029 お嬢様、勇者について知る
ここはエールトヘンの長いお説教回です。
飛ばしても問題ありません。
さわやかな風が吹く草原を一人の美女が歩いていた。
白いワンピースにつば付き帽子を被るその姿はお嬢様と呼べそうな雰囲気を醸し出している。
その女性は隣を歩く男性に笑いながら話しかけ、男性もまた微笑みながら言葉を返す。
そんな仲睦まじい光景に周囲にいる者たちもつい頬が緩んでしまう。
風が吹いた。
風は女性が被っていた帽子を空高く運び去る。
女性はしばし中空に舞う帽子を見つめた後に帽子を追いかけ始めた。
その突然の行動に周囲の者達は驚き、隣に居た男性も慌てて追いかけ大きな声で呼び止めようとする。
「おい、危ないぞ!待ってくれ」
女性は走りながらも後ろを振り向き微笑みながらこう言った。
「捕まえてごらんなさい」
女性はそう言って飛ばされた帽子を気にせずに走り出した。
その笑顔を見た男性はニヤリと笑い答える。
「ああ、そうさせてもらう!」
追いかけられながらも笑い声を上げる男女の追いかけっこが始まる。
追いつこうとする男性を、その遊びの時間を出来るだけ長くしたい女性が追いつかれまいと速度を上げそして・・・
二人は風になった
「と言うような事は出来るんじゃろうか」
ローレンシアは今日もこの世界を知ろうとお茶会でエールトヘンに聞いていた。
「はい。そういえばありましたね。そんな事が。
勇者と聖女がイチャイチャしてそのまま国外にまで行ってしまい、危うく外交問題になりそうでした。
ついでに暴君を倒してきてしまうものですからもう揉めましたとも」
なるほど、勇者なんて存在はやはりいるのか、とローレンシアは考える。
そこへエールトヘンが思わず問い掛ける。
「お嬢様もやはり女性ですから勇者など男らしいイメージの男性と仲良くしたいという願望が御有りなのでしょうか?その登場人物のお嬢様は未来のお嬢様だという解釈でよろしいですか?」
「いや、全く。これっぽっちも。そもそも男に追いかけられたら実際かなり引く。口調が素に戻るくらい」
「そうですか。また予知夢の類かと思ったのですがそうではないと」
「勿論じゃ。もしそうなら緊急会議が必要になるの。議題は勿論回避するためにはどのようなフラグ折りが必要かを懇々と議論したい所じゃ」
「フラグ・・・ですか」
そこでローレンシアとエールトヘンは『フラグ』というものについて話し合った。
「なるほど、フラグとは因果律における、当該事象の発生要因となった主要な事象もしくはその群という事ですね?」
「何やらすごく堅苦しいが?」
「つまりは今の事象がなぜ起こったかという原因について逆引きをした際に該当する事象、ということですね?」
「より分からんわ。もう少しかみ砕くと?そもそも事象はイベントという事でよいな?」
「ええまあそうしましょう。イベントを起こすには先にその原因がないとダメでその原因が発生した場合、フラグが立つ、という事です。例を言えば、バナナの皮を踏んで転ぶには先にバナナの皮を地面に落としておかなければならない。だからバナナの皮を落とす、というイベントをした事により、バナナの皮を踏んで転ぶ、というイベントの為のフラグが立つという事です。勿論、そんな簡単にバナナの皮を踏んで転ぶというイベントが起きるはずもないので、他にも'バナナの皮が落ちている事に気づかないうっかりさん'がその場所を通る、などのフラグもいるでしょう。そして必要なフラグが全部立てばイベントが発生する、ということですね?」
「概ねそうじゃ」
エールトヘンの堅苦しい言葉から始まって多少は分かりやすい?例に落ち着いてお互いの理解が一致した事でローレンシアは一息ついて気になった別の部分に関心を向ける。
「しかし勇者に追いかけられる聖女とは・・・」
「ああ、この世界における'勇者'とはある意味侮蔑用語とも取られかねない用語なのでお気をつけください」
「そうなのか」
「はい。勇者、という存在ですが主に異世界召喚をされる者達を指します。どれほど厄介かはさておき、呼び出す国に問題があるのでその動向には注意が必要です」
