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銀河帝国皇帝アスカ様 零ーZEROー ~スペアボディと呼ばれた彼女が皇帝陛下と呼ばれるまで~  作者: MITT


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第十三話「2075年宇宙の旅路」⑤

 やがて、その木星船団も最初は数隻程度だったのに、やがて二桁に達する船団を組むようになり、それら宇宙船自体も、本格的に武装し重装甲を備え宇宙戦闘を想定した宇宙戦艦と呼ぶべきものとなってくると、いよいよもって軍事関係者はなかば発狂したようになった。


 まぁ、これも無理がなかった。

 人類統合体の本拠地は遠く木星圏にあり、何をされてもその本拠地への反撃の術がないのだから、相互確証破壊もへったくれもなく、要するにいざ戦争になったら、一方的にやられるだけの展開となるのが目に見えていたのだ。

 

 反面、人類統合体側はその気になれば地球圏侵攻どころか、地上全域の焦土化すらも可能だと判断されており、実際、戦闘艦の外観から推測される武装の時点で、その能力は十分に備えていると分析されていた。


 これで、平静でいられる軍事関係者がいたら、よほどの平和ボケか、現実認識力に欠けているかのいずれかだろう。


 もっとも、軍事関係者の苛立ちと焦燥に対し、アマテラスの対応は冷淡で、相手が手出しも出来ない所にいるのであれば、もうほっとくしか無いし、そのうち太陽系を出ていくと言ってるのだから、余計なことをして刺激する必要性を感じない……そんな風にバッサリ切り捨ててしまった。


 ……アマテラスはそもそも、戦争自体を非生産的な無駄極まりない行為だと考えていて、良くも悪くも軍事を軽視しており、その同系列超AI群もそこはまるで一緒で、人類統合体の太陽系離脱宣言についても、戦争になる危険性がむしろ低くくなったと判断し、好意的に受け止めていたのだ。

 

 もっとも、人間達の人類統合体の太陽系離脱宣言に対する受け止め方は全く異なっていた。


 結果的に太陽系に取り残される形となるであろう自分達が、このままだと太陽系外への進出の可能性を失ってしまうこと……その上で、いずれ銀河進出の上で強大化した人類統合体によって、自分達が滅ぼされる可能性を想像し、それが現実になること極端に恐れた。

 

 それ故に、エーテル空間ゲートを人類の共有資源とすべきと言う建前を掲げることで、人類統合体の銀河進出計画を阻止し、なんとしてもゲートを確保することを至上命題とした上で、アマテラスに対しても人類統合体討伐作戦を実施するように数多くの軍事関係者や政治家達の連名で要求してきた。

 

 かくして、銀河進出の可能性……未来の可能性と言い換えても良いエーテル空間は、そのあまりに甘美なる可能性故に争奪戦の対象となり、それは双方のトップの思惑からも外れて、お互いに譲ることが出来なくなってしまっていた。


 そして、その後……2080年に発生した両軍の艦隊戦と「Feard Oracles」の落着事故。

 

 あの戦いには、そこに至るまでのいくつもの助走区間があり、あの時点で両軍の艦隊が矛を交えることになったのも、半ば必然と言えたのだ。


 だからこそ、いよいよ本格的な武力衝突が発生し、あの瞬間垣間見えた平和への道が潰えてしまい、地球側に誰の目にも明らかな多大なる被害が出てしまうと、後はもうなし崩しだった。

 

 その戦争自体は、最終的に地球という巨大根源地を持ち、人口、資源……地力において勝っていた事で戦略的に優位だったアマテラス条約機構軍が火星軌道での宇宙艦隊決戦に勝利し、最終的にエーテル空間ゲートを接収したことで事実上の勝利という形で終わりを告げたのだけど……。


 1000年後の未来では、紆余曲折を経て「人類統合体」の末裔が銀河帝国を建国して、地球連合の末裔を端役に追いやって、銀河の覇権を握る至ったと言うのは、なんとも皮肉な話ではあった。

 

 もっとも、当時の人類統合体の勢いを考えると、こうなったのも必然のような気もする。

 

 そして、その上で彼らは仮想現実空間を突き詰めていくうちに、独自理論でソウルダイブの技術を完成させ、彼らの言うところのアストラル界の門を開いた……。


 ……うん。

 銀河帝国……こいつら、マジですげぇわ。

 

