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秘宝の乙女は海賊に囚われる  作者: 柘榴アリス
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シリウスの一面

「う…、」

イリスはうっすらと目を開けた。腕が痛い。見れば、両腕が鎖に繋がれ、壁に固定されていた。

「あれ?もう目が覚めたんだ?」

「…アロイス!」

イリスは目の前にいるアロイスを見上げた。アロイスは笑っていた。けれど、今までの無邪気な笑みじゃない。歪んだ暗い愉悦を含んだ笑いだった。

「アロイス…。ど、どうしてこんな…?」

「どうして…?アハハッ!本当に分からないの?それとも…、分からない振りをしているだけかな?」

「分からないからこうして、聞いているんです!」

スッとアロイスは表情を消した。

「目障りなんだよ。君は。」

「え…。」

イリスは目を見開いた。

「まさか、あの堅物で有名なシリウスを篭絡するとは思わなかったよ。でも…、君の目的はシリウスじゃない。船長でしょう?」

「何、言って…?」

「まだ惚けているの?それも振りなんでしょう?」

「だから、一体何の事…、ッ!」

イリスは突然、ヒュッと音を立てて何かが壁に突き刺さるのを感じた。恐る恐る横を見ればそこにはナイフが突き刺さっていた。イリスはヒッと息を呑んだ。アロイスはイリスに近づくと、ナイフを引き抜いた。

「あーあ…。本当に面倒臭いなあ。姉さんは色んな男に狙われるからなあ。僕は気が気じゃないよ。」

姉さん?もしかして、アロイスは船長の弟なのだろうか?

「だから…、いつも僕がこうして姉さんに近づくゴミムシを排除しないといけないんだよ。」

イリスはぞっとした。ナイフを手に持ったアロイスの表情は狂気に満ちていた。

「あ、アロイス!話を聞いて下さい!私は船長の事は決して…!」

「お前の意見はどうでもいいんだよ!」

イリスはびくりと口を噤んだ。アロイスはナイフをくるくると手の中で回しながら言った。

「仮に君にその気がなくても…、タイプ的に君は姉さんの好みなんだよ。」

イリスは目を見開いた。

「まあ、でも…。シリウスが手元に置きたくなる気持ちは分かる気がするよ。君って…、甚振り甲斐がありそうだもんね。特にその恐怖に歪んだ表情はぞくぞくする。」

アロイスに顎を掴まれる。イリスは痛みに顔を歪めた。

「ああ…。いいね。その表情…。最高にぞくぞくする。これで君の顔を傷つけたら…、どんな声で鳴いてくれるのかなあ。」

アロイスはナイフをイリスの目の前で掲げて見せた。イリスはヒッと息を呑んで涙を浮かべた。アロイスがイリスの頬にナイフの刃を近付ける。

「嫌ああああ!」

イリスは悲鳴を上げた。その直後…、

「何してる。」

低い美声が聞こえた。こちらを氷のような眼差しで見下ろす男…。アロイスは動きを止めた。

「それは俺専属の世話係だと言った筈だが?」

「ちょっと忠告しただけだよ。」

アロイスはナイフを懐に終い、イリスから離れた。イリスは涙目でシリウスを見上げた。シリウスはイリスの手錠を外し、

「勝手な真似はするな。今度、こいつに手を出したらもう薬は処方しないぞ。」

「っ…、」

アロイスは悔しそうに顔を歪ませた。シリウスはイリスに視線を戻し、その場から連れ出した。アロイスは追ってこなかった。

「入れ。」

シリウスに命令され、イリスは部屋に入った。イリスはガタガタと震えた。どうしよう。絶対に怒られる。次は手錠だけじゃすまないかもしれない。でも、その前に彼には言わなければいけない事があった。

「あ、あの…!ありがとうございます!」

イリスは立ち上がって頭を下げた。シリウスは手を止めてイリスを見た。

「助けてくれて…、後…、勝手に逃げ出したりしてごめんなさい…。」

「…お前にはいい薬になっただろう。他の奴らに頼った所で自分の首を絞めるのだという事に。」

シリウスは片付けながら言った。

「お前はあいつらの正体を知らない。それが命取りになる。あいつも船長も俺を含めた他の幹部も…、その本性は血に飢えた獣だ。」

「そんな…。」

さっきまでのイリスなら信じなかっただろう。けれど、アロイスのあの裏の顔を知ってしまったは否定はできなかった。

「あの…、船長とアロイスは姉弟なのですか?アロイスが船長を姉さんと呼んでいて…、」

「ああ。船長とアロイスは義理の姉弟だ。身に沁みて分かったと思うがアロイスは船長に心酔している。船長が自分以外の人間に興味を示すとそいつを排除しようとする。船長に近づく人間は自分が認めた奴以外は決して許そうとしないいかれた奴だ。」

「…。」

やっぱり、アロイスも海賊にふさわしい残虐な人なのだ。優しい人だと思ったのに…。イリスはギュッと手を握り締めた。怖かった…。また同じ目に遭ったりしたらどうしようとイリスは震えた。不意にシリウスはイリスの腕を掴んだ。イリスに嵌められた腕輪にそっと手で触れる。

「お前は俺の奴隷だ。これがある限り…、お前は俺から逃れられない。俺は自分の所有物を…、他人に渡したり、共有したりするのは好まない。だから、忘れるな。お前が俺に服従する限りはきちんと責任を持って庇護してやる。」

「シリウス様…。」

「危ない目に遭いたくないのなら…、俺から決して離れるな。いいな?」

イリスを所有物扱いする酷い言葉…。それなのに、何故だろう。イリスは最初程、彼を冷たく、非道な人間だとは思わなくなっていた。

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