やはりそういったものもあるのか、と自身が異世界転生なのであまり驚く事もないローレンシアだがなぜそこまで勇者が警戒されるのかが分からないのでエールトヘンの次の言葉を大人しく待つ。
するとエールトヘンは察しが良いようでローレンシアが続きを聞きたがっている事を感じてより深い内容へと話を移す。
「元々は現在のズールドア帝国南部に王国が一つあったのですが、そこが勇者召喚陣、世界に一つしかない秘宝を有しておりました。その国の役目はその召喚陣の管理が目的であったと聞いておりますが既にズールドアに併呑され残っておりません。そして召喚陣を手に入れたズールドアは勇者召喚を利用してその版図を拡げるために利用しました」
そこで話を一旦切るエールトヘンにローレンシアは聞き返す。
「それだけで勇者がなぜ悪い存在という事になる?呼び出された者の中にも善い者がいたじゃろ?」
「ええ。'居た'でしょう。ですが出会う時には'居ません'。お分かりになりますか?」
エールトヘンの答えは謎かけのようなものだったのでローレンシアは少し思案してから問いを返す。
「つまり、召喚した後に都合が悪ければ消される?」
「はい。恐らくそれが正解です。奇跡的に消されなかった勇者の話が先ほどの勇者の話なのですが、勇者とは元々の由来では、現実の問題(R)を否定する(H)存在、つまりはヒーローなどと呼ばれる存在です。大抵においてはどうにもならなくなったものを強引に解決するなどの印象もありますね。だからその印象が強く独り歩きして、勇者もしくはヒーローとは都合の良い存在だと扱われる事になってしまっています。強引に解決した結果、一時的に状況は改善しますがその後はその強引な解決方法で済ませば他よりも利益を得る事が出来ると思った者がその行動を利用するからです」
エールトヘンは会話の内容にローレンシアがついてきているかを確認してから続きを話す。
「お嬢様は田舎者の英雄という言葉をお知りでしょうか」
「ピーサント・ヒーロー?」
「ええ。世の中が単純だと思っているような人物を指します。簡単に言えば、騎士が魔王を倒してお姫様を助けてお姫様と結婚し幸せに暮らすというような話にあこがれる人物の事です。世の中に分かりやすい悪が居て、自分はその騎士になって悪を倒せば全て物事が解決する、という考え方が出来る者という事です」
「そこまで簡単ではないからの」
「ええ。その通りです。大体において出会う召喚勇者は3種類に分類されます。周りを信用して疑わない者、与えられる褒美に目がくらんで正しく情報が認識できていない者、そしてそれが悪だと理解しながらも行動する一番性質が悪い者です」
「そしてそれ以外は消される?」
「どうやらその様ですね。周りを信用して疑わない、つまりは情報の真偽を確認しない者は簡単に騙せますし、多少の罪悪感はあっても褒美で操れる者も簡単に騙せます。自分のしている事が悪だと分かっていても欲望に従って行動する人物はそもそも勇者召喚して利益を得ようとする連中と利害が一致するので支障ないのでしょう」
そして思い出したかのように付け加える。
「ああ、先ほどの勇者は善良過ぎて周りを信用して行動していたが、聖女に一目惚れして話をしている内に真相に気づいて改心した稀な例です。大抵は気づいたら殺されるパターンですね。ある戦争で勇者が猛威を振るった戦争がありまして、ある日突然出てこなくなったと思ったら、後になって調べると裏で殺されていた、というような事もありました。操る側にとっては笑いが止まらないでしょうね。都合の悪い事は全て勇者がしてくれ利益だけもらえば良いのですから。元々ない利益を勇者がどのような手段を用いても取ってきてくれ、その一部もしくは大半をさも当然のように受け取る事が出来るのですから。だから帝国は勇者召喚出来る魔力が溜まれば積極的に行ってきました。最近はその大元が枯れて数自体が減っていますが」
「大元とはなんじゃ?」
