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幕舎にて。耶律楚材vsモンゴル武将

 幕舎での耶律楚材は、歴戦のモンゴル人武将達に囲まれながら睨まれていた。

 モンゴル武将たちは耶律楚材に聞く。


「ユダヤ人……だと?」

「ユダヤ人であるお前が俺達に、具体的に何をくれるというのだ? 今すぐここに食料や女をくれるっていうのか?」


 耶律楚材は怪しげに微笑み、一礼。


「それを手にする為の計画でございます」


「計画?」


「はい! 我らユダヤ人は、流浪るろうの民として世界を渡り歩きました! ある者は日本列島に、ある者は欧州に! ある者はインドに! そして私は中国にいるのです! 私には……世界に対する知識があります!」


「……で? どこでも一番になれず、自分の国さえ持てず、ずっと負け続けた雑魚共だろ? その分際で、俺達最強遊牧民と対等に話し合えると思ってるの?」


 モンゴル武将達は苛ついているようだった。

 無理もない。

 仲間同士でなく、新参者の話を聞くために集められているのだ。

 そして……耶律楚材の持つ陰キャの雰囲気は不良系の雰囲気あるモンゴル軍と不和を起こしておかしくない感じがする。

 不和が起こって当然だ。


 だが、チンギスハンは無言のまま耶律楚材を冷静な瞳で見つめていた。

 やはりあの男はモンゴル軍の中で毛色が違う冷静な雰囲気を持っているようだ……非モテという地雷を踏みさえしなければ、強〇さえなければただの天才武将なんだろうな。


 耶律楚材は高笑い。

 あ、モンゴル武将達が苛ついてる。


「むはははは! 私は貴方達に、案内ガイドすることができます! 私は、ユーラシア大陸一の案内人ガイドです!」


「ガイド?」


「はい! 貴方達は、世界史上空前絶後の陸続き帝国を造れるはずです!」


 モンゴル軍人達は見つめ合い、怪訝な顔をしている。


「世迷い言か?」

「いや、我らが最強なのは、事実」

「……耶律楚材よ、根拠は何だ?」


 耶律楚材はモンゴル武将達に、端的な答えを出した。


「キュロス大王とダレイオス一世とアレクサンドロス大王です」


「聞かぬ名だな」


「大陸で最大領土の国を造った帝王の名です。今のところ、チンギスハンより偉大ですよ」


「……」


 無言だったモンゴル武将達まで、怒りを表情ににじませた。

 耶律楚材も「しまった」という顔をして震える。

 モンゴル軍人の地雷を踏んでしまったようだ。


「ハンより偉大だと? 殺すぞ!」

「不敬な、やはりこの男を殺すべきだ」


 耶律楚材にモンゴル武将達は詰め寄り、殴りかかろうとした。


「ひいいい、これだから脳筋はあああ!」


 だが、その暴行はトップの一言で――チンギスハンの一言で未遂に終わる。


「面白い」


「な」

「え」


 モンゴル武将達は動きを止め、耶律楚材は不気味な笑みに戻った。


「は……ははは! いいぞ、英雄とはこうでなくては!」


 耶律楚材は地図を見せびらかし、モンゴル高原のある位置を指さした。


「まず……あなた方はあまりにも、歴史を知らない。当然です。歴史とは文字で受け継がれていくもの。文字を読み書きする農耕民族でなく遊牧民の方々です」


「そうだな」


 モンゴル武将達は苛ついているものの、拳を握りしめるだけで抑えた。


「……このユーラシア大陸で、初めて生まれた世界帝国。それがペルシャ帝国なんです」


「ペルシャ帝国?」


 チンギスハンは殆ど黙っていたが、聞いたこともない国に興味を抱いたのか耶律楚材に聞いた。


「はい」


「……まだあるのか?」


「いえ、アレクサンドロス大王に潰されました。敗戦してもしばらくはその名残が残ってたのですが、それは今から千年以上も前のこと。今では、、跡形も残っておりません」


「……ほう、ということは……いかなる強大な国も戦争で負けるということはあり得るのだな。我らが、中華の国々を倒すことも可能というわけか」


 チンギスハンの言葉に、モンゴル武将達がハッとする。

 耶律楚材は草原覇者の言葉にニヤリと笑って頷いた。


「はい。中華の国々は勿論、皆さまならロシアの首都くらいまでなら容易に滅ぼせるでしょう」


「……ロシア?」


 モンゴル武将達はキョトンとした顔をした。

 耶律楚材は苦笑しながらその疑問に答えた。


「金髪碧眼の民を知ってますか? 雪以上に白い肌、宝石のように美しい瞳、アジア人とは比べようもない程のスタイル」


 チンギスハンがギラつく釣り目を耶律楚材に向けた。

 怖すぎ。

 馬の目の前に人参をぶら下げたらこんな顔になるよなって感じの顔だ。

 やはりこの軍隊、最低だよ。


 そんな白人が好きなら自国の女性に白人男の種付けさせればいいだろうに。


「知っているぞ。朕はクリスチャンもムスリムもチャイナも、全て犯したいと常に考えているんだ」


 考えんじゃねえよ、そんなこと。

 そんなんだから歴史家にも大衆にも為政者にも嫌われるんだよ。


「そういえば、耶律楚材よ。貴様も、色目人だな。目に色がある。ロシアを我々に売り渡し、罪悪感はないのか?」


「そうですね。瞳が黒目でないというとこは私とロシア人は同じですね。でも、宗教も国家も民族も違うので……罪悪感なんてありませんね」


「そうか。では続けよ」


「はい。その……この世界で初めて世界帝国を作ったキュロス大王。そして、その次に……この世界で初めて世界帝国の物流を作ったダレイオス一世、この二名によってペルシャの繁栄がなされるのです」


