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銀河帝国皇帝アスカ様 零ーZEROー ~スペアボディと呼ばれた彼女が皇帝陛下と呼ばれるまで~  作者: MITT


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第七話「2069年10月31日」⑤

 もっとも、こう言う管理が行き届いているのは、あくまで通信ネットワーク圏内……オンラインエリアに限った話で、自然保護区という名の放棄エリア……オフラインエリアだと、事情はちょっと変わってくる。


 通信網の圏外で、監視も管理も行き届かない……それはある意味、無法地帯みたいなものなので、それもあってオフライン地帯は危ないから入っちゃ駄目ってのが半ば常識化してるし、子供へのお説教としても、オフラインエリアに捨てるよってのは、もはや定番だった。

 

 もっとも、オフラインエリアと言えど、天空の目たる監視衛星や監視ドローンに24時間体制で監視されているので、犯罪行為を見つけられたら、やっぱり逮捕される。


 世の中、そんな甘くないのだ。

 犯罪者に厳しい社会とか別に結構な話じゃないかなぁって思うから、アタシはいいぞもっとやれって立場だ。

 

 こんなミニスカ女子が田舎の夜道を歩いてて、性犯罪者に襲われる心配しなくていいとか、下着を堂々と外に干しといても盗まれたりしないってのは、悪くない世の中だと思うよ。

 

 おばあちゃんの話だと21世紀の初めくらいは、割りとそんな物騒な世の中だったって話で、電車に乗れば痴漢に襲われ、見も知らぬストーカーに付きまとわれて殺されるとか悲惨な事件もあったり、か弱い女子にはなかなか辛い世の中だったらしい。


 もっとも、犯罪に厳しいとは言え、中学生が無許可で河川敷の自然保護エリアで焚き火してただけで逮捕とか、さすがに可哀想だと思ったけどねぇ……。

 

 もっとも、仮にここで唐突に焚き火なんてやったら消防ドローンが何機もすっ飛んできて、大騒ぎになるなんてのは私でも解るし、未成年者だからって許されるような問題でもない。


 なにせ、見様見真似で安全対策も何もなしで、焚き火実況中継とかやってて、火の粉が飛んで、後ろに転がってた枯松の枝に燃え移って大炎上……なんて、騒ぎを起こしてしまったんだからねぇ……。

 

 今の世の中、責任って言葉はものすごく重いんだから、よく考えて行動しましょうね……と、そう言う話。

 

 さて、この私は一応、女子高生ってヤツだ。

 だから、今も高校の制服……セーラー服なんか着てるんだけどね。


 一応さっきまで授業時間だったから、制服くらい着てる。

 別に着なくても良いんだけど、学生であると言う気分が大事だと思うので、毎朝起きたら、まずは制服を着るようにしてる。

 

 もっとも実際に高校には一度も行ったことが無いし、クラスメイトとまともに顔を合わせたこともなかった。

 今どきの学校教育なんてのは、VR教室での通信講座がメインで、わざわざリアルで生徒を狭い教室にごっそり集めての授業なんて、もうどこもやってない。

 

 特にここらみたいな辺境都市になると、人口密度なんてスッカスカもいいところで、電車やバスみたいな公共交通機関も大雑把なところしかカバーしてない。

 

 必然的にそんなことをしたら、誰もが通学だけで往復数時間かかるとか、揃いも揃って無人タクシー通学とかそんな調子になってしまうので、かつてはあちこちにあった学校の校舎はどこも使われなくなって軒並み廃墟になっている。


 一応、年数回ほど全生徒を集めて、リアル全校集会とか体育祭や文化祭とかもやってるし、修学旅行とか言って、大勢でリアル観光旅行に行ったり、皆で集まってキャンプファイヤーとか、色々とリアルイベントも行われている。


