プロローグ
努力を重ねれば重ねる程、本来の目標から遠ざかりとんでもない結果になってしまった。を、結論ありきからスタートするお話です。
この国の立役者である、一人の女性を紹介しよう。
昔々、遠い昔。この国がまだルワード王国と呼ばれていた時代、一人の公爵令嬢が王妃となり、様々な偉業を成し遂げた。
そして、その偉業は今尚このルワード連邦王国の基盤となり、国を支えているのだった。
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史実に残るリリアーナ・アイスフェルト公爵令嬢は、ルワード王国一の才女であり素晴らしき美姫であった。
その見目はとても麗しく、初雪の様な白銀の髪、薄いラベンダー色の瞳を彩る長い睫毛、薄くピンクに色付いた唇、その姿はまるで美術品の様に、細部まで完璧に整えられた美しさだった。
そんな美しきリリアーナは、由諸あるアイスフェルト公爵家の長子として生まれた。
王国第一王子の婚約者でもありながら、格式に囚われない柔軟な思想の持ち主であった。
リリアーナは、格式を重んじるだけでなく、女性の社会進出や民の生活向上を唱い、ありとあらゆる夜会や集会に訪れた。更には、自身の主催する茶会では、特に自由に柔軟な思想でもって、貴族階級だけでなく様々な階級の人達を集め、人脈作りに、また未来の構想の為、情報収集に余念のない御令嬢であった。
そんなリリアーナの婚約者である、エデル・ハワード第一王子は、美姫で有名なリリアーナ・アイスフェルト公爵令嬢の全てがたまらなく愛おしいと公言し、自国だけでなく諸外国にまでその寵愛ぶりが流布されている程だった。
そのためリリアーナが学園に在籍中は、美しきリリアーナを悪役令嬢として吹聴する一派も出る程であった。
だが一派の思惑虚しく、この学園生活がエデル王子とリリアーナ令嬢の揺らぐことのない愛として、リリアーナの愛称から、百合学園物語と銘打ち、今なお連邦王国だけでなく、世界中で愛読されているベストセラーとなっている。
◇
さて、そんな美姫で有名であったリリアーナ王妃であるが、リリアーナ自身が遺したどの手記にもリリアーナ自身の事は記されていなかった。
時の人リリアーナ・アイスフェルト公爵令嬢からリリアーナ・ハワード王妃に至る迄の話は、リリアーナを知る者達の手記等に記されている話を元にまとめられている。
では、実際のリリアーナはどの様な人物であったのか、史実に無いリリアーナ自身の気持ちは、それはもう誰にも分からない。
自国の国民に愛されたリリアーナ王妃の生涯は、どの様なものであったのか…史実に記された事以上の事は、私にもわからない。
ただ一つだけ確かな事がある。それは、あの時代近隣諸国との緊迫した関係の最中、リリアーナ王妃が生涯をかけ遺した様々な政策や王妃の外交手腕は、今尚人々の暮らしを豊かに、そして一人一人の人権を尊重した素晴らしき政策であると同時に、リリアーナ王妃以外、誰も成し遂げられなかったであろう偉業であると断言出来るだろう。
〜リリアーナ公爵令嬢の生涯 著者:カローラ・アイズ〜
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「大量の資料をひっくり返したけど、王妃の日記とかは一冊も無かったんだよな…。夫であり国王の日記はあったけど、どれもコレもリリアーナが美しくて辛いとしか書いてないし…。はぁ…残念…。」
書き終えた原稿をまとめ、資料を片付け始める。
その大量の資料の殆どがリリアーナ王妃が立憲した数多の法改正案であり、現在も現行で国の指針となっている。
また、彼女が外交の為に集めたとされる、近隣諸国の情報は今尚国の運営に欠かせないものとなっており、新しい情報を都度追加していき、外交の為の骨組みとなっている。
「しかし、こんだけの事を成し遂げたんだ、本当に聖女様か何かだったのかもな。」
リリアーナ王妃を生涯愛し続けた、エデル国王の手記を大量に読んだからだろうか、思考がエデル国王寄りに為っているのを感じていた。
「国王が夢中になる美姫か…、絵姿だけでなく、実物も拝見したかったものだ…。」
男の呟きは、誰も居ない室内に虚しく響くのだった…。