第1話 濡れたパンツ
2023年2月4日――人類はその数を半分以下に減らした。
後に“断絶”と呼ばれるようになった大災害の元凶はJammedParanormalExistence、頭文字からJPEとされ、超常的な能力を持つ存在だった。
世界には元よりJPEが自然発生的に生まれてきた。見た者の記憶を三日消失させるヒマワリや、踏むと必ず転ぶ足跡を残すイノシシなどの他、周囲の人間が迷子になる洗濯機といった生物以外にも広がりはあった。
過剰な混乱を避けるため秘密裏に処理や管理を行う団体は世界中に設けられていたが、自然発生する以上は後手に回ってしまう。原因の解明には至らず、突如生まれた“何か”としか称されないJPEにより終末が訪れた。
“何か”は世界中のJPEを能動的にし、さらに過剰な能力に目覚めさせた。
中でも甚大な被害を及ぼしたのが“位相猫”。他の猫と同調、共鳴する能力に加えて視界に捉えた物体の位相をずらす能力を得た。
全ての猫が影響を受けた結果、世界が一変する。物体単位でずれた位相の行き先は地球の裏にまで届いた。家々が重なり合い人々が押しつぶされ、日本の街中では上半身だけになった自由の女神像が現れた。
地面が消えて空からコンクリートを含んだ土砂の雨が降る。大穴には逆さまになった東京タワーが入り込み、海が割れた。二次的に起こる自然災害も相まって多くの人類は絶望を知る前に灯火を消す。
混乱は長く続いたものの、“何か”によって目覚めさせられた大半のJPEは自壊した。過剰な能力には入れ物が耐えられなかったのだ。
“位相猫”も例外ではなく同調した個体も巻き込まれた。そして、表の世界から猫が姿を消す。ついでに男へのみ感染する致死性の高いウィルスが蔓延、男女比が1:20になった。
◇
どうも、武達役馬です。天国の父さん母さん、俺は元気に高校一年の健全な男子生徒をやってます。
現在は終歴72年、断絶を経て少しは復興も進んでるけど。誰が言いだしたか、希望もへったくれもない年号表記がすっかり定着するぐらいには退廃的な精神が広まっていた。
そんな世界でも腹は減るしウンコが出る。教室には自分一人。次の授業が始まる前にすっきりしようと思ったのに、戦闘訓練を終えた女子たちが制汗剤の匂いを振り撒きながら教室に戻って来た。
ぞろぞろと続くため席を立つタイミングを失う。皆は好きな制服を自由に着ているが、スカートの短さは目に毒だった。
もう一コマなら耐えられるかと覚悟にチャイムの音を聞く。しかし、便意は一気に最高潮へ達し立ち上がる。
「おーい、どこ行くんだよ武達」
「いや、ちょっと……」
「男の子の日か?」
慣れるには独特なからかわれ方で、ハハハと笑いを返す。前方のドアに行くと、ちょうどやってきた担任の教師にぶつかりかける。
「あ、先生トイレ……」
「何だお前、先生を便器扱いとは頼もしい性癖だな。好きに使え」
真上先生は灰色の髪を撫でて尻をこちらに突き出す。タイトスカートを穿いており、ボリュームある形が強調された。
「せんせーい、それセクハラなんですけど」
「いけないんだー」
「私の魅力に罪はない。なぁ、武達?」
女子連中の言葉に金色の瞳を向けられる。柔和な笑顔にもかかわらず身がすくみそうになる鋭さだ。再びハハハ笑いで逃げるしかなかった。
「ゆっくり気張れよ。他は全員揃って……」
「斑柄さんがいませーん」
「訓練後はいつも遅れるな。理由でもあるのか?」
「いつもブチギレてるから怖くて聞けないよね」
「欲求不満なのは分かる」
「武達ちゃんが襲われないか心配じゃん」
教室内での会話を後ろに廊下を急ぐ。男子一人と女子二十人が授業を受けるだけの狭い校舎なため、トイレはすぐだ。
同じ構造の建物は小さな山を真ん中に点々と存在する。そこにも男女比同じクラスが作られていた。
少数の襲撃なら十分に対応でき、同数程度の場合は守りを固めれば応援が間に合う。大規模に至っては、一つのクラスが犠牲になって逃げる時間を稼ぐらしい。まぁ襲撃が起こるなんて考えられないが。何事も備えという訳だ。
トイレに着いて男子用のドアに手をかけるが鍵は閉まっている。俺が使えれば足りるので個室なんだが。どこかに引っかかってるのかとガチャガチャ繰り返したら、中から慌てたような物音が聞こえた。
そして、ドアが開く。出てきたのは黒いセーラー服に赤いリボン姿の斑柄模嘉だった。
「えっと……」
まさかの人物に戸惑う。長い黒髪に赤い瞳、左目元のほくろは色気に溢れている。ただ、いかんせん険しい表情がデフォルトで気圧された。眉をしかめ睨みつける様子に、ブチギレだ欲求不満だと陰口を叩かれるのも納得だ。
「誰にも言わないでくださいね」
冷たい口調で短めのスカートを払い去っていく。肉付きが良い生足とローファーの組み合わせに見惚れるも、便意に促されトイレに入った。
ウォシュレット完備の便座に腰かけ落ち着く。広い個室にも男子の優遇振りが現れていた。
「ふぅ……」
ひと通り済ませて足元に何か落ちているのに気づき拾うと、女物のパンツだった。しかも割と濡れてるし。でもこの感じはおしっこというより別の?
断絶で蔓延したウィルスのせいで当時、二十代以上の男は全滅した。その影響が残るのか、はたまた異なる要因か。男に限って平均寿命は三十代で女の数が遥かに多い。
見事に貞操観念も逆転して、男が肌を晒すのはふしだらなんだとか。そんな世の中で男子トイレに女子が入り、濡れたパンツの落とし物ってことは……。
あまり深く考えるはやめるか。とりあえず、折りたたんでポケットに仕舞う。斑柄本人の使用済みかは聞いてみなければ分からなかった。
『X』と『pixiv』もやってます。
FANZAサークル名:deep78pool
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【タイトル】
『男女比1:20の終末貞操逆転世界で女の子好きな私が〇〇〇される話』




