食べ始めたので剣を持ってそのまま立ち去りました。
そしてまた数日後、馬に乗った騎士と出会いました。
騎士は吾作の横を通り過ぎようとしましたが吾作を見て立ち止まり話しかけてきました。
「おい。その剣をどうした。それはお前のか?」
「ああ、途中で出会った冒険者と取引した」
「それは俺の家から盗まれた大切な家宝だ。返してくれないか?」
なんと冒険者から貰った剣は盗まれたものでした。吾作は面倒事に巻き込まれたと思いながらも答えました。
「そんな事知るか!俺は取引して手に入れたんだ。欲しいなら対価を払え!」
騎士はムッとしましたが強盗するわけにはいきません。吾作はこれは高く売れると思い騎士相手に強気に交渉しました。
「なら、クッ・・・、この馬と交換でどうだ?それならいいだろう?この馬は優秀だぞ?売れば結構な値段になる」
確かにその馬は高そうでした。
それなら良いかと吾作は剣を渡し馬を貰いました。ついでに行き倒れていた冒険者とは数日前に会ったと余計な事も話してから立ち去りました。
そしてまた数日後、今度は馬車と出会いました。
馬車はどうやら馬が死んだらしく立ち往生していました。
馬車の持ち主の商人は吾作が連れている馬を見て吾作に言いました。
「その馬を売ってくれないか。馬がいないと商品が運べない。のんびりしているといつ盗賊が出るか分からない。だからどうしてもその馬が必要なんだ」
吾作は思いました。どうやら俺はついている。これは高く吹っ掛けれそうだ。
「そんな事知るか!この馬は優秀で高いんだぞ!欲しいなら対価を払え!」
商人はムッとしましたが馬が手に入らないと荷物を全て諦めなければなりません。吾作が強気な交渉をするため、馬の本来の価格の2倍近い価格を要求されたので仕方なくこう言いました。
「なら、クッ・・・、荷物の半分でどうだ?これを売った分をお前に払おう。馬の値段は充分超えている。それなら良いだろう?」
確かにそれだけの商品があるから儲かりそうでした。
それなら良いかと吾作は馬を渡しました。そして商人と2人で最寄りの街に立ち寄り商品を売ると大金を手に入れました。
さあ、吾作の夢まであと一歩です。
吾作は浮かれ気分で高級酒場へと繰り出しました。
村では見た事ない美女や美酒に吾作の気持ちはMAXを迎えました。
「ああ、まさにこの世の天国。もう悔いはない」
そうして吾作は夜通し遊びました。
そして朝を迎え、吾作はいつの間にか路地で寝ていました。
「ん?、ここはどこだ?」
辺りを見回す吾作は事情が良く飲み込めずしばらく考えていましたが、やがて昨日は豪遊したのだと思い出しました。そして体をまさぐります。
「ない!一銭もない!」
吾作は持っていた大金全てを失くしていました。一晩で使ったのか誰かに盗まれたのか全く分かりませんでした。どうしようと途方に暮れた吾作は唯一知っているあの商人の所に行きました。
「あの、出来れば村に帰りたいので恵んでくれないか?」
事情を聞いた商人は呆れました。たった一晩で大金を失った吾作に冷めた目で商人は言いました。
「そんな事知るか!食料だって高いんだぞ!欲しいなら対価を払え!」
「というような事は起きるのじゃろうか?」
「あり得ますが『わらしべ長者』ですか。それもかなり真に迫っていますね」
「ん?こっちにも『わらしべ長者』の話はあるのかの?」
「ええ、そういったサクセスストーリーに夢見たい者やそれを広めて色々と悪事を働きたい者がいるのですよ、どこの世の中にも。それに『わらしべ長者』はかつて勇者が広めた話も伝わっていますよ。藁を屋敷に変えた話でしたね」
「そうそう。それ、でもこれって悪用出来るんかの」
「ええ、どのようなものも使い方です。お嬢様。勇者の伝えた『わらしべ長者』の話では取引する相手も事情があり喜んで交換しているように思え、主人公はラッキーで金持ちになった話になっていますがそこに落とし穴があります。お嬢様の話でもお分かりになるように、相手の弱みに付け込んで、というのがこの話の焦点であり、事情を知らぬ第三者が偶然通りかかって、その第三者の持つ所有物を必要とするから高値でも良いから買い取る、という内容が問題になります。程度によっては喜んで買い取るかも知れませんがそういった状況は大抵は"仕方なく"高く買い取る場合が多いのです。こういった話を広めるという手法は商人がその状況をデファクトスタンダードにしたいがために良く使われる手法です。商人が物を通常より高く売ろうとすると機を見て最も欲しがるタイミングで売る事になります。これは良い部分も悪い部分もあり、その混同により誤魔化すためにこういった話が存在し、流布されます。良い部分では、本来その地域には流通していない為にその地域まで運べば高値で買い取ってくれる、というものです。悪い部分はその物がないとどうにもならない、という状況で他に入手する手段がない事から交渉を優位に進めて高値で売る、というものです。この混同をしたいがための話になります。そして価値がないようなものでも高価なものに交換できる、と思わせればどんな貧民でも、つまりは"誰にでも"出来る事ですので容易く夢を見る事が出来るのです。しかしそのようなラッキーは滅多にありません。しかしそれを夢見るのです。そうなると皆が誰かに付け込む隙が出来ないかと待ち望むようになります。そしてその隙が出来れば、弱みが出来れば少しでも高く売ろうとするのです。」