「東の黄金樹ですね。西の黄金樹がエルフの国セルマにありますがその対となる東の監視者だった樹です。生物が生きて死ぬサイクルにおいて世界に発生する汚れを浄化するための樹です。勇者召喚には大量の魔力が必要になり、その魔力を供給するためには黄金樹の魔力が必要になります。奴隷から吸い取った魔力に黄金樹の魔力を上乗せして召喚するのです。世界に悪影響が出ないはずがありません」
「枯れたのじゃったらもう勇者召喚は行われないのじゃろ?」
「そうでもありません。規模は小さくなりましたが奴隷の魔力と、そして東の黄金樹を通じて西の黄金樹の魔力を強引に引き出しています。量が少ないと言っても魔力を奪われる西の黄金樹も次第に弱っているのが確認されています。そもそも人間は寿命が短く、知識を蓄える事が出来る時間もその量も限られます。ですのでよほど特別、そうですね、お嬢様のような存在でなければ騙される事が多いでしょう。そもそもが人間が勇者召喚される理由はそこにあります。ゴブリンなどのように短命でかつ扱うには支障がある低い知性というわけでもなく、エルフのような長命で行動できる成人に達した場合には善悪の判断の見極めが出来る程の知性があるわけでもない。使い捨てするにはちょうど良い寿命と知性。何より自分達と同じ'人間'です。長所も短所も分かりますので操りやすい。効率を考えると人間一択なのですよ。'勇者'の存在はこの世界では困りものなのです」
そう言い切ったエールトヘンは眉間を指でつまみ悩ましいように目を閉じた。
「なるほどのぅ。やはりハニートラップなんてある?」
「もちろんです。自分達の味方だと思わせて実は都合よく操っているなどは当たり前のように行われているようです。周りを信じて疑わない人物は言葉だけで、それが無理なら、そして何か誘惑に弱い場合はハニートラップで雁字搦めにするらしいです。間引きされて残った勇者は大抵において自己顕示欲があったり、甘い理想論に振り回されたりするので容易く篭絡でき異性をあてがい誘導すればどうにでもなる場合が多いようです」
「まるで見てきたような言い方じゃの」
「それほど勇者については過去に問題になりその検証がされたと言う事です。発生した場合に被害が大きく災害のようなものです。ですので帝国の動向は常に探っています」
「ふぅむ。会いたくないものじゃの」
「ええ。全くです。いかに罪に問われずに相手を加害し利益を得るか、という点では勇者の効率は高いと言えます。近所迷惑でしかない存在、それが勇者です」
「そこまで言わなくとも・・・」
「ええ、言い過ぎかも知れません。ですがどのようなものも使い方次第なのですよ、お嬢様。勇者召喚陣もそもそもが神への捧げものを送り、その代償により救いを得るためのものだったと聞きます。それを召喚がしたいがために強引に使用するという使い方にこそ問題があるのです。さあ、話が過ぎましたがお嬢様、お嬢様も能力のコントロールをするために訓練が必要です」
「待った!まだ話がある。勇者はやっぱり強いのか?」
その一言でエールトヘンは椅子に深く腰掛け溜息をついて後に話し出す」
「ええ、勿論。なぜ勇者召喚なのか、という根本的な部分ですね。彼らは言ってしまえばこの世界の理の外から来たため、この世界の理から外れているとも言えます。故にこの世界の因果律に縛られない部分が存在します。世界から言えば異物とも言えます。ですが先ほど言ったように東の黄金樹は既に枯れています。いわば自浄作用、この場合は免疫機制でしょうか。その異物の存在を排除する力が世界から失われているのですよ。免疫不全、と言ってしまって構いません。その勇者の持つ力は異能と呼ばれ、そうですね、お嬢様の力も異能ですね。そういえば」
そこでエールトヘンはローレンシアを見れば、ローレンシアは汗をかいていた。
「じゃあ、わしも勇者?」
「異能を持つ者が勇者、と定義すればそうですね。ですがご安心下さい。要は力の使い方を誤らなければ良いのです。そのための知識や判断能力をつけていただく。大丈夫です。ここは帝国ではありません。そもそもが'勇者'として疎まれるのは間引かれた後の知性に問題のある者です。お嬢様をそのようにはさせません」