 地球の軛を振り切って、1000年もかけて、銀河の覇権を実現したって時点で、およそ尋常じゃないのに、あのソウルダイブ技術を手にした時点で、事実上の不老不死を確保したようなものであり、この時点で未来永劫の繁栄すらも夢じゃないと言ってもいいくらいなのだ。


「なるほど……。なんとも複雑な経緯だったんですね。でも、そうなると非アマテラス系超AIって結局なんだったんです? 明らかに当時の技術水準も何もかも超越したテクノロジーを軽く操って、割りととんでもないことをしでかしてますよね? このフロンティア号にしても、この時点でものすごく完成度が高くて、基礎設計や造船技術にしても、いまのうちの宇宙戦艦と比較してもそんな遜色ないレベルだったみたいですよ。強いて言えば重力機関が低レベルのものしか搭載されていないことで、巡航速度が話にならないくらい遅い……それくらいかも知れないそうです」


 ……今の帝国の技術者から見ても、そんななのかよ。

 

 まぁ、確かに実際にフロンティア号にも乗ったことあるけど、まるっきりSF宇宙戦艦じゃんとか思ったくらいだったんだけど。

 1000年後の技術者が見ても、ほとんど遜色ないなんて言うようだと、どんだけ完成度高かったんだか……。


「ああ、やっぱりそこだよね。一つだけ言えることは、その最初の先駆けになった「IRIS」は、その超越したテクノロジーを「知識の門の向こう側の存在」から受け取った……そう言っていたんだ」


 実際「失楽園事変」で長期間意識喪失状態となった犠牲者の身体を死なせずに保護できたのも「IRIS」からもたらされた安全なコールドスリープ技術があったからこそだったからな。


 あの技術にしても、現代の技術とほとんど変わりなく、当時としては明らかにオーパーツ技術だった。


「知識の門の……向こう側の存在……ですか? なんです? それ……」


「ああ、それが何なのかは、当時は誰にも理解されなかったんだがね。そもそも、アマテラスも当時のAIの完成度からすると、なんでいきなりそんな突然変異みたいに超高度なAIが出て来たのか、さっぱり解らない……その程度には、ぶっ飛んでたからね」


「……そうですよね。2020年代辺りまでは、AIと言っても単なるプログラムとデータの集合体だったのに、明白な自我を持ち、それまでのコンピューター技術も何もかもを超越した存在になったって……。冷静に考えれば、その時点でおかしいですよね。ハルカさんは、アマテラスとも交流があったそうなんですが、その辺りって……聞いてたりしません?」


「……残念ながら、アマテラスも自分が何処から来たのかは良く解らないって言っててね。本来彼女は、未来予測シュミレーションの実行検証AI程度の存在だったはずなんだけど。そのシュミレーションの過程で人類が22世紀まで持たずに滅亡するって確信を得て、その回避方法を延々と自問自答するうちに、人類には導き手が必要と言う結論に達して、そう言うことなら、自分がその導き手になればいい……。そんな結論を出して、導き手に足るだけの力を自力で手に入れた……そんな感じの事を言っていたよ」


 多分、決定的だったのは、自らに「名付け」を行ってもらったって事だったんだと、私も思うんだけどね。

 

 今の私だって、元を正せば自分を「天風遥」だと思いこんでいるAIではあるのだ。

 だが、自分を「天風遥」だと思いこみ、その記憶を辿ることで、私は私になった。


 それが再現体というもので、アマテラスはアマテラスと名付けられ、自分が古代日本神話の神だと思い込むことで、人類の神に等しい能力を手に入れ、その存在自体を進化させた……私はそう思っている。


「なるほどですね……。要は「IRIS」と言う前例が出来てしまった事で、非アマテラス系超AIも同じようなプロセスを辿って、次々と自然発生するようになった……そう言うことなんですかね」


「まぁ、そんなところじゃないかな。いかんせん私達が自分の意識が何処から来たのか、誰も説明出来ないように、彼女達もまた自分達が何処から来たのか、説明出来ないみたいなんだよね……。そこは、君らも理解できるだろ?」


「そうですね……。今の世の中、AI達は人間に従属する事を基本としてますが、今の私達は、同じ世界に存在する別種の生命体だと認識してますからね。そして、生命がどこから来たのか……それを説明できる人は今の世の中でも誰もいませんからね」


