2.事実確認
世界の確認。動き始めるのは次話からの予定
さて、優しいお母様が病み上がりの娘を気遣い席を外したので、病み上がりの娘は記憶の整理をする事にしました。
まず最初に、私ことリリアーナ・アイスフェルトの事である。
ゲームと同じルートであれば、公爵令嬢であり2年後の5歳になった際にエデル第一王子の婚約者となる予定である。
学園入学後からはプレイヤー(主人公)のライバル役であり、お邪魔虫の悪役令嬢である。
見た目は名の如く、全体的に色素の薄いカラーリングで、正に宝石の如く美しいのだが、性格の悪さからゲーム内では存在感をアピールしていた。だが、そこは乙女ゲーム!例え悪役であろうとも男達は彼女を無視できない程だ。
むしろ、ライバル役のリリアーナが美しいからこそ、アバターに廃課金する事でしか限定スチルを拝めない程手強かったのだ。
そして、アプリゲームだからこその強みである、追加ストーリーやら限定スチル追加やらで、ストーリーの枝分かれが激しくやり込めばやり込むほどエンディングを拝む事が難しいゲームだったのよね。
何もしないでも拝めるノーマルエンディングは、廃課金者からすればバットエンディングと同義語。エンディングを拝めない程濃密な日々を過ごし、追加ストーリーの為に無意味に逆ハールートで時間稼ぎをしたりと、中々エグい楽しみ方をしていた。
それ故、リリアーナが悪役でノーマルエンディングでの扱いは分かるのだが、追加ストーリー次第ではどの様なラストを迎えるのかは分からないのだ。
何分、限定スチルの為だけにプレイしていたもんだから、エンディング回避何回もしてたしね…。
「なるようにしか ならない…か…」
なら私は、役割を果たす必要があると思い、ゲームでのリリアーナに負けない様、完璧な悪役令嬢を演じなければならない。
じゃなきゃ、本来楽しめた筈の限定スチルが見れないじゃないか!と…。
自身の追放等考えつくバットエンディングよりも、限定スチルを生で拝めるかもしれない可能性に心は弾む。
なにせ、推しはおらず「限定」の為だけに廃課金を繰り返した私には隙はない。そして、ある意味で廃課金する事で限定スチルを現生で拝めるチャンスなのだ。
「かんぺきに、かんぜんに、すばらしいほどの あくやくれいじょう なってやるわ!」
私は、廃課金をする事を自分に誓った。
「おかぁさまに、かていきょうしを 頼んでもらいましょ。」
◇
こうして、享年27歳冴えないOLだった私は、廃課金を繰り返す程ハマっていた大好きなゲームの世界に転生をした。
その世界では、プレイヤーにとって最大のライバルである悪役令嬢のリリアーナ・アイスフェルトに生まれ変わっていたのだ。 何がきっかけで、何がそのような事をしたのか分からないが、大好きなゲームの世界で限定スチルを生で拝めるかもしれない。そんな淡い期待だけを胸に齢3歳の夏、悪役令嬢になる事を誓った。
きっと、私が私を完璧に演じる事で見れる世界があると信じて。
そして、この日から私の地獄の特訓が始まった。
公爵令嬢として、恥ずかしくない振る舞いや、ダンスの練習、果ては自分の危険くらい自分で回避するため!の名目で剣も覚える事に。
日本に住んでた時には出来なかった事や、学べなかった事にも果敢にチャレンジをしていこう、それがきっと私にとっての廃課金になるだろう!の精神でひたすら貪欲に学んでいった。
基本スペックの高い公爵令嬢だとしても、3歳児の私が学べる事はまだまだ多くはなく、基本の基のみだけだが、着実に成果は出ていた。
マナーは、前世の記憶も相まって中々上達は早く、4歳になる頃には家庭教師から太鼓判を貰える程に。
ただ、剣は痴漢や大人の一般男性の撃退が出来る程度であり、剣を商売道具にするまでには実力不足だろうな…と、云うのが私の見解だ。
講師は私の背後にある公爵家に対するおべっかなのか、やたらと褒めてくるし持ち上げてはくれるが、日本人には馴染み深いイメージにある忍者や侍の様な、もしくは戦隊ヒーローや仮面のヒーローの様な動きが再現出来ないのだ…。
そこまで出来てこそのプロであり、やはり、今の私の動きでは商売道具にはならないだろう。
そして、貴族といえばダンス!
イメージにある、世界的に有名な映画実写化で観たダンスを再現が出来るまでにはなった。まだまだ手足は短く、優雅というより駒鳥みたいな愛らしさだが、私的にはかなり良いと思ってる。
今後、成長していく中で優雅さを身につければ100点満点と言えるだろう。
◇
そんな感じで、ひたすら廃課金を繰り返し5歳を迎え、来月には第一王子主催のお茶会が開かれる。
実質、そこはお見合いの場であり、第一王子の婚約者を選ぶ場でもあるのだ。
「第一王子との初めてのお茶会、中々良いスチルだったのよね、まぁ、ゲームでは白黒の物悲しい感じに演出されてたけど。」
「リリー?スチルとは何かしら?お菓子?」
お母様の不思議そうな声が聞こえる。そうだ、今はお母様とお茶会へ着ていくドレスに合わせて装飾品を選んでたんだった。
「うーん…、私にとってはご褒美みたいな風景の事…ですかね?」
「ふふ、ならとっても楽しみね。」
「えぇ、とっても楽しみです!」
生のスチルに期待を膨らませ、私はお母様と一緒に当日の髪飾りを選ぶ事に専念する。
そう、お茶会をきっかけに私にとっても私にとっても世界が動き出すのだ。楽しみ以外ありえない。
「本当に楽しみですわ…。」