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第1話 天上簒奪

一本の木の枝が、我らが主人公の胴体を横から串刺しにした。


凪原悠真は、転生で新しい世界に来たばかりだった。


最初の十分で三回吐き、二回つまずき、荷車の車輪みたいにぐるぐる回る空を見上げ、魂だけエコノミークラスで運ばれてきたみたいに腹を押さえながら、草の上に膝をついた。


(ん? 転生って、もっと簡単で超楽な手続きじゃなかったのか?)


それが、新しい人生で最初に浮かんだ感想だった。


そのすぐあと、悠真は数時間かけて初期スライムを探した。


石を見つけた。


草を見つけた。


人間の顔をした蝶を見つけた。


スライムは、いなかった。


しばらくして、少し下の道を、木剣を背負った若い初心者らしき男が通りかかった。


腹が立つくらい健康そうな顔をしていた。


「おーい、そこの人! あのしょぼい初期スライムってどこにいるか知らないか?」


若者は立ち止まり、哀れむように笑った。


「スライムなら数週間前に辞めたよ。もう限界だったらしい」


悠真は瞬きをした。


「辞めたって、どういうことだ?」


「チュートリアルモンスターは搾取だって言ってた」


二人は遠くから叫び合い続けた。


「じゃあ、このスポーン地点から出る方法は分かるか?」


「ごめん、何の話か分からない」


そう言って、若者は歩き去った。


悠真は一人になった。


道に迷い、スライムを殴る権利すらないまま。


さらに時間が過ぎたころ、悠真は巨大な木の陰に、休めそうな場所を見つけた。


幹のそばに座り、足を伸ばして空を見上げる。


「まあ、ここまで出遅れるとは思ってなかったけど。もしかすると、これは休んで、焼きたてのパンを食べて、めちゃくちゃ強いスキルで幸せに暮らせる、スローライフ系の世界なのかもしれないな」


悠真は笑った。


「ああ、案外悪くないか。だって俺のスキル名、天上簒奪だしな。こんな名前なら絶対チート級だろ。転生ものではよくあるやつだ」


その瞬間、木が彼を貫いた。


枝が生きた槍みたいに幹から飛び出し、悠真の腹を突き抜け、その体を地面から持ち上げた。


悠真は口を開いた。


なぜか、悲鳴は出なかった。


木が動いた。


樹皮に歪んだ亀裂が走る。


太い根が地面を裂く。


幹が悠真の上に折れ曲がり、木の奥に埋もれていた赤い目をいくつも露わにした。


そのすべてが、悠真を見ていた。


葉がざわめいた。


笑い声みたいだった。


「あ?」


悠真は、自分を貫いている枝を見た。


「これ、木の形をしたスライムか?」


木は悠真を空中で揺らした。


一回。


二回。


それから、チュートリアル用のゴミみたいに投げ飛ばした。


悠真は茂みと石と、残っていた尊厳の概念すべてを飛び越えた。


その向こうに、一人の少女がいた。


短い紫の髪。


どう考えても目立たないことを不可能にする大きな帽子。


そして、普通っぽく見せる努力を全力で台無しにしている黒いマント。


小さなノートを胸に抱えていた。


彼女は一人で、恐ろしく真剣に台詞の練習をしていた。


「はい、よろしくお願いします……私も……私もパンが好きです」


一拍。


ノートに目を落とす。


「いい天気ですね。衛兵を呼ぶ必要は、まったくありません」


深く息を吸った。


「私はただの普通の女の子です」


悠真は彼女の上に落ちた。


少女はよろめき、かかとを軸に回転し、何らかの物理的奇跡か、この世界の法則に重大な欠陥があったせいで、気づけば、悠真を腕の中に抱え込んでいた。


少女の目が見開かれた。


顔が耳まで赤くなる。


串刺しで、血まみれで、確認したくない穴から命が流れ出している悠真は、苦労して手を上げた。


「助けて」


「わ、私……私……」


少女は悠真を見た。


それから血を見た。


それからノートを見た。


それから、もう一度悠真を見た。


「私はただの普通の女の子です!」


その瞬間、空が裂けた。


黒い亀裂が、空き地の上に開いた。


最初は細く、青空を巨大な爪で引っかいたような線だった。


それが広がっていく。


中から、不可能なほど暗く、重い光が落ちてきて、風もないのに草を傾けた。


小石が浮かび始めた。


葉は落ちる代わりに上へ昇った。


少女の影が地面で震え、三つに分かれた。


悠真はそれを見て、それから彼女を見た。


「転生して数時間でヒロインの腕の中で死ぬ予定はなかったんだけどな」


少女がびくりと震えた。


「ヒロ……?」


亀裂が広がった。


「私はもう、普通の女の子だって言いました!」


「普通」という言葉に、反響が混じった。


裂けた空から、黒いエネルギーが巨大な円となって凝縮した。


いくつも重なり合い、人間が読めるはずのない記号で覆われている。


圧力が空き地を押し潰すように降りた。


空気が重くなる。


彼女の帽子がわずかに浮いた。


まるで現実そのものが、そこから逃げようとしているみたいに。


遠くで、木の化け物が根を地面に引きずりながら進んできた。


赤い目が悠真を捉える。


まだ生きていると気づいたのかもしれない。


悠真は息をしようとした。


体が拒んだ。


「なあ……」


少女が不安そうに身をかがめた。


「はい?」


「これがチュートリアルなら……」


血を吐いた。


「……クレームを入れたい」


そこで、悠真は最後の息を吐いた。


同時に、空の裂け目が三倍に広がった。


黒いエネルギーが爆発した。


まるで別の世界から夜の一部を引き剥がし、そのまま大地に叩きつけたみたいに。


木はすべての枝を持ち上げて防ごうとした。


遅すぎた。


最初の円が樹冠を押し潰した。


二つ目が根を地面から引き抜いた。


三つ目が、その下で底のない口のように開いた。


木が叫んだ。


葉が黒い炎で燃えた。


赤い目が一つずつ消えていく。


そして、すべてが消えた。


さっきまで草と涼しい影と木があった場所には、焼けたガラスのように滑らかな、巨大な黒い円だけが残っていた。


縁の土から煙が上がっている。


小さな木片が空から落ち、地面に触れる前に灰になった。


少女は、破壊された空き地の中心で、死んだ悠真を腕に抱えたまま立ち尽くしていた。


彼女の頭上では、黒い裂け目がまだ空で光っていた。


マントは風もないのに揺れている。


帽子は傾いていた。


顔はまだ赤い。


彼女はクレーターを見た。


死体を見た。


それから、地面に落ちている、開いたままのノートを見た。


そこには、まだこう書かれていた。


「今日の目標:話しかけやすそうに見えること」


少女は固く唾を飲み込んだ。


「ただの初心者用の木だったのに」


すっかり黒くなった空き地で、頭上の空が割れたまま、悠真は彼女の腕の中で死んだままだった。


では結局、天上簒奪というスキルは、何の役に立つのか。



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