第76話 天を掴む力+Seventh Lord
「うぁー、何も分かんねぇっすー!!」
草木ヶ丘の街中を探し回り何日が経ったのか。写身は未だ有益な情報を手に入れられず、頭を掻き毟る。
「俺だってなんか、なんか皆さんの力になりたいっすー!! ……うひっ、今度はなんすか!?」
冬も半ば、コートを羽織っていたにも関わらず背筋に凍てつく様な寒気が走った。
「この前も変な熱波が来たし、ほんとついてないっす俺…………ん?」
少し離れた先。誰もいない閑散とした街道に目が行く。不自然に空間が歪んでおり、その中心には灰色に揺らめく謎の物体があった。
「……もしかしなくても、あれ、やばい奴っすかね」
いつも一緒のカメラを取り出し、中央に捉える。そこでようやく揺らめきの正体を掴んだ。
写身は息を呑み、撮影した写真を桜達へと送信したのだった。
「……っふふ、君達も暇だねぇ」
自分を取り囲む4つの影に気づき、ノアは覆っていた炎を消した。
以前とは違い炎を象ったドレスとローブに身を包み、灰色の瞳の中で炎が揺れている。
「衣替えでもしたかよ。暇なのはお互い様だな」
「よく私がここにいるって分かったね?」
「頼れる友達がいるの、貴方と違って」
山神と紅葉に目を向けると、背後にいる彼岸と蒼葉へ向き直る。
「それで、何の用かな?」
「貴方が持っているプラウダのチップを渡して貰う」
「あぁ、アレか。いらないけどなぁ、君達に渡す理由も無いしなぁ」
「お前の許可は、元より求めていない」
彼岸の言葉を皮切りに、4人は一斉にローダーを起動。ノアへ挑む態勢を整える。
「仕方ないなぁ。おいで」
「「「「変身!」」」」
「変身」
同時に変身。眩い光と灰色の光が混ざり合い、消えると同時に4人が同時に挑み掛かる。
「ノアの姿が変わっている!?」
以前と違い、背中には翼が折り畳まれ、肩に湾曲した角と光輪が出現。身体には火炙りにされる天使と悪魔の紋章が浮き出ている。
「関係あるかよ! ぶっ飛ばす!!」
ヒガンバナのデストロイセイバーと、ホウセンカの拳がノアへ叩きつけられる。しかしノアは一切怯む様子はない。
「手応えが薄い!!」
「いや、痛いよ。でも、それだけだから」
両手を払い除けた瞬間、2人は吹き飛ばされた。
「ぐっ!?」
「うぉぉぉっ!?」
「2人とも!」
「紅葉、データシェアを!」
ユキワリとネメシアはノアへ蹴りを入れながら、データシェアを開始しようとする。しかし、
「中々あれも厄介だったね」
ノアの背中から翼が広がり、散った羽根がナイフの様に鋭利化。飛翔してプレシオフォンとアルゲンタヴィスフォンを串刺しに、地面に繋ぎ止めた。
「そんなっ!?」
「前とは明らかに……」
「違うんだ。比べ物にならないくらい」
ノアは2人のリワインドローダーを掴む。刹那、爆発と共に破砕、腰から外れてしまう。
「変身、がっ!?」
「蒼葉、う、ぁぁぁ!?」
「転校生、社長!?」
変身が解けた2人が一瞬にして燃え上がった。
「あー、ごめんね。生身だと近づいただけで燃えちゃうんだ」
「くそっ!!」
ホウセンカは2人をノアの前から回収。拳を振るった衝撃波で燃える炎を吹き飛ばす。
「消えるタイプで良かった、けど……!」
服の隙間から覗く肌は無事。しかし未だ2人は猛火に焼かれているかのように苦しんでいる。
「おい、大丈夫か2人とも!!」
「私は、いいから……ぅ、ノアを……」
「彼岸と、山神君なら……ぁ、っ、きっと……」
「大丈夫な訳ねえか畜生! おい彼岸、ここは一回……」
「2人を連れて逃げろ、時間くらいは稼ぐ」
「だよなぁ!」
2人を抱きかかえ、ホウセンカは退却しようとする。しかし、
「行かせない」
氷の壁が目の前に立ち塞がり、退路を塞ぐ。同時に睡蓮が姿を現した。
「お前も懲りねぇな。こんな壁ぐらい……」
「ふっふーん! させないよー!」
タックルを仕掛けようとした直前で、ホウセンカは別方向からの攻撃に感づく。抱えた2人に当たらない様、咄嗟に背中で受ける。
「いってぇ!! ちっ、ノアの分身か!」
「ピンポーン! ふっふふ、そんなお荷物持って睡蓮と私を相手出来るかなー?」
「今のうちに、忌魅木ごと始末する」
キョウカロータスへ姿を変えた睡蓮が氷の手剣で斬りかかり、赤いノアの分身は腕をランチャーへ変えて火炎弾を発射。
「やるしかねぇ……2人とも、ちっと熱いが少し我慢な!」
ホウセンカの装甲が爆砕、弾け飛び、氷の剣と火炎弾を押し返す。身体を熱波で覆い、蒼葉と紅葉を守る。