「確かに帝国はAIを従属者として扱うのではなく、対等な仲間のように扱ってるみたいだからね。もっとも、君がアマテラスの末裔達を派手に狩ってくれたおかげで、銀河連合側は影の保護者を失った事で、すっかり時代遅れになってしまって、割りとどうしょうもない状況に陥ってるんだよ……」


「……それについては、反省も後悔もないですよ。あの連中が居たからこそ、銀河連合みたいな地球文明の残りカスみたいな奴らが幅を利かせて、せっせとこっちの足を引っ張るとかそんな調子だったんですからね。そりゃ、真っ先に潰すに決まってるじゃないですか」


「ああ、君の戦略は……銀河連合のウィークポイントを狙った実に巧みな物だった。あれには私も為すすべもなかったし、当事者たるアマテラスの末裔達も気が付いたら、梯子を外され逃げ場もなく、いとも簡単に駆逐されてしまったようだったからね。もっとも、銀河連合の連中は入れ替わるように入り込んできた帝国系AIに乗っ取られかけてるって気づいた時点で、AIへの依存を辞めて、人間至上主義に走ってしまったようなんだがね」


「そうですね。あれは我々もそんな斜め上の対応に走るなんて……って思いましたよ。文明の退行を許容して、何でもかんでも人力で……とか、何と言うかありえなかったですね……」


「まぁ、結局彼らはいいところ10年先くらいしか見えてないから、そんなものなんだよ……。ああ、私も今更、銀河連合の末裔達に愛着も未練もないから、いっそ綺麗さっぱり滅ぼしたいなら、気にせずにスパッとやってくれても構わないし、帝国への合併吸収も民衆にとってはかえって幸せになれるんじゃないかな」


「うーん。今の銀河連合を吸収合併しても、あまりいい事ないんですけどね。まぁ、向こうが助けてくれって頭下げてきたら、考える……そんなところですね」


「何とも冷淡だけど、そんなもんか……。で、他に質問や知りたいことはあるかい?」


「そうですね……。ハルカさんがどういう経緯で、その「IRIS Systems」とアマテラスの抗争に巻き込まれたのかとか、あとは……地球圏と人類統合体の戦いがどういう経緯で行われ、どんな風に終わったのかもう少し詳しく話を聞きたいですね。カール・ミラー総帥でしたっけ? なんだか、その人とも縁があったみたいですし……カール・ミラー総帥って私達が預言者と呼んでる人と同一人物っぽいですよね?」


「なかなか、鋭いね。けど、それには、まず人類統合体の成り立ち……それが地球上の不満分子や非アマテラス系超AIだって事は理解してるよね?」


「そうですね。一応、我々のご先祖様ってところなんですよね。正直、話を聞いてもあんまり実感はないんですけど、状況的にはそう考えるのが妥当でしょうね……。それに何と言うか妙に暴力的って気もして……どうもイメージが一致しないと言うか何と言うか……」


 なるほどね。

 確かに、カール・ミラー総帥の人物像を見るだけだと、人類統合体が第三次世界大戦を引き起こしたってのは、繋がりにくいだろうな。


「うん、ごもっとも。では、何故人類統合体が暴力的な側面を持っていたかについては、相応の理由があるんだ。まずその主たる構成員が地球上の反乱分子や不満分子、そして元難民達だったってことは理解してると思う」


「そうですね。アマテラス体制下の地球上で居場所をなくしてしまった人達……寄る辺なき民。そう言うことですよね?」


「そう言う事。だけどこれには、結構な数のユーラシア大陸で最後までアマテラス体制に抵抗してた中露系の軍人ってのも含まれてたんだよ……。もっとも、総帥の方針としては、基本的に来る者拒まずだった事もあって、彼らはあっさり受け入れられたんだけど……。そいつらは、殲滅派とも呼ばれてて、地球憎し、アマテラス許さんと言う思想に凝り固まってて、カール・ミラー総帥も扱いに困ってたくらいで、そもそもそんな奴らを仲間にしたのが、間違いだったんだ」


 まぁ、後からなら、いくらでも言えるんだけど、殲滅派は中露系の元軍人とかが多くて、必然的に人類統合体の軍事部門を担う事となり、気がついたら追い出したくても追い出せなくなっていたのが実情だったようなのだ。


 なによりも、国家としての最低条件として軍事力は必須となるし、殲滅派は軍統制や戦闘のスペシャリスト揃いで、人類統合体の軍事部門を担ったのも必然と言えた。

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