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『十二星天の裏支配者 〜追放された雑用係、実は星座を喰らう最後の蛇でした〜』  作者: パーカー
第四章『観測と選択』

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第31話 『観測疲労』

“死亡確率 67%”

数字は動いていない。

だが空気は、明らかに変わっていた。

広場の人々は、先ほどより俺を見ている。

恐怖ではない。

期待でもない。

“関与”。

それが一番近い。

水瓶王は塔の上から、静かに降りてきた。

足音はほとんどしない。

「分散干渉は想定内だ」

淡々と告げる。

「だが持続は難しい」

俺は肩で息をしている。

脳の奥が熱い。

未来を増やす行為は、思っていた以上に負荷が大きい。

リゼがそっと支える。

「無理してる」

「観測疲労よ」

水瓶王が頷く。

「未来分岐を自力で捻じ曲げる行為は、精神を摩耗させる」

「君はまだ六つ目に触れていない」

「つまり補助なしだ」

図星だ。

六つ目――水瓶。

それに触れれば、観測に耐える器が増える。

だがそれは条件違反。

今回は触れない。

俺はゆっくりと息を整える。

「王」

「何だ」

「観測は完璧か?」

王は即答しない。

その沈黙が答えに近い。

「観測には誤差がある」

やがて、そう言った。

「だが誤差は管理可能だ」

俺は地面に座る。

無理に立たない。

「じゃあ、疲労は?」

王の目が細まる。

「君のことか?」

「違う」

俺は空を見上げる。

「観測する側の疲労だ」

広場が静まる。

セイルが息を呑む。

水瓶王の指が、水晶をわずかに握り直す。

「未来を常時演算し続ける」

「国規模で」

「それ、疲れないのか?」

沈黙。

塔の水晶がかすかに明滅する。

リゼが小さく呟く。

「観測負荷……」

俺は続ける。

「俺一人で67%まで削った」

「なら観測側も削れるはずだ」

水瓶王は俺を見つめる。

怒りではない。

評価でもない。

測定。

「君は何を狙っている」

「均衡」

即答する。

リゼがわずかに驚く。

「観測だけが一方的に続けば、いずれ破綻する」

「固定し続ければ、分岐は細る」

「細れば、管理者の干渉率が上がる」

水瓶王の瞳が、初めて明確に揺れた。

管理者。

その単語は、この国にとっても重い。

「観測しすぎれば、世界は硬直する」

俺はゆっくり立ち上がる。

「俺を殺しても、問題は残る」

「観測疲労は、溜まる」

時計塔の針が、一瞬だけ不規則に揺れた。

“死亡確率 66%”

わずかだが、下がる。

王は空を見上げる。

透明な亀裂。

管理者の気配。

観測と干渉は、紙一重だ。

「……興味深い」

王が呟く。

「君は自分の生存だけでなく、我々の安定まで計算に入れている」

「そりゃそうだ」

俺は笑う。

「俺が七つに届いた時、世界が壊れたら意味がない」

沈黙。

広場に、静かな風が吹く。

水瓶王が告げる。

「なら次は、観測疲労の証明だ」

「どうやって?」

リゼが問う。

王は水晶を掲げる。

「三時間」

「その間、私は固定を維持しない」

広場がざわつく。

「完全観測のみで、君の死亡率を変動させろ」

固定なし。

純粋観測。

それは、王側にも負荷がかかる。

俺は息を吐く。

「いいだろ」

水瓶王が付け加える。

「だが条件がある」

「何だ」

「君は、六つ目に触れない」

当然だ。

だが。

「もし三時間以内に五割へ届かなければ」

王の瞳が冷たく光る。

「直接固定を最大出力で再開する」

静寂。

賭けだ。

俺は頷く。

「受ける」

“死亡確率 66%”

夜が深まる。

観測疲労戦、開始。

第31話でした。

今回は

・観測側の弱点提示

・主人公が世界全体を視野に入れ始める

・観測疲労という新概念

・三時間のリミット戦開幕

水瓶編はバトルではなく、

“構造”を壊しにいく章です。

ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。

次話は、

三時間の中で何を選ぶか。

未来を増やすか、削られるか。

静かに、しかし確実に進めます。

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