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【嫉妬の章】魂を折るということ

 見えない。


 ガルド・ヴェルガの動きが。


 さっきまで確かにあった“前兆”が消えている。


 色が、読めない。


 サミエムが歯を食いしばる。


「……どうすんだよ、これ」


 動けばやられる。


 止まってもやられる。


 完全に主導権を握られている。


 ヘリオが静かに息を吐く。


「……変わったな」


「いや、元に戻っただけだ」


 灰崎が言う。


 二人の視線が向く。


 灰崎は、ガルドを見ていた。


「感情を“外に出していた”状態から、“内に収めた”」


 言葉にする。


「だから見えてた」


 そして今は違う。


「完成した」


 ヘリオが短く呟く。


 灰崎は頷く。


「無駄がない」


 サミエムが舌打ちする。


「じゃあどうすんだよ」


 その問いに、灰崎は即答しなかった。


 視線はガルドから外さない。


 色を見る。


 完全に消えたわけじゃない。


 ただ、深く沈んでいる。


(……なら)


 引きずり出すしかない。


「サミエム」


「なんだ」


「もっと上げろ」


「は?」


 意味が分からない。


 だが、灰崎は続ける。


「中途半端だから読めない」


「……」


「限界まで行けば、必ず“溢れる”」


 魂術は万能じゃない。


 感情の極限。


 それが前提。


 なら――


 さらにその先へ押し上げる。


 サミエムが笑う。


 呆れ半分、理解半分。


「無茶言うなあ……」


 だが。


 やるしかない。


「ヘリオ」


「分かっている」


 短い返答。


 すでに理解している。


 役割は一つ。


 “支えること”。


 ガルドが踏み込む。


 消える。


 だが――


「来るぞ」


 灰崎の声。


 サミエムが反応する。


 勘ではない。


 信じた。


 それだけ。


「風――炎――雷!!」


 今までで最大。


 収束しない。


 暴れさせる。


 制御を捨てる。


 爆発が周囲を飲み込む。


 ガルドが突っ込む。


 真正面から。


 叩き潰す。


 だが。


 その瞬間。


 わずかに。


 色が揺れた。


(……出た)


 灰崎が踏み込む。


 だが。


 まだ足りない。


 ガルドの動きは止まらない。


 サミエムが吹き飛ぶ。


 それでも笑う。


「まだだ!」


 立ち上がる。


 血を吐きながら。


 それでも踏み込む。


 恐怖がある。


 痛みがある。


 だが、それ以上に。


 “負けたくない”。


 その感情が、上回る。


「もう一回だ……!」


 魔力を叩き込む。


 無理やり。


 限界を越える。


 ヘリオが動く。


 背後に回る。


 支える。


 流れを整える。


 魔力の暴走を抑える。


「崩すな」


 短い言葉。


 それだけで、サミエムの動きが安定する。


 灰崎は見ている。


 色を。


 サミエムの内側。


 恐怖。


 焦り。


 悔しさ。


 それらが混ざり――


 上がっていく。


(……来る)


 ガルドが笑う。


 理解している。


 相手が上がっていることを。


 だから。


 さらに踏み込む。


 衝突。


 爆発。


 衝撃。


 サミエムが耐える。


 崩れない。


 踏み止まる。


 その瞬間。


 ガルドの感情が――


 跳ねた。


 歓喜が、再び溢れる。


「――そこだ」


 灰崎が動く。


 今度は見える。


 色が外に出た。


 未来が読める。


 踏み込む。


 一直線。


 拳を叩き込む。


 今までで最大。


 魂を乗せる。


 衝撃。


 ガルドの体が、大きく揺れる。


 初めて。


 明確に。


 “崩れた”。


 沈黙。


 そして――


 ガルドが笑った。


 心底、嬉しそうに。


「……いい」


 その声は、満足に近かった。


 膝が、わずかに沈む。


 だが、まだ終わらない。


 灰崎は構えた。


 分かっている。


 ここからが本当の勝負だと。

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