「なるほどのぅ」
「それは商人が望む状況だという事がこういった話を好む者達には分からないのです。『取引とは同じレベルの者同士でしか成立しない』という言葉があります。これの本来の意味は、同じ知性の者同士、同じ階級の者同士でないと、お互いの利害を良く把握出来ない為に諍いを起こしやすく遺恨を残しやすい事を表しています。良くない解釈では、自分の方が階級が偉いから強引に取引して良い、もしくは自分は賢いから相手を騙してよい、という思い込みで使われる事もあります。どのような言葉も凡例もその概念を用いて考える時には情報が少なければ少ない程多面的に捉える事が出来る事に注意してください。つまりリザルトセットと同様に言葉も口に出した時より言葉としての形を持ち、その捉え方で意味が変わってしまいます。お互いの理解力で解釈が変わり、また、本人の意図により故意に曲解されるという事です。言葉というものをノード、節点と考えます。そのノードを違う視点から見る事でそこから生まれる行動というものは違ってしまい、先ほどの2つの解釈の違いからは、一方はお互いにお互いの取引におけるケアレスミスがないかを確かめ合いますが、もう一方は相手のケアレスミスを誘い、相手がより不利になるように交渉します。これは物に別の角度から光を当てると生じる影が違うという比喩として表現され、その物を通して作られる結果が違う事を端的に表現しています。しかしその物自体は同じ物です。つまり正しい方向から光を当てる、社会の中での妥当な解釈をされているかを判断出来る必要があります。この判断については割愛します。
さて、商人が望む状況と言うのは、まさに相手の弱みに付け込んで物を高く売る事が出来る状況です。その為に『わらしべ長者』の話があります。つまりは弱者の側にそうやって普段より多く利益を上げる方法がある、と思わせて、本人がその利益を享受する側だと錯覚させて受け入れさせ、実際には弱者が情報を持たない事で不利な立場にある事を利用して商人が有利な状況で取引する事を受け入れさせるための工作活動の為の話です。なぜ商人が強者になりその相手が弱者になりやすいかと言えば、相場、価値の変動などは商人が一番情報として手に入れやすいからです。そして、その対象となる物品というものは主に生産活動から生じ、物品を扱う側はその生産に必要な知識や技術などの情報を主として収集するために商人よりもその価格などの情報で不利になります。その時点で対等な取引というものは成立しにくいのです。王国では商人は価格統制によりある程度までの許容範囲内で交渉しますが、この枠がないと情報を持たない弱者に数倍の価格で物を売りつけるようになるでしょう。商人を通じてしか物が売れない状況というのは商人が商人達で自営して治安を維持する必要があり、それが出来ないために経済は破綻するのです。生産者は生産物の品質を維持向上させ、商人はそれを乗せる流通を維持し向上させるという役割における義務があるのですが、それを理解させるには正しい商売を長い年月させてみないと覚える事もないのが現状です。規制を外せばモラルが緩み、規制を厳しくすれば不満を述べる。この微妙なバランスを保ちながら商人に正しい商才というものを身に付けさせて社会を維持する、それも貴族の役割の一つです。どうかお嬢様、その辺りをご理解頂けますよう。私も勿論手伝いますので。」
「ちょぉっとまったぁー!」
扉を勢いづけて開いて登場したマスター・ララが開口一番にそう言った。どうやら前回間に合わなかった事に思う所があるらしく、今回は早目に待機してタイミングを伺っていたようだ。
その姿を見たローレンシアはちらりとローラを見れば、ローラは『あまりハブると研究に差し支えます
』とボソリと呟いた。前回ハブる原因を作ったのはローラなのだがどうやらそれは些細な事らしい。
いつもと違うノリで登場したマスター・ララをどうやらストレスが溜まっているらしいと決めつけたローレンシアはとりあえず気の済むまで話させようと思いじっと待つ事にした。
そしてローレンシアの傍まで近づいてマスター・ララは話し始める。
