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GRID BREAKER:CHROME HEART MERCENARY  作者: ジェフ兄
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16/21

第16話:妹の独自行動

私、ユリ・タカセは今日、とても重要なことを確信した。




お姉ちゃんに、確実に「何か」が起きている。




シン・トーキョー第三学区・IRON WOLVES基地・午前7時




「おはよう、お姉ちゃん」




私がいつものように挨拶すると、クレハが振り返る。




「おはよう、ユリ。今日の予定は?」




その返答に、私は微かな違和感を覚えた。




「お姉ちゃん、最近話し方が変わったよね」




「変わった?」




「前はもっと『えーっと』とか『うーん』とか言ってたのに」




クレハが少し考え込む表情を見せる。




「今は即座に答えが返ってくる。まるで...」




私は最後まで言えずにいた。ま(・)る(・)で(・)機(・)械(・)み(・)た(・)い(・)とは、さすがに言えない。




「気のせいじゃない?」




クレハが軽く答えるが、その口調も以前と違う。感情の起伏が少なく、一定の調子で話している。




これは絶対に何かある




私は16歳だけど、姉の変化を見過ごすほど子供じゃない。最近のクレハの行動パターン、戦闘能力の急激な向上、そして昨夜聞いた襲撃事件の話...全てが繋がっている。




「今日は学校だから、気をつけて行ってくるね」




私は普通に答える。でも、心の中では既に計画を立て始めていた。




お姉ちゃんに何が起きているのか、必ず突き止める




◇




シン・トーキョー第三学区・企業立総合高等学校・午前10時




三週間夜の11日目の朝。校舎の巨大な透明ドームを通して見える空は、いつものように暗くて重い雲に覆われている。人工太陽システムが白い光を放ち、校庭の遺伝子組み換え芝生を青緑色に照らしている。




私たちの学校は、シン・トーキョーの大手企業が共同出資して建設された最新鋭の教育施設だ。何より重要なのは、ここには各企業の重役の子息・子女が通っていること。つまり、企業の内部情報に一番近い場所でもある。




「ユリちゃん、おはよー!」




隣の席のアイちゃんが挨拶してくれる。アイ・ハイペリオン、ハイペリオン社重役の娘。金髪に青いメッシュ、翡翠色の瞳は遺伝子治療の結果だ。




「おはよう、アイちゃん」




私は戦略的に微笑みかける。今日は彼女から情報を引き出さなければ。




「アイちゃん、お父さんお疲れ様みたいね」




「え?なんで?」




「この間、すごく忙しそうって言ってたでしょ?」




私は以前の会話を正確に覚えている。16歳の記憶力と観察力を侮らない方がいい。




「あー、そうそう!最近本当に大変みたい」




アイちゃんが声を小さくする。




「『重要案件』の会議が連日あるって。でも、詳しくは教えてくれないの」




重要案件




私の注意が集中する。




「どんな感じの会議?参加企業とか分かる?」




「えーっと...」




アイちゃんが考え込む。彼女の瞳の奥で小さなLEDが点滅した。視覚強化サイバーウェアが記憶検索しているのだ。




「オムニテック社とミカド社の名前はよく聞くかな。あと、『特殊技術』っていう言葉も」




特殊技術




私の推理が一歩前進した。お姉ちゃんの急激な能力向上と何か関係があるかもしれない。




「ねえ、アイちゃん。もしも普通じゃない技術を持った人がいたとしたら、企業はどうすると思う?」




「普通じゃない技術?」




アイちゃんが興味深そうに身を乗り出す。




「お父さんがよく言ってるけど、画期的な技術は『確保か排除』が基本だって」




確保か排除




背筋が寒くなった。まさか、お姉ちゃんが...




