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失われた記憶は魔法で取り戻せますか?~運命に導かれた少女たちの冒険録~  作者: 彩空蛍


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眠らない街

「こっち」


 クルルが地図を見ながら二人を連れていく。ドラゴンに襲われたハナニラたち一行は深い森の中に着地し、徒歩移動で中央諸国の入口「央の門」を目指していた。


「ドラゴンの件、もう中央諸国の人たちは知ってるのかなぁ」


 ハナニラはフレンに尋ねる。


「多分ね~。そこら辺の魔獣が暴れてるならまだしもドラゴンが暴れたっていうのは大スクープだから」


 話しているうちに森をぬけ、央の門への道にたどり着いた。


「あっちが中央諸国だね! いろいろあったけどたのしみ~」


「フレンはどんな時も明るいなぁ」


 軽い足取りで先導するフレンをハナニラとクルルは追いかけた。しばらくすると、巨大な門がハナニラたちの目の前に現れた。


「すごい…これが、央の門」


「そう、魔法界の中心だからね。権威を示す意味でも立派に作ってるんだって~」


 ハナニラは巨大な門をまじまじと見た。数刻前のドラゴンでさえすんなりとくぐれそうなほど大きい門は、様々な模様で飾り付けられている。下の方に目を向けると入口の所に大きな人だかりができている。


「あれ…なに?」


 ハナニラは人だかりを指さしながら尋ねる。


「検問…のように見える。ドラゴンの件があったから、怪しい奴を入れないようにしてるのかも」


「私たち…大丈夫だよね?」


 ハナニラはなぜか不安になってフレンとクルルに確かめる。


「大丈夫、こういうのは自信を持つことが大事なんだよ。さ! 行こ~」


 フレンが先頭に立って一行は検問待ちの列の一番後ろに並んだ。


「はい、荷物検査異常なし、通ってよ…あれ、パスポートは?」


「へ?」


 パスポート? 聞いたことのない単語がハナニラを襲い、ハナニラは急に冷水を体に注がれたかのような感覚を覚えた。


「パスポートって何? 今までの国じゃ必要なかったよ!」


 フレンが言い返す。


「数刻前、本来民間では扱えない生き物が事件を起こしてね。それで緊急で入国者に対してどこに属する奴なのかを示すパスポートの提示を義務付けることになったんだ」


「おい! しゃべりすぎだぞ! 口を慎め!」


 検問官の上司のような人がしかりつける。ハナニラは下を向いていろいろ考えを巡らせていた。


(絶対にあのドラゴンのこと言ってる…それにパスポートって? そんなの見たこともないよ!)


 ハナニラは頭を抱え、どうにか状況を打開できないか考えた。しかし浮かんでくる案はすべてそのままはじけて消えてしまう。


「どこの奴なのか証明できないのなら…」


 奥で座っていた上司のような人がこちらに向かってくる。これからどうしよう。ハナニラが考えていると。


「わかった!」


 クルルが大きな声を上げる。


「なんだ?」


「どこに属するのかが分かればいいんでしょ? ならパスポートなんて必要ない魔紋判定石(さだめいし)を出して」


 クルルは検問官にそう要求した。


「何をいって」


「いいからはやく」


 検査官は戸惑いながらも何かを置いた。ハナニラが目を凝らしてよく見てみると色は群青色で淡く輝いている。ちょうど広げた手より一回り大きいくらいの大きさだ。クルルは目を瞑り、ちょっとした深呼吸をした後、右手をその石の上に置いた。