「そうして商人達は気づくのです。価格や相場情報を外に漏らさず、また、嘘の情報を教える事で本来得られる利益よりも多くの利益を得られる事を知るのです。これが独占、寡占の元になる原因です。嘘かどうかを知るためには本当の情報を知る必要があり、その情報を得させないならどうとでも誤魔化せるのです。そうやって、一族や地域の集団という規模ではなく、商人全体の共通意識として存続させる事で商人とそれ以外という枠組みで利益を得る構図を作るのです。誰が、などの特定の個人や集団による偏ったものではないために取り締まる事も非常に難しくなります。商人全員を常に監視する事など出来ないのです。そして、相手が弱みを持っている時には強気に交渉出来る事も知り、より有利な状況を作るために市場そのものを制圧する事で、より有利に交渉を行おうとします。取引相手が自分達の集団以外にいないなら、従わなければ売らない、という強硬な態度で交渉出来、より高く売る事が出来ます。勿論相場情報を偽装すれば高く売れますし、たとえ情報が漏洩して気づかれても、嫌なら買わなければ良い、と強気に出る事が出来ます。独占、寡占で一番問題になるのは物流支配です。物品が生活必需品なら供給を制限する事で相手の生存にリスクを与える事が出来、それ以外の交渉にも利用出来るのです。これまでにお話ししたように快感原則上そのような商人のみが生き残り、規制なくして商取引はあり得ません。自由だなんだと言うのは自分達がそういった不完全さを抱え間違い失敗する事を知りつつもそこから利益を得ようとする者が大半になります。もしくはそんな表面には出てこない情報を知らずに操られている者になります。自由は必要ですが、あえて自由を強調する必要などないのです。強調していない状況が果たしてあえて強調すべき状況かを判断もせずにより多くの利益を得られると夢想して、情報操作を行った者達に有利な状況を意図せず作り出して更に見えない損失を作り出すのです!」
やけに気合の入ったマスター・ララを見ながらもローレンシアは『なるほどな』と思う。いつの世にも他者を扇動して利益を得ようとする者は必ずいるんだな、と納得する。そしてローレンシアはこうも思う。好き勝手に研究しているようでもやっぱり自分で何かしら制限は掛けているからバカンスとか休暇が欲しいんだろうなぁ、と。
そんなローレンシアを見ながらも少しは満足したらしくマスター・ララは声を抑えて続ける。
「そして厄介なのはそれがリザルトセットとして利用される事です。ある人物Aが先程の勇者の広めた『わらしべ長者』の話を人物Bに話したとします。人物Bは良い話だと思うか自分には関係ない話だと思って批判しない態度を取るとそこに付け込む隙が生じます。受け入れたなら、する気があるのだからされても批判出来ないよね、と判断し、自分に関係ない話だと批判しなくても、受け手である人物Bが批判しないなら受け入れたのだろうからされても問題ないよね、と勝手に解釈します。そのどちらの場合でも"批判しない"という結果になり、違いが分からないために人物Bは自分に都合の良い判断をするのです。実際にはそれで人物Bに相手をだましてよい権利など生じないのですが欲望に忠実な人物にはそういった常識は通用しないのです。そして、自分に関係ないと判断した部分にはエールトヘンが話したような内容を知らない為に無関心だった場合が含まれ、そうであればより騙しやすい為にやはり人物Bは騙す口実にします。つまり、これをリーダー、管理者、監視者、権力者の側が悪用する事が出来るのです。実際に本人が悪用する気はなくともここで話された内容を知らないがために無関心な態度を示した事を、意図的に悪用する気がある、受け入れた、と判断するのです。そうすると、受け入れたのだから自分がされても批判しないよね、と勝手に判断し、ありもしない権利を得、つまり襲い掛かる口実を得る事が出来るのです。後は他の誰かに指摘されてもその映像や記録という状況証拠を使って自分には正当性があるなどと主張しながら合法的に襲い掛かれば良いのです。その内情が、悪用する気があったのか、それも分からない程に知識が足りない、知性が低い、或いはする気もない為に無関心か、のどれか分からない事も、仕掛ける側にとってはどうでも良いのです。あくまで欲望を満たすには、利益を得るにはどういった状況を作り出せばよいのか、という基準で行動するからです。お嬢様もお気をつけてください。こうやって自分自身の利益を得る為に必要な口実を得る為に相手の発言やその有無を得る事を、ここでは悪い使い方ですが『|言質[げんち]を取る』と言います。勿論、正しくは相手の意を確認する事を『|言質[げんち]を取る』と言うのですが。」
そこまで一気に話してようやく落ち着いたのかマスター・ララは満足げに微笑んだ。内容そのものが微笑ましいものだったかは甚だ疑問だがスッキリしたようで良かったとローレンシアもホッとした。
マスター・ララが話し終えたのを確認したエールトヘンが話す。
「どのようなものも使い方次第という事です。ハサミを使って怪我をしてもハサミの使い方が悪かったのかも知れませんしハサミの質が悪いから怪我をしたのかも知れませんが、それでもうまく使いこなせば怪我をせずに目的を果たす事が出来るかも知れません。知識や概念もそういったものなのです。あえて使い方を間違って他者をハサミで怪我させてその言い訳に『ハサミが他者を傷つける事が出来るのが悪い』というのはさすがに間違いだと分かるはずです。ここでの間違いはそういった類のものなのです。それを理解できるまで、さあ、お嬢様、勉強の続きです。」
やはり最後はエールトヘンの一言で締めくくられた。
私はいつも|言質[げんち]ではなく|言質[げち]と読んでますw。
口語上はそう発音するのが妥当ですのでー。