エールトヘンは自信に満ちた表情でそう答えた。
しかし知識や判断能力と言われてもどれだけ必要か分からないローレンシアの不安は簡単には消えない。そのため、エールトヘンに聞き返す。
「のぅ、もし仮に、もしもじゃぞ?わしがそのレベルに達しなかった場合は?」
「ああ。ご心配なさらずに。お嬢様は明晰なために生命の危険に関するレベルは既にクリアしています。判断能力が足りず周りに被害を与える程度の者の場合は最悪は消えてもらう事もあるでしょうがそういったレベルはなかなかありません。後はどこまでが'自分にとって制御可能範囲か'を知っていただく事になります」
「それはズールドアと何が違うのじゃ?都合が悪ければ消えてもらう、というのは同じに聞こえるが?」
「そうですね・・・。集団の中で生活するという社会システムにおいて、その行動が社会システムに対して著しく不利益を生む場合、と言えます。単純なものでは法律が理解できない、や、犯罪行為を悪いとは思えない、というものです。ズールドアの場合は、社会は社会でも、'自分たちの社会'において自分たちに不利益を生む、かつその対象となる人物はその社会に含まれない、という部分でしょうか」
「そして肝心な事ですが、知識を与え方がその問題を助長します。'教育'とは'その行為の対象にとって利益になるように知識を与える'事を指し、'洗脳'とは'その行為の対象にとってではなくその知識を与えようとする者や第三者の利益とするために知識を与える'事を指します。その場面を見ても同じ状況、同じセリフになる場合があり、外からはそれ単体では分かりにくいのが問題になります。つまりは洗脳が行われているか教育が行われているかの判断は非常に難しい。そして、それに気づくのは知性が成熟してからとなり、その与えられた知識の集合によっては気づけるだけの知性は育まれない場合があります。そうなると洗脳成功ですね」
「ではエールトヘン。率直に聞くがわしをどうしたい?」
「無論教育を施して立派なお嬢様になってもらいます。どこに出しても恥ずかしくないお嬢様に。お嬢様の側から見て'教育'なのか'洗脳'なのか不安でしょう。ですので私はお嬢様に対して誠実でありたいと思っています。その行動を以って信頼の証にしたいのです。お嬢様にしている事が'洗脳'ではなく'教育'であると行動からお嬢様に伝える、というのが教育の在り方です。その部分だけの行動を真似ても、それは単にその人物の長い年月の行動の結果として教育だと認められた結果の一部分を抽出しただけに過ぎず、それ単体で教育と呼べるものになるかと言えば非常に疑わしいものです。使い方次第では洗脳になります。そしてそれは状況だけでは判別できません。そのために教育者の信用というものが必要になります」
「わかった。エールトヘンを信じてやってみる」
「ありがとうございます、お嬢様。では早速・・・」
「待て!まだ質問が終わっておらん。で、勇者の異能ってどんなのじゃ?」
「ああ、言うなれば勇者とは異世界の因果律を持ち込む者です。勇者の周り、勇者のいる場所は異世界だと認識しても良いでしょう。そういった部分ではお嬢様は違うようにも思えますが異能はお持ちですのでなんとも言えません。勇者は勇者のいた世界の因果律に縛られています。勇者のいた世界でもたいして私たちの世界とは違うはずもないのですが、世界をまたぐ事によりそこに軋轢が生じます。異世界の勇者という存在をこの世界に変換した事による歪みが常に勇者の周りにはあり、その歪みの影響が'異能'となります。故にその能力は特殊である事が多く、危険なものになりがちです。私たちの常識ではありえないほどの筋力、スピード、起こりえない現象など様々な形をとって異能は発揮されます。お嬢様の力も異能だと言えます。そしてその因果を解明できる事は非常に稀だという事も問題です。ですので対症療法的な対処が必要になります。その因果の果、つまり結果を見て影響の範囲を知る事でしか対処できません。ですから、制御の可否、善悪の有無が重要になってくるのです。さあ、そろそろ訓練を始めましょう」