 その場合、廃墟化した学校でやるのかと言うと……別にそんなことはない。

 この諏訪シティの場合だと、一箇所だけ綺麗にして近代設備が完備されたバカでかい校舎が用意されていて、行事の日だけその綺麗な校舎の一角を間借りして、当日だけ学校名の看板を下げて……なんて事をやってるし、クラブ活動なんかも複数の中学、高校での合同形式で公民館とか公園みたいな公共施設でやるようになってる。


 もっともそれら学校行事については、基本的にアタシは出席拒否ってるんで、カンケー無いんだけどね。


 要するに、学校なんて限りなく仮想化しているのが現実で、それで何か問題が起きているかと言うと何の問題も起きていない。

 友達付き合いとかも、無理にリアルで会わなくてもオンラインの付き合いだけでも結構成り立つらしく、ジジババ世代の心配を他所にアタシら学生世代は割りとヨロシクやってる。


 一応、昔の名残で学校の建物なんかはあちこちに残っているのだけど、どこも耐用年数を大幅に過ぎていて、崩落の危険があることからいずれも閉鎖されていて、中も埃のかぶった空き教室が大半で、本来の用途で使われることも無くなって久しい。


 いっそ更地にするのも手だと思うのだけど、建物を取り壊して更地にするのにも相応の予算がかかるので、例によって見栄えだけはホログラフ投影で誤魔化して、実際は草茫々の校庭に、廃墟同然の校舎と言った調子で、要するに完全に放置されている。

 

 まぁ、これは半世紀以上前の昭和の時代……第二次ベビーブームに合わせて、あっちこっちに学校作ったのはいいけど、その後凄まじい勢いで少子化が進んで、無用の長物が乱立したって言う……20世紀の頃から言われ続けていた少子高齢化の成れの果てってところではあるのだけど……。


 この見た目キレイで実は廃墟って建物は、日本各地に大量にあるので、学校関連施設だけの問題でもない。

 なにせ、今現在……2069年の日本の人口は、とっくに一億を切っていて、日本人と呼べる人々は、その最盛期の頃の半分以下……5000万人程度しかいないからだ。


 ……21世紀当初の予想では、2050年代の時点で日本の人口は一億を切るだろうと予想されていたのだけど、その予想を遥かに上回る勢いでの人口減少……。


 実際、2020年代の頃は、まだ一億人以上も日本人が居たのに、それから僅か半世紀足らずで半分以下にまで減少すると言う惨状だった。


 では、なぜこんな極端なまでの人口減少が起こったのか?

 

 これは、2030年代に世界を席巻した厄災……。

 変異性強毒インフルエンザ……「LUCIFER31」の引き起こした災厄の結果だった。


「LUCIFER31」の猛威……LUCIFER禍は、最終的に世界人口を軽く半減させ、世界大恐慌を引き起こし、世界中の人々を絶望の淵に叩き込んだ恐るべき厄災だとなった……。


 実際、アタシらの両親もLUCIFER禍で亡くなっているし、それはアタシらに限った話でもなんでも無い……まさに、世界中が死に満ちて、各地でこの世の地獄……そして、死が当たり前……そんな光景が繰り広げられていた。

 

 もっとも、アタシらの世代はウイルスの猛威に対抗すべく、出生時に施されるようになった遺伝子改造ワクチンの接種で半ば先天的に強力な免疫と、驚異的な各種抵抗力を獲得した新世代と呼ばれる人類だった……。

 

 それ故に親世代が酷いことになっているのを横目に、これまであまり問題なく育ってこれた。


 なにせ、変異を重ねた「LUCIFER31」だろうが、それを皮切りに次々に発生するようになった未知の強毒性ウイルスや細菌だろうが、アタシら遺伝子改造世代は全く寄せ付けず、何があってもピンピンしてて、実際、風邪なんかもひいたこと無いし、熱なんかも出た試しがない。

 