 モンゴルとも中国とも関係がない国々の話をされ、モンゴル武将達は苛ついていたようだった。

 無理もない。

 ペルシャ帝国は今でいうイランからトルコ辺りの国だった。

 インドの極西部分まで関係あるけど、インドさえ……この頃のモンゴル人には遠すぎるだろう。 


 明らかにイライラした顔のまま、モンゴル武将達が机を叩いた。


「それと我らに、何の関係があるというのだ?」

「結論を言え、結論を! 殺すぞ!」


「ひいい、脳筋怖いよおおお! 結論なんて、最初から言ってるでしょおおおおお!」


 それを窘めたのは、モンゴル軍で唯一耶律楚材を一瞬で理解した男だった。

 チンギスハンが掌を使って部下達を静止させる。


「まぁ、落ち着け。恐らくこの者が言いたいのはこういうことだ。我々モンゴル軍に……世界帝国となれ、と言いたいのだろう」


「「「「「―――――!!!」」」」」


 チンギスハンの言葉で、モンゴル武将達の顔つきが変わった。


 無知が支配しているところでは英知を持っていても何の役にも立たない。


 チンギスハンは田舎者だが、世界を理解するだけの頭があるようだ。

 ……天才、か。

 教育もないのによく一瞬で理解できるな。

 明らかにモンゴルの武将の中でも抜きんでた頭脳を持ってる。

 強〇さえ無ければ、もっと評価されただろうな……非モテ陰キャ不細工の無敵乃人ジョーカーだから、嫌われるのは当然なんだけどな。


 耶律楚材はモンゴル武将達を一瞥し、胸を撫でおろした。

 なんだかんだ、この変人も暴力は怖いらしいな。


「はは。草原の覇者よ、一瞬で理解してくれましたか。部下達より貴方の頭は素晴らしいようですな。流石、殺し合いをしていたばかりのモンゴル民族を統一するだけあって……素晴らしい知性を持たれている」


 チンギスハンが褒められ、モンゴル武将の耶律楚材を見る目が変わった。自分たちのトップの良さをちゃんと認識できる、というのは一目置かれるのか。

 ……モンゴル軍は田舎者だが、馬鹿ではなく不良系の規律社会ってことか。


 ……俺は驚いた。

 耶律楚材に、ではない。

 チンギスハンは耶律楚材に褒められていても一切関心がなかった。

 奴はその言葉と、地図だけに関心がいっている。

 承認欲求、というものに関心がないようだった。

 常に実利だけを見てると言わんばかりの顔だ。


 耶律楚材はさらに解説を続ける。


「強大な他民族国家だったペルシャ帝国。それは騎馬兵を積極的に運用したアレクサンドロス大王によって終焉します。最強の軍事力が、帝国をそのまま継承し……ギリシャの田舎者と言われたマケドニア軍が世界帝国の全てを手に入れるのです」


「ふむ。面白いぞ」


「楽しんでいただけましたか!?」


「うむ」


 チンギスハンはぐいっと白い飲み物を飲み、頷く。


「世界初の世界帝国キュロス大王と三十歳で偉大な大帝国を造ったアレクサンドロス大王。現時点では俺より上の漢だな」


「分かってくれましたか?」


「この野郎」


「ひいいい!」


「そしてお前は……俺がそれを超える、と思っているのか?」


「は、はい。貴方様の武勇なら……中国や朝鮮半島、近くのイスラム系国家は勿論、ヨーロッパまで届くかと。陸続きなら大体いけます」


「ほう……」


「日本とかは無理でしょうね。島国はあなた方の強みを生かせない」


「だろうな。騎馬兵が活躍できるのは海でなく、陸なのだから。それに中国やイスラムよりも気になることがある」


「どこでしょうか?」


「白人。……偶に売られてきた奴隷で見るが、いい女だな」


 耶律楚材は明るく怖い笑顔で微笑む。


「ははは。西にいったら略奪し放題ですよ、貴方の軍があればね」


「……」


「ちなみに、攻めるならハンガリーという国まで進めることになるでしょう。ハンガリーは草原があって、騎馬民族にとってはとても大切な土地になります。そして、ハンガリーのハンは……フン族を意味します」


「フン族……」


「フン族は貴方と同じ、騎馬民族です。侵略のモデルケースがある、ということです。騎馬民族はその武勇を以て白人にも勝てるのです。アッティラ大王というフン族がヨーロッパに残した決して消えぬ傷跡、それこそがハンガリーなのです。当時最強の遊牧民たるアッティラ大王が強〇してできた国と思えばいいです」


「……」


〚その男は怪しかった。だがそれ以上に、その叡智が凄まじかった。どんな誰の囁きより甘美であり、怪しげな魅力に満ちていたのだ〛

 この話、カットしようか悩みました。

 なろう系からほど遠いんですよね、今更ですけど。


 もし『面白い!』とか『続きが気になる!』とか『道の活躍をもっと見て見たい!』と思ってくれたなら、ブクマや★★★★★評価をしてくれると幸いです。


 ★一つでも五つでも、感じたままに評価してくれて大丈夫です。


 下にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところに★があります。


 何卒、よろしくお願いします。

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