1話 目覚め
2004年 6月 大阪 とある部屋 朝
外はしとしと雨が降っている。
梅雨入りまもない日、必要最低限の家具しか置かれてないどこか生活感が薄い1DKの部屋で1人の男が目を覚ます。
「どこだここは…どうなっている、まさか連れ拐われたか‥‥」
男はいつもの見慣れた天井ではないことにすぐ気付く。勢いよく上半身を起こし、視線を左右へ走らせる。だが、どこを見ても覚えがない。
「夢か‥‥確かに昨日は酒をしこたま飲んで寝てしまったが、夢にしては現実味がある‥‥」
次に天井の電球に目がいき不信感を抱く。
「この天井にぶら下がってる変な物はなんだ」
「見たこともない‥‥」
男はそれを奇妙に思ったが、どちらかといえば今まで見たこともない物に対する興味の方が勝っていた。
男は他にも自分以外いるんじゃないか
「おい、誰かいないのか‥‥いたら返事をしろ」
「いったいどうなってる」
男の声が静かな部屋に響き渡る。
だか返事はなかった...
「どうゆう事だ…何か起こったか‥‥」
回りを見渡すと壁の上部に白い箱、部屋の隅には黒くて細長い物、台所には大きな白い箱、枕元には黒く細い板が‥‥‥自分が知らない物ばかりであった
男はスッと立ち上がり辺りを見渡す。
その時、男の頭に電気が走った様な感覚が起こる。
すると頭に不意に情報が思い浮かぶ。
近藤大河
26歳。1人暮らし、水仙組という組織の下っ端に席を置いている。両親はすでに亡くなっており里親に引き取られて育った。
本を読むのが昔から好きな読書家。
「なんだこれは‥‥コンドウタイガ…水仙組所属‥‥
一体誰なんだ…」
そしてそれ以上の驚きにあう。
男は手、足、身体を触る…
「この身体はなんだ…」
自分の手足、身体なのに全く身体的特徴が自分の物でないのに気付く。
自分の身体もそうだが
回りにある物は今まで見たこともない物ばかりで溢れていた。だが、何故か使い方、どうすればいいか等は見て手に取ると頭で感覚的に覚えていた。
男は鏡を探した。家の中でもどこに何があるかは何故か把握していた。迷わず洗面所に向かう。
鏡を見た瞬間男はなんともいえない顔になる。
「誰だ‥‥誰なんだ‥‥オレはこんな顔じゃない‥‥こんな顔見たこともない」
1人洗面所の前で立ち尽くす。
自分の記憶に全くない顔、知り合いや友人にもない顔が自分の顔になっている。
見知らぬ場所、見知らぬ身体、まず今自分に何が起こってるか分からないこの状況下、普通ならパニックになりおかしくなる所だが、
この男は居間に戻り座ってすっと目を閉じて考え出した。
「この摩訶不思議な現象はどう説明をつければよいのだ…呪術の類いか、はたまた何か原因があるのか」
少しの間空白の時間が流れる。
「考えても埒があかない、今一度回りを見渡すとするか…」
ある程度自分で落ち着かせた時
男の携帯から聞いたことの無い音が鳴り響いた。
慌ててスマホに触った瞬間、また理解してすぐ対応できた。
「大河、いつまで寝てるねん。若頭が呼んでるわ
今すぐ用意して事務所へ来い。」
「‥‥若頭?」
「はぁ、寝ぼけてんのかぁ?お前。いいから早く来い、いいなぁ」
要件を伝えるとその電話は切れた。
その後、男の頭の中で複数の言葉が思いだされる。
水仙組、若頭、事務所、その言葉が連想された時新たな言葉も連想された
「極道…」
まだ外では変わらず雨が降っていた。




