暴君〖フェミニズムとか気持ち悪い〗 道「よく言えるな、そんなこと」
チンギスハンは鼻息を荒げ、力説を始めた。
〖フェミニズムとか気持ち悪い〗
「よく言えるな、そんなこと」
〖女に権力を持たせると国が滅ぶ。正しいことを女は否定する。女など、殴って躾けるべきなのだ。朕は思うんだよ、まともな女はどうせ男を立てる。しかし、女で人の上に立とうとする命はろくな奴がいない。お前らの社会は女性に過度に優しいからダメに見えるんだ。だから少子化して国が傾いてんだよ〗
……傾国ってことね。
中国古典の影響受けてそうな考えだぜ。
個人的には女性が政治家になった方がマシな場合もあると思うけどな。
〖衰退する欧米文明圏に対して、我らがモンゴル帝国は人類屈指の繁栄をした。なぜか? 我らは男系社会を造ったからだ。朕は褒められてもいいと思うんだ。それは、女を粗末に扱ったからだ〗
「その意見に『うん』って俺が言うと思う?」
〖……聞いてくれるかな、と思って。言うだけ言わせてくれ〗
「……」
俺は溜息する。
困った覇者思考だぜ。
とは言え、実はフェミニズムの見直しなんて俺はいつか来ると思ってる派だがな。
〖権力とは理性を持った上で他者とコミュニケーションをしなければならない。なのに女は共感だけで動こうとする節がある〗
「確かに、女性は共感で動くよな。そして共感=正しいとまで思ってる人だっているだろう」
チンギスハンは明るい笑顔で俺に頷く。
……こいつに頷かれても、嬉しくねえ!
〖ロードロード、そうだろ?〗
「うん。その通りだ」
チンギスハンは自信ありげに言う。
〖なら簡単だろ。女とは、力で支配するのが望ましい相手であり……つまり強○という性暴力はフェミニズムに比べたら正義にさえ、値すると〗
そんな考え、嫌だなぁ。
フェミニズムも元々はとても良い思想なんだけど、過激なことを言う奴らのせいでどんどんイメージが悪くなってるんだよね。
チンギスハンの言ってるフェミニズムって、税金を流して貰う為に造った市民団体の言う様なフェミニズムなんだろうな。
男性と同じだけ働いたら、同じだけ給付するって言うのが本来のフェミニズムなのでは無いだろうか?
過剰な女性優遇はフェミニズムの本来の趣旨に反してるはずだ。
……だが本来のフェミニズムが廃れ、女性優遇社会が来そうな国々をチンギスハンは皮肉ってるんだろう。
そして、ナウでヤングなフェミニズムは「今までの反省」とか言って女性優遇を造りがちになりそうだ。
俺は人間辞めて道になったから無関係だけど……この男の言うようなフェミニズムの到来はいくつかの国では間近なのだ。
つまり、間違ってる認識と言いきれえない。
〖結果論だが、朕は最近……フェミニズムの影響で衰退する国々を見て自分の人生をちょっと誇りに思うようになった。朕を悪く言う癖に、女性を平等に扱った結果どうなった? 社会は衰退する一方では無いか、とな〗
頷き難い意見だ。
この男にとっては真実なんだろうけど。
〖男系社会を築くことこそ、大切なのだよ〗
「でもさ、男系社会を造ることと強○することって分けて考えられるよね?」
〖え……〗
チンギスハンは間抜けな顔をする。
「儒教圏は父親を大黒柱とする男系社会だった。それって強○で成り立ってるわけじゃないよね?」
〖い、言われてみれば確かに〗
「だろ?」
チンギスハンは悲しげに俯く。
この男……レスバトルそこまで強くないな。
勢いだけで話してやがる。
〖そっか。強○はしなくても良いんだ。でも……朕の造ったがモンゴル帝国がナチス級かそれ以下のワースト国家って言われたらやだなあ。下には下がいるって言いたいよ。正直、ナチスには感謝してる。あいつらのお陰で朕以下の命がいるって胸張って言えるようになったからな。ユダヤ人がナチスこそ最悪って言ってくれると四千万人殺した朕の行いがマシに思えてくるんだ〗
「すげえ数だな……四千万人殺しって」
〖殺せば殺す程、地球の空気が美味しくなっていったよ。二酸化炭素排出量が減ったんだろうな〗
事実、それ観測結果で出てるんだよなぁ。
やっぱ怖い男だ。
〖朕、もっと再評価されたい。世界一のクソ野郎なんて言われたくない。朕の強○国家より、これから欧米がフェミニズムで堕落した未来のが罵倒されて欲しいって思う。勢いだけで暴力振るってきたけど、改めて自分のやったことが悪く言われると辛いから〗
チンギスハンは涙目だった。
こいつ、微妙に繊細で壊れやすい心してるよな。
なら最初から他人にあんなに迷惑かけるなよ。
せめて、強○も百人以下にしとけよ、そもそもするなってのが難しい時代だろうからな。
……日本も織田信長や秀吉を除けば、あらゆる戦国武将も現地収奪が普通だった。
欧米でさえ、その手の問題が進んだのはナポレオンの時代。
……悲しいが、弱者が『公的に』虐げられるのは普通だった時代があるんだよな。
そして、この男の夢見る社会は来てもおかしくない。
残念ながら、な。
「怖いのは実は、お前の意見がいつか正しくなる日が来る可能性があることだ」
〖は?〗
チンギスハンは心底意外だったのか、口をぽかんと開けた。
「俺が歴史を見てて、そうなってもおかしくないだけの余地がある」
〖……ほ、本当か!?〗
俺は頷く。
「そういう危険性が、俺の生きた時代にはあった。お前が見直される可能性がある」
〖それなら嬉しいな。男が皆、朕を尊敬して……女に性暴力を振るう社会がいつか来るのか〗
「可能性、だけだけどな。それに男全員がそうはならねえよ」
〖……なぜそんな社会になるというんだ?〗
「女性が保護されてるのを当たり前だとするだけじゃなく、特権階級を目指したフェミニスト達が出現するとする。それなら……後はひっくり返るだけだろ。過激なことをすれば恨みを買う。やり過ぎていくだろう社会情勢がいつまでも持つわけないだろ」
チンギスハンは目をくわっと見開いた。
どうやら理解したらしい。
〖な、成る程〗
「……そういうことだ」
〖……ロードロードは朕の数段先の未来を見てるようだな。そして、朕の心がゲスなのに……誰よりも紳士的に答えてくれる〗
「客観的に答えてるだけだぜ」
チンギスハンは首を横に振った。
そして悲しげな顔をする。
〖それがありがたい。朕は、嫌われてばっかだから。……誠実には誠実で答えよう〗
「?」
誠実には誠実に?
〖そんなことを考えても現実を上手に生きれぬ。それにそんなのが分かってしまったら……支障の方が大きいだろう。他者と同じ空気を読むことができても、同調に支障をきたす〗
「そうなんだよ。そんな未来がいつか来ると予感しても……女にモテるわけじゃねえ」
もし『面白い!』とか『続きが気になる!』とか『道の活躍をもっと見て見たい!』と思ってくれたなら、ブクマや★★★★★評価をしてくれると幸いです。
★一つでも五つでも、感じたままに評価してくれて大丈夫です。
下にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところに★があります。
何卒、よろしくお願いします。




