一日。
話しがあると、言われて呼び出された。
校舎の裏、紅葉が頭の上で、ゆらゆら、さらさら。涼しい音を立てる。
暖かい日差しが、紅葉の隙間から私をてらしたり、照らさなかったり。
「ふぅぅ。」
気温は低く、風は涼しく。
太陽の光だけが温もりをもたらして、でもその光はよく隠れたり顔を出したりして。
結構、肌寒い。
いつ来るのだろう。
話があるのに遅刻するのはよくないのではないか。
まぁ、こんな日、だるけたくなるのはわかる。
私も遅刻したし。
15分くらい遅刻したのに、まだ相手が来てなくて助かった。天気がいいから、陽だまりで本読むにちょうどいい天気なのだ。
紙が白くて目がちょっとくらくらするようになるけど、涼しくて、暖かくて、するりとうたた寝しちゃうから好き。
本でも読みながら待つか。
そう思い、適当に転がるちょっと大きめの石に腰掛ける。
ぽかぽかに温められた石からほのかにお尻が温められて、気持ちいい。
「ぁー…」
だるけたくなる日だ、とても。
本を読むっていう考えはお尻がぽかぽかになるのと同時に消え、ただ呆然と。
前だけ眺める。
校舎の裏だから、人の姿はなく。
あるのは私と、紅葉と、石くらいだった。
その空間はとても心地よい雰囲気で包まれていて、これからもよく、遊びに来よう。
そう決めて、うとうと。
少しだけ寝てみた。
そよ風が頭を撫でる感じがとても、気持ちよかった。
「……ぁ。こんにはー…遅かったね。」
うとうと、すやすや。
そうしてたら、やってきた。
「いい天気だよねー?暇だったから、ちょっとだけ寝ようかなって思って。」
時計を見ると時間は30分も遅れていた。
「それはさておいて、どうしたの?相談?それとも恋の告白でもするの?」
今日は予定もあるから、この子には悪いけど、早めに終わらせなきゃ。
「ぉん?」
石から立ち上がり、面と向かって立つ。すると、ふんわり。香水の香りがする。
私がたまにつけるのと同じ香り。
「これ、私のと同じやつなの?へー、不思議。私達、同じ匂いしてたんだ。」
同じ香水。同じ香り。
「なんか家族みたい。私の家、みんなこれ使うの。お母さんもお父さんも、お姉ちゃんも。」
ただそれだけでなんだか、親密感が湧いてきた。
「普段からつけてた?気づいてなかったのかな私。あ、ごめんね。こういう話じゃなかったね。君から話したい事とかあるんでしょう?」
もしいつか、私に旦那が出来たら、その人もこんな風に、私と同じ匂いがするのだろうか。
ふと思って、多分、違うと思った。
香水自体あまり好きじゃないし。柔軟剤の匂いの方がもっと好き。
なんて事を考えている時、言葉が降ってきた。
「……ぅん?」
ゆっくり、はっきり。ちょっとおどおどしてて、熱を込めて、後ろめたさもあって。
本気と嘘がいり混ざった、胡散臭い告白。
「好きなの?私が。」
改めて聞き返してみても、聞き間違いではないらしく。肯定されるばかり。
あまり接点のない人に好かれるのはよくある事だが、告白はそんなに日常ではなくて。
躊躇う気持ちもありつつ、嬉しくもなる。
「私って、君にとってすごく魅力的に見えたんだ。ふふ、悪くない気分。」
胸の奥で満足感が煙のように広がる。でもそれは、恋心ではなくて。
「彼女ー?」
好きと、付き合っては違くて。
好きだと言われたのは気持ちよかったものの、彼女になってくれと言われると、少々抵抗はある。
「えー」
知らない人と付き合うなんて、おかしい。
「友達からやってみる?」
だから、取り敢えず。
仲を深めるのがよいのでは。と、思った。




