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銀河帝国皇帝アスカ様 零ーZEROー ~スペアボディと呼ばれた彼女が皇帝陛下と呼ばれるまで~  作者: MITT


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第十五話「憧憬」②

「……私もこんな補給ラインへの圧迫ゲリラ戦術程度じゃ、焼け石に水って思ってるさ。けど、こうも戦力差があると非対称戦に活路を見出すしか無い……まぁ、言ってみれば精一杯の抵抗ってところだよ」


「ああ、それも解るよ……。古来から大軍を止めるには、補給を断つってのが基本だ……それに、力あるものに対して屈するのではなく精一杯あがらって見せる。それだって当然の話しだろう……実際、我々もかつて、アマテラス体制に目一杯抵抗して……まぁ、結果は酷いものだったけどね」


「……そうか、ヤン少佐は……。何と言うか、すまないな……」


 実際、私達は大陸からの軍勢が日本海で盛大に消し飛んだって話を聞いても、どこか他人事って思ってたけど……。

 

 ヤン少佐達が圧倒的に強大な力に精一杯立ち向かおうとしてたと聞くと、なんとも申し訳ないような気分になってくる。


「ん? ああ、大陸連合のことなら気にしなくていいさ。君も私も当事者でもなんでもないんだから、別に謝るようなことじゃないだろう。でもまぁ、本音を言うといっそ戦争とか止めて、ほっといてくれないかって思ってるんだけどね。私達の理念上、地球と争う理由なんて本来何一つ無いはずなんだ。けど、私達がいくら言ってもヤクーツク元帥は艦隊を木星へ引き上げさせる様子もない。まぁ、実際は直ちに火星を攻略とか言ってるのを、カール・ミラー総帥がそれは待てとストップをかけていると言うのが実情ではあるんだ」


 なるほどねぇ。

 事実、人類統合体の艦隊は火星軌道付近まで進出して、いつでも火星は落とせる! 次は地球だ! とか吠えてるんだけど。


 何故か、火星本星には手を出そうとしない。

 実際、地球圏への侵攻ともなると、火星を前線基地化するのはそう悪い手じゃないし、木星側の視点で地球侵攻を考えると、火星域の制圧はむしろ絶対条件だと言える。


 まぁ、一応火星の衛星軌道には、大慌てで建造した「ヴィーナスの首飾り」と呼ばれる大口径レーザー砲撃衛星がいくつも展開されていて、それが抑止力として機能してるとは言われているんだが。


 そんなやっつけで作った固定砲台で、宇宙戦艦と戦えるかといえば、無理臭くね? ってのが、私の認識だった。

 

 そもそも、そんな物……大昔の銀河を舞台にしたSF大河アニメ同様に、隕石でもまとめて引っ張ってきてドッカンとぶつけるだけで、あっさり攻略できる。

 私でも、思い付くくらいなんだから、こんなの誰だって思い付くだろうさ。


 まぁ、そんなお粗末な防御態勢なのを知って、侵攻したくてウズウズしてる中、総帥命令で侵攻を止められている中、いい加減補給が細りだして、焦っていると言うことか……。


 そして、この総旗艦グランティアが火星に向かっているのも、総帥直々にヤクーツクの手綱を締めに向かっている……そう言う事かな?


「それが君等の本音だとすると、人類統合体は完全に割れてるってことか。なにせ、遠征艦隊の連中と君等では、言ってることが真逆で、価値観すら違うように見受けられる。正直、同じ組織の人間とは思えないほど、方向性が真逆に見える」


「残念ながら、我々も一枚岩には程遠い。実のところ、私達総帥派は別に地球も火星もまるで興味ないんだ……。すでに同志の多くが超空間ゲートを超えて、銀河のあちこちに進出して、各地の調査を進めている段階でね。おかげで、このグランティアも総統閣下の座乗艦だと言うのに、乗員は100人にも満たないし、護衛艦すら付けてないんだよ……」


「おいおい、仮にも総帥閣下の座乗艦にして、総旗艦なのに今も単艦で動いてるってのかい? いくらなんでもそれは……」


 ……如何に2km級の巨艦と言えど、単艦でウロウロしてるなんて、ヤバいんじゃないのか? 言っちゃ悪いが、この場合……私達地球よりも、ヤクーツク元帥派を警戒すべきじゃないかなぁ……。


「まぁ、不用心と言えば、不用心なんだがね。いかんせん、圧倒的人手不足ってのが我々総帥派の実情なんだ。ヤクーツクにも無駄なことに人や資源を投入するより、銀河マップの完成に向けて、本国に人を送り返せって再三総帥が命じているんだけど……。むしろ、物資や人が足りないから、もっと寄越せと喚き散らしているような状況でね」


 ……いや、銀河進出なんて、途方も無い話だと思うんだがなぁ。

 地球もようやっと火星まで進出した段階で、それだって結構なハイペースのはずなんだが……。

 

 この人類統合体の連中は、目指せ銀河とか……うん、こいつら未来に生きてるなぁ……この調子だと、銀河進出しても飽き足らずに、そのうち目指せマゼラン、アンドロメダ! とかそんな風になるんじゃないかな……。

 

 でも、そんな話を聞いてると、それこそ地球での争いとかチンケ過ぎて、どうでも良くなってくるな……。


 まぁ、多分これが総帥とそのシンパが地球なんてどうでもいいって言ってる理由なんだろうな。


 そこは、解る。

 ……大いに解るっ!


