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22.実行力



「いや〜、すっかり真っ暗だ!」


 ケイン生徒会長は伸びながら、すっかり暗くなった空を見上げていた。

 あの後、私とケイン生徒会長は、自由参加者を募る為の貼り紙製作や、教室に残って勉強している庶民の子達に声を掛けたりしていた。


「けど、かなり充実した時間を過ごせましたわ。自由参加の勉強会募集にも興味を持って頂けたみたいですし。」


 私は、手応えを感じ、思わず拳を作りガッツポーズをしてしまう。完全に浮かれている…と、分かって居ながらも、この手応えはかなり気持ちが良いものですわ。


「リリアーナさんが素晴らしい提案と、声掛けを頑張ったからじゃないか?」


 ケイン生徒会長が、目を細め私に微笑みかけてくれる。うん、これある意味素敵スチルですわね。

 ゲームでは登場しなかったが、ケイン生徒会長もかなり整った顔をしてますし、ゲームキャラでも遜色ないですわ。


「あら?私達は既に同志ですわ。出来ましたらこれからも、ケイン生徒会長にはお世話になりますもの、リリアーナと部下の様に呼んで頂きたいですわ。その方が、私の身が引き締まりますわ。」


 私の申し出に、ケイン生徒会長も思わずといった表情で破顔する。あらら…かなり良いですわね。


「あはは、了解。これからは気兼ねなくリリアーナと呼びたい所だけど…俺からすれば、リリアーナちゃんかな?可愛い部下が出来て感激です。」


 ケイン生徒会長は、ワシワシと私の頭を撫でてくる。私よりも大きな手で頭をワシワシされるのは、この学園に来てからは初めてだ。


「あと、俺の事も生徒会長じゃなくて良いからな。ケイン先輩位にしてくれ。リリアーナちゃんなら良いからさ。」


 少し照れくさそうに、私の頭を更にワシワシしながらケイン生徒…先輩が言う。うん、かなり良い関係を築けてますわね!

 やっぱり、何か企画運営をするならば、メンバーとは仲良くしとくに越したことはない。円滑な情報共有のためにも、これからも宜しくお願いしますね。


「では、ケイン先輩!明日も引き続き宜しくお願い致しますわ。」

「はいはい。了解ですよ、お姫様。」


 ケイン先輩の軽口を聞きながら、寮へ向かう。部屋に帰ったら、マリーに今日の事を話してみましょう。

 夕食時には、サクラも勉強会に誘ってみましょう。きっと、サクラは私と一緒に運営まで手伝ってくださいますわ。うふふ、楽しみですこと。










「あの小娘…、エデル王子だけでなく、ケインまで籠絡した挙句色目まで使いましたわね…。許さない…。絶対許さない…。」


 誰も居なくなった生徒会室で、窓からケインと共に寮へ戻るリリアーナを、仄暗い淀んだ憎しみの炎を瞳に揺らし射殺さんばかりに睨み付けながらヴィオラは呟いていた。


「そもそも、何故あんな出しゃばりで傲慢で、全ての男は自分に跪くと思ってる様な女をエデル王子は婚約者にしましたの…?アイスフェルト公爵が娘可愛さでゴリ押しした所為で逃げられませんのね…。」


 ヴィオラは、エデルが生徒会室へ持ってきた補習授業会場に関する資料を握り締め、熱の篭った声で歪んだ想いを呟き続ける。


「そうですわ…私が、エデル王子を救わなければなりませんのよね。あの魔女の様な小娘の手から王子様を助けるの。クク…クヒヒ…」


 ヴィオラは、歪んだ笑顔で早速色々な下準備をする為に、生徒会室を後にする。

 その足取りは軽く、周りも見えていなかった。



「女って…」

「リリアーナちゃん、同性には、嫌われるか好かれるかの2択みたいな性格っすからねぇ。でも、リリアーナちゃんなら笑顔で躱しそうっすよねぇ。」



 生徒会室の扉の後ろに、大量の書類を抱えたエデルとカリムが居たのだが、ヴィオラは自身の妄想に夢中になり気付いていなかった。


「いや、うんリリアーナなら笑顔で退けそうだ…けど、私が介入…」

「いや、女の戦いに男が出しゃばると、碌なこと起こらないっすから辞めた方が良いっすね。うん。手出しすると、リリアーナちゃんに更に嫌われますよ。」


 カリムが、的確にリリアーナの性格を汲み取りエデルを止める。このまま、またエデルの好きに行動させると、婚約破棄どころか息の根まで止められそうだ…。と、いうのがカリムの見解だ。


「けど、私はリリアーナが心配で…!」


「あ〜、リリアーナちゃんなら、「私の事より、国民の事を第一に考えられませんの?それが、無理なら私の喜びそうな事を考えて行動して下さいませ。」って言うんじゃないっすかね?」


 カリムは、リリアーナの声真似をしながら言いそうな台詞を言うと、エデルは顔をしかめる。


「リリアーナなら、絶対言うな…」


「でしょ?だったら、リリアーナちゃんを妨害するであろう人を排除するより、リリアーナちゃんが喜ぶ事を考えて動く。それが、エデル王子がリリアーナちゃんに好かれる第一歩っすね。」


 カリムの言葉に、エデルは少し考えた後、やっぱりそうだよなぁ…と、以前学園長に宣言した、国民全てに文字を教える!を、実践すべきだと思い至る。



 エデルは、そうと決まれば、元々のポテンシャルの高さを活かし、数日後には王国内主要都市に複数ある教会、城下にある噴水広場、何故か商業ビルドの会議室までもを押さえていた。


 また、カリムの宣伝力により同時期に城下並びに、王国内のほぼ全庶民に、毎週末文字や数字を中心とした勉強会を開催する事が伝言ゲームの様に伝わっていった。


 この2人のおかげで、リリアーナは補習授業以外にも勉強会を毎週末開催する事や勉強会がどの様なものなのかを説明する手間がなくなり、また王子とその婚約者がこの勉強会を開こうと動いた事は初期の段階から広まっていた事で、庶民間でのエデル王子とリリアーナ公爵令嬢の評判はうなぎ登りとなる。



「なぁカリム、こんな事でリリアーナは笑顔になってくれるだろうか?」


「見てくださいよ、国のみんなの表情を。それが答えっす。」


 エデルは、う〜ん?と考え込みながら、学園長室に向かう。王族として、また一学園の生徒として、学園長にある事を提案する為に。


「う〜ん…私は、リリアーナがまだ満足してくれないと思っているんだよ…。うん。」


 この後、エデルが行う提案は、リリアーナおも驚かせたのだが、それはちょっと先のお話。


 

  

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