 転んで怪我とかしてもすぐ治るし、筋肉痛なんかにもなったことがない。

 今のところ推定ながらも、恐らく平均寿命も軽く100年を超えるだろうとも言われていて、まさに驚異の新人類そのものだった。


 もっとも、こんな遺伝子改造等と言う無茶な施策を実行するなど、およそまともでない発想で……。

 こんなムチャを強行した日本政府関係者達も並大抵の精神の持ち主ではないと思われるだろうが、実のところのこの施策は人間が考えた施策ではない。


 この遺伝子改造ワクチンは、出生直後の接種でないと効果が低いという欠点があったものの、未曾有の生物災害で世界各国が阿鼻叫喚地獄絵図に叩き込まれた中、日本人を救うべく、当時の基準からすると、オーバーテクノロジーと言って良いような先進テクノロジーを用いて開発したもので、そして、それは同時に世界をも救うことにもなった。


 なにせ、LUCIFER禍によって人口激減した事で、当初の予想では今頃は世界人口が20億を切っていて、やがて10億を切ってそのまま右肩下がりとなるだろうとまで言われていたんだけど……。


 それが当初予測の倍以上……最盛期の世界人口の半減程度に収まったのは、まだマシと言える状況だろう。


 もっとも、それでもウイルス被害は凡そ尋常な数字ではなかった。

 およそ、40億……それが「LUCIFER禍」の犠牲者総数だと言われていた。

 

 特に、非ワクチン接種世代に該当する今の40代以上の人々に関しては、その半数以上がLUCIFER禍で直接、または間接的に命を落としている。

 

 まさに人類にとっては未曾有の生物災害であり、2020年代のコロナ騒ぎが可愛く思えるほどには、甚大なる災害だった。


 反面、アタシら遺伝子改造世代は、割とピンピンしているし、新生児の遺伝子改造ワクチンが義務化された2040年代以降生まれの日本の若年者人口はむしろ順調に増えていってる。

 

 具体的には現時点で生き残っている人口の過半数以上が、アタシも含めた遺伝子改造世代……と言う状況だった。

 

 要するに高齢者や40、50代と言った社会を導くべき立場となるべく世代がバタバタ死んで、若く未熟な30代より若い世代ばかりが生き残っている。


 今の日本はそんな状況になっているのだ。

 それでも他の国々よりは大分マシな状況といえ、そもそも年齢の順番に人が死んで、若者よりも年寄りが少ない社会というのは、至って健全な社会と言えた。

 

 おかげで、日本の人口ピラミッドは、かつては歪な逆ピラミッド型だったのが、2030年代以降の多産奨励政策や、2040年代に確立された受精卵の段階で遺伝子改造を施した上で、人体を介さない人工子宮を使ったデザインチャイルド生産技術の確立などもあって、今では人口ピラミッドも割と末広がりな形になっていて、それだけ見れば割と健全な社会と言えた。


 これも相応の理由がある。

 2040年代の頃には2020年代から長々と続いていた生物災害騒ぎも一段落ついていて、如何に実績があり政府からの指導があったとは言え、当時はまだまだ技術的にも未完成な部分が多く、リスクも多かった遺伝子改造ワクチンに対する拒絶感は根強く、上の世代ほど接種率も低く、また効果も出にくいという問題があったのだ。


 当時の日本社会もワクチンを強制するか任意にするかで、散々紛糾したのだけど。

 まず、接種年齢が若いほど、副作用も出なくなり、適応率も高くなる事が判明し、ひとまず強制とするのは新生児のみとして、それ以外はリスクと効果を天秤にかけた上で任意接種とすると言う玉虫色の結論となった。


 その結果、2040年代時点での最終的なワクチン接種率は、当時の楽観想定も手伝って、任意世代……特に高年齢者の間ではかなり低い率にとどまってしまっていたのだ。


 もっとも、人々がLUCIFER禍の驚異を忘れ、遺伝子改造ワクチンの副作用と言った問題点が噴出し始め、それ見たことかと騒ぎ始めた頃、2047年に再びLUCIFER禍の脅威が世界中で再燃した。