 ちっぽけな地球どころか太陽系すら飛び出して、目指せ銀河の彼方!

 もう夢が広がるどころじゃないだろ。


 きっと、すでに銀河系のあちこちに向かった人達は、毎日が大冒険って感じでめちゃくちゃ楽しくやってるんだろうなぁ。


 うん、私がそんな銀河宇宙の探検行なんてなったら、もう毎日がドキワクで生きてるって最高! ってなるだろうなぁ……。


 思わず、未知の惑星の地上を駆け回って、未知の光景やら異世界のような未知の惑星世界を旅する自分を想像してしまう。


「ははっ、その様子だと君はコッチ側の人間のようだね」


 思わず、銀河系を股にかけた大冒険の日々を夢想していた事に気付かれたようで、ヤン少佐にそんな事を言われてしまう。


「……ははっ、やっぱ解っちゃう? そんな未知の世界の大冒険とか、今の世の中……VRムービーの世界だけの話だからねぇ……。うん、選択の余地があるなら、私だってやってみたいって思うよ」


 地球圏は、もうすべて行き尽くしてる。

 これが動かしようがない現実で……。


 太陽系の他の惑星にしても、その物理的な距離という制約がある以上、遠い異世界と大差ない。

 

 結局、世の中、なんとも言えない閉塞感が漂い始めて、私たちのような若い世代はそれを敏感に感じ取っているようで、憂さ晴らしとばかりに異世界冒険ものみたいなVRムービーがいくつも作られて、いずれも大ヒットしてる。


 まぁ、似たようなことは21世紀の初頭の頃も起きていて、単に歴史が繰り返されてる……それだけの話ではあるんだけどね。


 年寄り連中は、地球の観光VRだのこじんまりとした地味な物ばかり好んで、今どきの若者の考えてることは解らんだの言ってたりするんだけど。


 未知の世界へのあこがれは若者の特権みたいなものだから、仕方がないだろう。

 

「そうだね。元々我々も地球の暮らしが狭苦しくて、我慢できないと感じていたり、自分たちの居場所がないとか……。広い世界へ飛び出していきたい。そんな者たちの集まりだったからね。君が言いたいこともよく解るよ」


 なるほど、だからこそ「こっち側の人間」と評されたわけか。


 これは遠回しに勧誘されているのかな?

 確かに、ここまで事情を知ってしまうと、何と言うか他人とは思えなくなってきて、自然と親近感みたいなのが湧いてくる。

 

 これまで、人類統合体はヤクーツクみたいな外道ばかりと思ってたけど、それは偏見に過ぎず、話してみれば、ヤン少佐や総帥みたいにいいヤツが中枢にちゃんといた。

 さすがに、これは内側に入ってみないと解らない情報だよな。


「あの……ヤン少佐。少し喋り過ぎなのでは? 私は自分が捕虜だと思っているのですが……。もしも、私が無事に地球に帰り着いたら、今の話やここでの出来事をそのまま話してしまうと思います。そうなったら、そちらにとっても不都合なのでは……」


「ははっ! 言われてみればそうか。すまないね……これでも指揮官の一人なんで、部下の手前こんな愚痴なんてとても言えないし、総統にしても我々は地球と戦争することが目的じゃないって、いつもボヤいてる立場だからね。まぁ、今の状況については、むしろ地球側に伝えてもらって、お互い相争う意味がない事に気づいて欲しい……そんな風に総帥も考えているようだし、君の話を聞いている限りだと、ヤクーツクの言葉が我々の言葉のように思われているみたいじゃないか……はっきり言って、不本意だからね! それっ!」


 その言葉に打ちのめされたような思いを新たにする。

 

 人類統合体は……少なくともそのトップは、打倒地球なんてこれっぽっちも考えていないのだ。


 ああ、確かに考えてみればそうだ。


「Feard Oracles」の落着事故にしたって、向こうに地球に損害を与える意図はなく、あくまで「Feard Oracles」の要請に応じて、回収に出向いたってだけの話で、戦っても100%負けるから、ここはもう黙って見送ると言うアマテラスの判断に背いて、挑発に乗って無謀な戦闘を仕掛けたのは、トノバ中将と言う阿呆の独断に近い。


 まぁ、私もトノバを煽ってその気にさせた時点で、十分阿呆の一人なんだけど……この際、自分のことは棚上げにする。


 そして、トノバ中将が公開処刑された後も、同じような考えを持つ連中はますます勢いを付けて、相も変わらず宇宙軍や地上のお偉いさん方は打倒人類統合体と叶いもしない夢を見続けている。

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