「あっつーい!」
「これで少しは……っ、うぐぁ!?」
それを見たキョウカロータスは地面へ腕を突き刺す。アスファルトを伝う極低温の冷気が熱波をかき消し、3人を飲み込もうとする。
「悪い2人とも!」
凍りつく寸前でホウセンカは2人を放る。直後、ホウセンカの身体は完全に凍結してしまった。
「やるじゃん睡蓮!」
「……この程度」
「山神真里!」
「ほらほら、君はこっち」
振るわれる灰色の炎をデストロイセイバーで払い除ける。しかしその隙を突いて2本の剣がヒガンバナを斬りつけた。
「こうなればヒガンバナも打つ手無しだな」
「…………」
黒い分身と青い分身。ヒガンバナの背から火花が散るが、続く攻撃はブレイクソードとデストロイセイバーで受け止めた。
「君が手に入れた力も私には通用しない。せっかく足掻いたのに無駄だったね」
「無駄かどうか、まだ決めるには早い」
「んー、早くないよ。君達を消した後は日向桜を消して、残りのローダーを吸収する」
炎を纏った拳をヒガンバナへ打ち付ける。巨大な爆発と共にヒガンバナの身体が吹き飛び、氷の壁に叩きつけられる。そのまま身体が凍結してしまった。
「あぁ。いくらローダーを吸収したとはいえ、呆気ない」
「ノア様。急ぎ日向桜を討ちに……」
「いや、あっちから来てくれたみたいだね」
バイクのエンジン音。同時に2つの影がノアの前へと躍り出た。
「日向桜、それにエヴィ。待っていたよ、まさか君達から来てくれるなんて」
「……ノア」
桜が一歩踏み出した瞬間、分身体3人が取り囲む。
「でももう話す事は無いんだ。君は私の理想郷の邪魔になるだけ。ローダーを渡せって言って渡すような人間じゃないし」
ノアが言い終わると同時に、黒い分身と青い分身が2人へ斬り掛かった。
だが次の瞬間、桜の右腕が輝く。それが消えた刹那、2体の分身は弾き飛ばされた。
「なっ!?」
「……!?」
「ちょちょ、何が起きて、うぇっ!?」
続けて赤い分身も吹き飛ばされる。ノアの目が僅かに見開かれる。
「そのローダー……ふーん、またお得意の進化?」
「これは、いや、これまでも、俺一人じゃ進化なんて出来なかった。たくさん失って、もう戻らないものもある。でもノア、お前から取り戻せるものはまだ残っている」
右腕で輝いているのは、新たな姿へ生まれ変わったプラグローダー。中心のピュアチップを囲うように7つのコネクトチップが接続されており、銀色のローダー部分は唇を結ぶノアの顔を映している。
僅かに振り向き、桜を見守るエヴィと目を合わせる。ここに来る前に交わした、ある約束をもう一度胸に刻む為に。
《Connection Server Cem》
中央のピュアチップを押し込むと、ローダーが起動。7つのチップが展開する。それらを1枚ずつ押し込んでいく。
《First Loading, Second Loading, Third Loading,Fourth Loading,Fifth Loading,Sixth Loading,Seventh Loading》
《All Connection Loading!!》
コネクトチップが挿入されていくごとに、プラグローダーからローブを纏った天使達が出現。桜を取り囲み、円陣を組む。
天使の内の1体と目が合う。きっと彼の魂だろう。小さく笑い、桜はプラグローダーをスライドした。
「変身!!」
桜の姿がディノニクスジェノサイドへ変化。そして天使達が剣を掲げると、鋒を点として頭上に巨大な光輪が出現。迷いなくその中へ飛び込んだ。
光輪を潜り抜けたディノニクスジェノサイドの身体は白く変化し、巨大な翼が広がる。羽化を遂げた蝶の如きリンドウへ、天使達が光となって集う。
頭に知恵を、右足に信仰を、左足に節制を、右腕に正義を、左腕に慈愛を、胸に勇気を、翼に希望を。人類が秘めた7つの力を鎧として身に纏い、
《天地開闢! 英雄、7つの力を継承せし時、天を掴む正義の王となる!! Aim for justice,seek ideal,be prepared, and surpassGod!! 天臨せよ、七天皇!!》
舞い降りるように地上へ着地。降り立つと同時に吹き荒れた突風は、氷の壁を砕き、凍り付いたヒガンバナとホウセンカを解放し、火傷に苦しむ蒼葉と紅葉を救う。
リンドウの進化の極致、《セブンスロード》が降臨した。
「なん、なんだい……その、姿は……こんな、こと、予想には……」
「さぁ、ヒーローの出番だぜ、ノア!」
続く