 現代……2069年時点では、LUCIFER禍はとっくに過去のものとなっているのだけど。

 2047年代に変異強化され再出現した「LUCIFER31」は、一時的に消滅したと見せかけて、大幅な変異を遂げた上で再び猛威を振るい、ワクチン非接種者達を直撃し、その多くを死に至らしめた。


 反面、私達新世代と呼ばれる遺伝子改造世代はほとんどその影響を受けなかったし、ワクチン接種者の死亡率も驚くほど低かった。

 なにせ、この遺伝子改造ワクチン自体が、本来は来るべき宇宙時代に備えて開発を進められていたもので、当時の医療技術から見ると、軽く100年は時代を先取りしているとまで言われたほどの代物だったのだ。


 アタシら新世代は既存のウイルスや細菌への耐性はもちろん、未知の病原体や毒物への耐性や高い回復力も獲得しており、身体能力も旧世代と比較にならず、無重力環境適性や放射線被ばく耐性すらも備えているのだ。


 要するに、旧世代の人類種とはもう基礎スペックからして違う……筋力、知能、反射神経に生命力……あらゆる面で新世代は旧世代の上を行き……もはや、別種の人類とまで言われるような存在となっていた。

 

 それでも、50年代辺りまでは新世代は社会的には少数派で、全員が未成年だったということもあって、世の中はなんだかんだで頭の固い旧世代が牛耳っていたのだけど。

 

 2度に渡るLUCIFER禍で、旧世代の大人たちは大幅にその数を減らしてしまった。

 なにせ、二度目のLUCIFER禍では、時の総理大臣や幾人もの大物政治家はもちろん、日本国の象徴であるやんごとなきお方達すらも一族郎党まとめて亡くなっている。


 当然ながら、かつて自衛隊と呼ばれていた国防軍も他の業種同様高齢化が進んでいた為に死者続出となり、もはや組織を維持できない程の損失を受けたことで、結局結成以来一度もまともに戦うこと無く組織として破綻してしまうような有様だった。


 もっとも、それもあって日本国防軍は世界に先駆けて、急速に無人兵器化が進められ、その潜在軍事力はむしろ日に日に増大し、今や世界最強の軍隊とも言われている。

 

 かくして、第二次LUCIFER禍は緩やかに、そして容赦なく人類を選別し、人類の変革を強制し、世界の形すらも変貌させていった。


 今生き残っているのは、アタシら新世代の若者たちと、後天型遺伝子改造ワクチンを受け入れて、そのエゲツない副作用の数々と、身体構造そのものを緩やかに変えられていく恐怖に耐え、死の運命を乗り越えた人々の生き残りばかりだった。

 

 後天型遺伝子改造者は、当然ながら少数派に落ち着いているのだけど、アタシら新世代の後見人やアドバイザーと言う立場を手に入れ、各地で進められた人口集中政策……要するに地方切り捨てにより、インフラ維持費がかからなくなり、社会保障も人口が減ったことで、医療や福祉と言った社会保障費用が激減したことで、昔より充実している事で皆、割りと気楽な人生を送っているようだった。


 もっとも、正真正銘の勝ち組でありながらも、せいぜい劣化新世代程度の恩恵しか受けられていないのも事実なので、自分たちの立場を弁えて、もう社会の舵取りは若者やAI達に任せて、大人しくしているという事らしかった。


 ちなみに、外国となるともっと悲惨な状況で、頑なに遺伝子改造ワクチンを拒否した結果、国民の9割以上がいなくなったお隣の大国みたいな国だってあるし、LUCIFER禍の震源地であるロシアやその流れ弾の直撃を食らったヨーロッパ諸国に至っては、あちこちに難民キャンプのような集落が点在してるだけという国家としての体を成していないような有様だった。

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