「なっ! お前!」


 クルルの目の前の検査官が声を荒げ、周りの検査官も怒鳴り始めた。ハナニラは周りの検査官に邪魔されて何が起こっているのかよくわからない。


「目的は示された。そうでしょ」


 クルルはそんな検査官を意にも留めず淡々としゃべる。


「だから入れるとは限らない! まさかあのドラゴンは貴様が!」


 そういったとき、検査官は「あっ」という顔で口を手で押さえた。


「ドラゴン? まさかその騒ぎってドラゴンに関することなの? 私は何も知らない」


 クルルはそれを見逃さなかった。


「嘘つけ! お前らが!」


「いいだろう! 入国を許可する」


 例の上司がクルルに命令する。クルルは少し頭を下げ、央の門を通って行った。


「隊長! し、しかし!」


 検査官が抗議しようとするが上司は片手で制止し、耳元で何かをささやいた。


「…わかりました、次!」


 ハナニラの番だ、どうしよう、ハナニラはびくびくしながら検査官の前へといった。


「お前はさっきの奴の仲間か?」


 ハナニラの荷物を調べている途中、検査官はハナニラに質問をした。


「はい、そうです」


 ハナニラは正直に答えた。


「この石の上に手を置け」


 検査官はハナニラの前にさっきと同じ石を出して言った。ハナニラが手を置くと紫色がぼんやりと光った。


「何!? しかしお前の頭は…?」


 検査官はハナニラの頭を注意深く見た後


「通ってよし」


 そう言ってハナニラを央の門へと通した。


「ここからどれぐらい歩けば街につくの?」


 ハナニラは立派で大きい門を見上げながらクルルとフレンに問いかけた。


「実はね、もう目の前にあるんだよ! 外側からは見えないようになってるんだって!」


「えっ!?」


 そう言われてハナニラは目を凝らして門の奥を見つめたが、周りの山々の風景が続いているだけだった。


「本当に?」


 ハナニラは不思議な顔をしながら疑っていた。


「よし! 中央諸国へレッツゴー!!」


 フレンの陽気な掛け声とともに、一行は央の門をくぐりぬけた。


「ここは?」


「|眠らない街、ディモール、中央諸国の一番賑やかな街だよ!」


 すごい。ハナニラが一番最初に抱いた感想がそれだった。目が何個あっても足りない。街中の建物という建物から様々な色の光が放たれ、光の雨を作り出している。夜なのにたくさんの人が歩いていて、中にはへんてこりんな仮面をつけている人もいる。空には光り輝く折り紙の小鳥が流星群のように飛び、花火も打ちあがっている。


「やぁ、そこの御一行、ちょっと待ちなよ」


 誰かがハナニラたちのことを呼び止めた。


「私たちのこと?」


 フレンが呼びかけに応じた。その男は奇妙な格好をしていた。妙な飾りのついた魔法使いのローブを身に着け、頭にちっちゃなシルクハットをかぶっている。


「そうだ、あんたたち、ここに住んでる人じゃないでしょ?」


 その男はゆっくりとこちらへとやってきた。


「うん、まあ、なんで?」


「それぐらい見ればわかる。この街に住んでいる奴にあんたらみたいな感情を持っているのはほとんどいない」


「どういうこと?」


 フレンが片方の眉を吊り上げて質問した。


「あんたら、何か「不安」とか「恐れ」の感情を持ってないか? つまり、何か後ろめたい隠し事してるんじゃないかってことだ」


 ドラゴンのことだ、とハナニラは思った。あの時の上司っぽい検査官の人の行動がいまだに気になっていた。もしかしたら後をつけられてるかも…

 ハナニラはばっと後ろを向いたが誰かがつけている様子はなかった。


「そりゃ、誰だって自分の中に人には言えないような秘密は抱えてるもんでしょ」


 フレンが答える。


「ああ、そうだな、生き物ってのはそーゆーもんだ。でもな、この街では、それを悟られちゃあだめなんだ」


「悟られたらダメ?」


 フレンが聞き返す。


「ああ、悟られたらダメ、つまり『ポーカーフェイス』ってことさ、仮面をかぶって、自分の秘密を表に出てこないようにする。どんなときもね。自分の本心を隠し通せない奴は死んだも同然だ。俺も何度か死にかけた」


 男は少し自慢げに答えた。


「それ、自慢げにいうことかなぁ…でも、仮面をかぶるったって、どうやって?」


「もちろん今のは比喩だが、本当に仮面をかぶってもいいぜ、あそこの奴みたいに」


 男は風変わりな仮面をつけて歩いている人を指さした。


「でもたいていの奴は見えない仮面をつけて、自分じゃない誰かを演じてる。『秘密なんてなくてこのディモールを心から楽しんでる誰か』を」


「あなたも演じてるの?」


 クルルが静かに尋ねた。


「ああ、もちろん、この街のおすすめスポットを紹介しようか? それともおすすめの宿にするか?」


 男は笑顔で質問に答えた。


「そういえばあんたの名前聞いてなかったね、私はフレン、こっちはクルルで、あの子がハナニラ」


「俺はフールゲイツ。それで、宿をお探しかい? よければ案内しようか?」


 簡単な自己紹介ののち、フールゲイツはもう一度一行に質問してきた。


「うーんじゃあ、宿を案内してよ」


 フレンは笑顔で答えた。

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