「でも、ユリちゃんなんでそんなこと聞くの?」




「あ、えーっと...小説を書いてるの。サイバーパンクもので」




私は咄嗟に嘘をついた。でも、16歳の想像力の範囲内として自然に聞こえるはず。




「わあ、すごい!読ませてよ!」




◇




昼休み・ハルカとの情報収集




屋上庭園で、政府官僚の娘であるハルカと弁当を食べながら、さらに情報を収集した。




「ハルカ、お母さんから最近何か変わった話聞いた?」




「変わった話?」




ハルカが箸を止める。彼女の頭に埋め込まれた小さなデータ端子が青く光った。記憶拡張システムが作動している。




「そういえば、『想定外の状況』への対処が必要だって言ってた」




想定外の状況




「どんな想定外?」




「詳しくは分からないけど、『慎重な調査』が必要だって」




私は冷静に情報を整理した。16歳だけど、分析能力は大人並みだ。




収集した情報:1. 複数企業が「重要案件」で連携

2. 「特殊技術」に関する動き

3. 政府も「想定外の状況」を認識

4. 「確保か排除」の方針




全部お姉ちゃんに関係してる可能性が高い




「ねえ、ハルカ。もしも家族が危険にさらされたら、どうする?」




「え?急にどうしたの?」




「いえ、ちょっと考えてただけ」




「うーん...きっと、できることは何でもするかな。家族だもん」




その言葉で、私の決意が固まった。




お姉ちゃんを守るためなら、私は何だってする




◇




午後2時・図書館での戦略的調査




学校の図書館で、私は組織的に情報収集を行った。一般的な企業資料を装いながら、実際には戦略的な分析を進める。




検索キーワード:- 「企業間協力案件」

- 「技術開発競争」

- 「政府企業連携」

- 「セキュリティ強化」




表向きは学習目的の基本的な情報検索だが、実際には現在起きている事態の背景を理解しようとしていた。




発見した情報:- 近年、企業の技術開発競争が激化

- 「革新的技術」を巡る企業間の情報戦

- 政府の「新技術に対する監視体制」強化

- 「特殊能力者」への注目度上昇




やっぱり、お姉ちゃんの能力が注目されてる




私は資料をプリントアウトして鞄にしまった。後でお姉ちゃんに見せて、一緒に対策を考えよう。




でも、その時、図書館の入り口で見慣れない大人の姿を目にした。




黒いスーツを着た男性が、明らかにこちらを監視している。




まさか...




私は16歳らしからぬ冷静さで状況を判断した。慌てるのは愚策。自然に振る舞いながら、相手の動きを観察する。




男性は私が気づいていることに気づいていないようだった。




この状況をどう活用するか




私は迅速に行動計画を立てた。




◇




午後4時30分・計算された行動




放課後、私は意図的に普段と違うルートで帰路についた。これは単なる逃避ではなく、尾行者の正体と目的を探るための戦略的行動だ。




予想通り、黒いスーツの男性が後をつけてくる。




でも私は16歳の女子高生として、自然に見える行動を取りながら、同時に状況を分析していた。




商店街に入ったところで、尾行者は一人から三人に増えた。




完全に包囲戦術を取ってる




普通の16歳なら恐怖でパニックになるかもしれない。でも私は違う。




お姉ちゃんを守るためには、私が強くならなければ




私は人工野菜の反射面を使って後方確認し、逃げルートを三つ想定し、緊急時の連絡手段を確保した。




そして、最も重要な判断を下した。




このまま逃げ回っても意味がない。相手の目的を知る必要がある




◇




午後5時・商店街での対峙




商店街の中央広場で、私は意図的に立ち止まった。




周囲には買い物客がいる。ここなら相手も無茶はできないはず。




「ユリ・タカセ」




黒いスーツの男性が私の名前を呼んだ。声は機械的で感情がない。




「あなたに話があります」




私は16歳らしい震え声を作りながら、実際には冷静に分析していた。




相手は私の身元を完全に把握している

でも、暴力的な手段は避けたがっている

つまり、何らかの制約がある




「お姉ちゃんがどうしたって言うの?」




私は震え声で尋ねた。でも、これは演技だった。




「それはここでは話せません。来てもらいます」




やはり拉致が目的




私は瞬時に判断を下した。




「嫌です!」




大きな声で宣言し、周囲の注意を引く。




「知らない人について行くのは危険だって、学校で習いました!」




買い物客たちが振り返る。男性たちが困惑した表情を見せた。




「お姉ちゃんに何をしたいの?どうして私たちを狙うの?」




私の声は商店街に響いた。これは恐怖による混乱ではなく、計算された行動だった。




「静かにしなさい」




男性が近づこうとした時、私は最後の切り札を使った。




「助けて!知らない人に連れて行かれそうです!」




商店街の警備システムが反応し、自動通報機能が作動した。




男性たちは撤退を選択した。




しかし、私は知っていた。

これで終わりじゃない




◇




午後6時・基地への帰還




基地に戻った私は、収集した全ての情報を整理した。




分析結果:1. 複数の企業がお姉ちゃんを監視

2. 政府も状況を把握している

3. 私も監視対象になった

4. 相手の目的は不明だが、拉致を辞さない




「お姉ちゃん、重要な話があるの」




クレハが帰宅すると、私は迎えた。




「今日、学校で色々調べてみたの。お姉ちゃんを狙ってる組織のこと」




クレハの表情が変わった。




「ユリ、危険な真似はしないで」




「でも、お姉ちゃんを守りたいの」




私は16歳らしからぬ真剣さで続けた。




「私も戦力になりたい。お姉ちゃんがいつも私を守ってくれたように、今度は私がお姉ちゃんを守る番」




「ユリ...」




「今日集めた情報があるの。企業の動き、政府の対応、そして...」




私は尾行されたことを簡潔に報告した。




「これからは、私たちも作戦を立てて行動しなきゃ」




クレハの目に、驚きと誇らしさが浮かんだ。




「いつの間に、そんなに大人になったの?」




「お姉ちゃんの妹だもん」




私は微笑みながら答えた。




「でも、お姉ちゃんの秘密も教えて。私にだって、知る権利があるでしょ?」




今度は、私たちが一緒に戦う番




企業都市の闇は深い。でも、私たちには絆がある。




そして私は、姉を守るためなら何でもする覚悟ができていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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