道「ツンデレってのはな。ツンツンデレデレの略なんだ」 覇者〖ツンツンデレデレ? 何だそれは〗
〖コミュニケーションは……難しいぞ。それってセンスがいるだろ。その感覚を養うのは生まれながらの才能が必要だ〗
「そうだけど、それが……コミュニケーションこそが恋愛の本質かなって。恋愛ってコミュニケーションにおけるジャンルの一つだろ?」
〖じゃあ……お前の求める恋愛って細かく言うと何だよ。何でもいいのか? その、揶揄い上手とかロシア語でデレるってのは朕には全く理解出来ないが〗
そりゃチンギスハンには分からないか。
ラノベ的ハイコンテクストな用語だ。
「一言で言うとツンデレ、かな」
〖意味不明なこと言ってんじゃねえ。何だよ、ツンデレって〗
チンギスハンは「要領を得ない」と言わんばかりの不快感ある顔になった。
「何で分からないんだよ」
〖ツンデレってそもそも何だよ〗
っち。
そんなことも知らないのかよ。
ナウでヤングなモダンワードを知らないとは。
数百年前に活躍した武将だけあって、若者の言葉についてけてないな。
これが、世代格差か。
「チンギスハン。お前、色々とこの世界について調べてきたんじゃねえのかよ。なのに、ツンデレも知らないのかよ」
〖軍事や政治や経済の知識は仕入れたんだが、ツンデレって言葉は一度も使われてなかった〗
俺は舌打ちしてしまう。
ツンデレを説明、か。
まぁできなくはない。
当たり前に使ってるからついつい言語化を避けがちだけど。
チンギスハンは申し訳無さそうな面をして、
〖ごめんな。朕……恋愛文化は映画でさえ見てこなかった。タイ○○ックやロ○○の休日とかでさえ、朕みたいな弱者男性が見ると嫉妬して強く憎しみにかられるから。だから恋愛系の用語ならさっぱり分からぬ〗
気持ちは分からないでもない。
ツンデレが恋愛用語かどうかは置いておいて、な。
「どちらも名作だからおすすめだぞ。チョイスが古い気がするけど」
〖う、うむ。で、ツンデレとは何なのだ?〗
「俺はそれなりに深く答えるだけの教養がある。教えてやるよ」
〖うむ、頼む〗
チンギスハンは真面目な顔で俺に頷く。
俺は咳払いし、
「ツンデレってのはな。ツンツンデレデレの略なんだ」
〖ツンツンデレデレ? 何だそれは〗
チンギスハンは怪訝な顔をした。
「例えば、男主人公と幼馴染みの少女がいるとするだろ?」
〖うむ〗
「幼馴染み少女は自分……もしくは主人公のことが好きだとする」
〖成る程……良いシチュエーションだな。それが恋愛文化的な王道ってのはギリ理解出来るぞ〗
チンギスハンの口角が少し上がる。
こいつ……オタクになる才能あるかもな。
「幼少の頃から仲の良い関係はあったんだけど思春期……中学生くらいになってから幼馴染み少女はこちらに微妙な態度をとるわけだ。その時、幼馴染みの少女はツンツンしてくるんだ」
〖仲の良かった幼馴染みがそっけない態度を取ってくるってことだな? 意味不明だ。仲の良い関係だったらそのまま続ければいいのに。裏切りもいいところだろ。朕は裏切りが嫌いだ。そんな女……嫌いだな。朕は裏切りが一番嫌いなんだよ!〗
チンギスハンの鼻息が荒くなる。
トラウマを思い浮かべたらしいな。
この男にとって「裏切り」は地雷らしい。
「チンギスハン。幼馴染みがそっけない態度をとって来るのは……迷っているからなんだよ」
〖何に迷ってるっていうんだよ。どうせイケメンリア充の伺いを立てて、空気の読めない朕みたいなな奴と距離を置こうとか考えてんじゃねえの?〗
……リアルだったらそういうことありそうだな。
それで告白したら空気が読めない勘違い君扱いされるのが目に見える。
陰キャ劣等者が告白したらクラスの可愛いマドンナに泣かれて、一瞬でつるし上げられて悪者扱いを受けるんだ。