「う・・・、うむ」
そうしてローレンシアは今日も訓練を始める。
「なるほど。'勇者'に興味が御有りですか」
そうマスター・ララは話し出した。
ローレンシアは今日もエールトヘンとマスター・ララの提供する教材に苦情を述べに来ていたが今回はマシな内容だと言えた。
マスター・ララがなぜか1/1スケールお嬢様人形を引き取り、代わりにベッドを提供してきた。
マスター・ララが言うには回転式だからぜひ楽しんでくれ、と言うから不思議には思った。
天蓋付きの四角いベッドを回転させて何を楽しめというのか、と考えたがオルゴールメリーが不要と言えば不要だから玩具の発想の転換だと考えマスター・ララらしいか?と考えたのが間違いだった。
ベッドについていたボタンを押すと回転したのはベッドのマット。
そう、ローレンシアは落とし穴に落ちた状況になった。
ベッドの底面にあたる部分がやけに分厚いと思ったらそこが空洞になっておりその空洞に放り込まれ、一瞬恐怖を感じたが幸いにもわかりやすい位置にボタンがあり元に戻す事が出来た。
そしてご丁寧にもローレンシアが空洞に嵌っている間はマスター・ララが引き取ったはずの1/1スケールお嬢様人形が表に出ていたのである。
さすがにやりすぎだ、という事で苦情に来たのだがマスター・ララには「先日ケースを用意すると言ったはずですが」と一蹴された。
「そもそもオルゴールメリーなどで目を回させては子供の知性に影響します。私が用意するわけないでしょう?もしするなら天蓋に映像スクリーンでも取り付けて教育資料を流します。いやこの場合は360度スクリーンでしょうか」
「ならそうして欲しいんじゃが!?優先順序が違うと思うんじゃが!?」
「ものは試しです。お嬢様。失敗の歴史が成功を生むのです」
「いや先にいいの思いついてるよね?なんで!?なんでそれ選ぶの!?」
「いえ、専用ケースがご所望と言うことだったので」
「・・・まあよい。その内容でまた作ってくれんかの」
という話し合いの末に雑談をし始めた所、ローレンシアの能力の話につながりそこから勇者の話へと移った。
「そうですね。わたしもたいがいですがズールドアの学者もたいがいですね」
そこに自覚はあるのか、とローレンシアは思うが話の切り出し方が焦点からずれているので黙って続きを待った。
「知っていますか、お嬢様。ズールドアの連中は勇者を召喚する枠組みを勇者系と呼んでいるのですよ」
「なにやら格好良いの」
「ええ。聞こえだけは。彼らにとり勇者とは研究対象でしかないのですよ。それによりどのような影響が出ようと研究材料であれば気にしないのです。もちろんパトロンの意向を受けて研究内容も偏ります。出てくるのはパトロンや自分たちに都合の良い研究結果のみ。都合の良い事しか起きないシステム、それが勇者系です。彼らは世界というブラックボックスに勇者という被検体をぶつけ、そこから生じる影響を観測してその結果を自分たちに役立てようとします。その結果を勇者効果とまで呼び、それによりどれだけの利益が出る、という話しかしません。全て自分たちに都合の良い話だけで作り、不都合はすべて隠蔽して出来た理論に正当性などないのですが、そんなものは彼らには必要ないのです。結果が全て、で片付けますから」
「やけにきつい言い方じゃの」
「以前私の研究がその勇者効果とやらで潰された事がありまして。こちらが慎重に環境を整えて研究の基礎部分を積み重ねている所に勇者を突撃させて何もかも潰してくれたのですよ」
「そうか・・・。大変じゃの」
「まあ、しっかりお返しをして今があるのですが」
「それは聞かなかった事にする・・・」
「お嬢様は使われるより使う側になってください。そうすれば何の問題もございません。その時のための教育はしっかりサポートさせていただきます」
「うむ・・・。まあ、よろしく?」
とりあえず訪問の目的を果たしたローレンシアは自分が勇者のように誰かに投げつけられるようにはなるまいと固く誓いながら部屋へと戻っていった。