流石、草原の覇者だけあって一瞬で物事の本質を掴んで来やがる。
「半分は正解だ」
〖半分?〗
「あぁ。そっけない態度をとるのは……幼馴染みとして好きか、異性として好きなのか迷ってるからツンツンするわけだよ」
〖! ……成る程、考えたこともなかった〗
草原で弓引いてばっかならそういうの考えることはないんだろうな。
「思春期なら色々あるだろ。周りに『夫婦-』とかはやし立てられたりとか」
〖そんな幼いことを中学生にまでなってやる奴らっているのか?〗
「自称陽キャのキョロ充とかそんな感じだろ」
チンギスハンは少し押し黙って、〖キョロ充か、成る程……〗と言った。
「幼馴染み少女はキョロ充達に冷やかされて、『べ、別にあいつのことなんか好きじゃ無いんだからね』と言ったりするわけだよ」
〖それだけ聞くと面倒臭い女だな。朕なら即殴って言うこと聞かせる〗
凄まじく暴力的な男だ。
流石、世界一の軍人だっただけあるぜ。
「そ、そんなことしちゃだめだよ。それじゃ恋愛じゃないんだよ」
〖そんな面倒な女のどこが魅力的なんだよ。単純に良い服を着ててずっと幸せそうに生きてた女を朕の遺伝子でぶち壊してやるのが最高、としか思えない〗
……この男に恋愛は無理だな。
憧れそのものがない。
そっか……恋愛と強○ってある意味では手段と目的が真逆なんだな。
やるまでの過程と、やるという目的。
チンギスハンは圧倒的後者のタイプで、強○の天才だったわけだ。
怖い怖い。
「学校の昼休みとかなら周りがはやし立てるけど、放課後に二人きりになったらデレデレになったりするんだよ。『さっきはあんなこと言ってごめんね』とかさ」
チンギスハンは腕を組んで頷く。
〖成る程、人目を気にして普段思ってること言えないってわけだな〗
「そうだ。それがツンツンデレデレ、略してツンデレ。普段ツンツンしてるけど、二人っきりになったらデレデレしてくる。そのギャップが良いってわけだ」
〖成る程〗
「これをギャップ萌えっていうんだ」
〖ギャップ萌え……〗
チンギスハンは「?」というような顔をした。
分からないらしいな。
「これは深くなりすぎるからそんな知らないで良い」
〖……多分、理解した。思春期になって好きだった異性を異性として好きなのか。友達として好きなのか。恋愛か、友情か、その違いに悩んでる。悩んでいる中、周りの空気を読めないキョロ充達がはやし立ててくる。それがその少女は恥ずかしくてしょうがない。でも二人っきりになったら本音で好きって言ってくるってわけだな?〗
「そうだ。正解」
こいつはやはり賢い。
ツンデレをすぐに理解してしまった。
話せば分かるとはこういうことか。
〖気持ち悪いな……即座に犯せば全て解決するのに〗
……前言撤回、こいつとは話しても分かり合えない。
なんて男だ。
俺は流石にぎょっとする。
やることが目的で途中経過の恋愛過程をまるで興味がないようだ。
……書き手として困るのは、チンギスハンは今まで作った中で最も「自分の意思」が強いタイプのキャラってとこですね。
あとラノベや少女漫画好きの人には申し訳ありませんが、チンギスハンはこの作品における彼はそういうのをディスるキャラです。フィクションの世界に浸ることは彼にとっては「現実から逃げた負け組」であり、実際に手を出した方が「現実を生きる真面目な朕」と判断する奴です。
もし『面白い!』とか『続きが気になる!』とか『道の活躍をもっと見て見たい!』と思ってくれたなら、ブクマや★★★★★評価をしてくれると幸いです。
★一つでも五つでも、感じたままに評価してくれて大丈夫です。
下にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところに★があります。
何卒、よろしくお願いします。




