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銀河帝国皇帝アスカ様 零ーZEROー ~スペアボディと呼ばれた彼女が皇帝陛下と呼ばれるまで~  作者: MITT


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第三話「フルダイブ・オンライン」④

「なるほど、解るような気がしますね。私はロズウェル様の従属契約設定だったんで、ロズウェル様の安全性しか見てませんでした……。それが原因なんですかね?」


「まぁ、そうだな。恐らくそう言う事だ……。管理AIも同じ理由で問題なしと判断したんだろうな。……確かに、VR世界の片隅に押し込んで、蚊帳の外に追いやってしまえば、いくら私でも何も出来ん」


「そうなると、てっとり早く空間座標転移でもします? この手のVRゲームって、マップの瞬間転移機能くらい普通にありますよね?」


「……いや、ご丁寧に初期設定で一律で空間転移が出来ない設定になってるみたいだ。要するに、選定の儀に参加したいなら、地道に歩いて行けって事だな……舐めた真似をしてくれるな」


 ……もっとも、アホみたいに広いマップを実装している関係で、陸路となると軽く数千キロはありそうだった。

 宇宙空間の亜光速ドライブなら、文字通り秒の距離だが……地道に歩いてとなると、気が遠くなるほどの日数がかかるだろう。


 もっとも、本来はゲームであるのだから、移動の簡略化の為に都市間転移の機能くらいはあって、それを使用不可設定としているだけの話のようだ。

 

 まぁ、候補者達の行動範囲を闇雲に広げられても、管理が行き届かなくなるなど、問題があるからなのだろうが、こんな風に悪用されてしまうと、邪魔者を追放隔離するために敢えてこう言う仕組みを用意していた……等と邪推の一つもしたくなる。 

 

 となると、解放クエストとか、その辺はありそうだし、時間とともにエリア拡大の上で、イベント発生とかそんな演出くらい用意しているのかもしれない。

 そして、ここは本来は未解放エリア……恐らくそう言う事で、NPCの大半が無反応なのもそう言う事なのだ。


 だが、この私を敢えて、こんな未解放エリアに押し込んだ意図が解らない。

 確かに、候補者達への干渉を防ぐという意味では、適切な予防攻撃と言えるかもしれないし、時間稼ぎと言うことならば悪い手段とは言えない。


 だが、こんなあからさまな時間稼ぎを仕掛けてきたとなると、悪巧みの進行中と言っているようなものではないか。

 ……そう言うことなら、そんな思惑なぞ、真正面から叩き潰すまでの話だ。

 

 この私を……舐めるなッ!


「えっと、これからどうします? まさか、地道に歩いていくつもりですか?」


 思索にふけっていると頭の上から不安げな様子のアドミイが声をかけてくる。

 

「それこそ、まさかだな。それより、少し場所を変えようか……どうやら、早速何やらイベントが始まったようだぞ! すまんが、一度降りてくれると助かる」


 そう言うと、アドミィも空気を読んだのか、肩車体勢を解除して、地面に降り立つと背中を丸めて警戒態勢に入る。

 別に、そこまで猫そのものと言った動きまで、しなくてもいいと思うのだが……案外、意識が身体に引っ張られているのかもしれんな。


「えっと……! すみません、各種センシティブ系に感なし! 特に妙な動きもないんですが……」


「いや……今の感覚は……恐らく来るな」


 サーチレーダーにも反応はないし、アドミィも何も探知していないようだが。

 私の勘は誤魔化せない……今のは、何者かの視線だった。


 広場の片隅にいる私達に対し、モブNPC達はまるで関心を持たず、むしろ、まるで見えていないように無反応なのだが。


 今の感じ……間違いなく誰かが見ていた。

 モブNPCにまぎれて、誰が誰だかさっぱり解らないが。


 この様子だと、仕掛けてくる可能性が高い。

 さすがに、いきなり町中で仕掛けるほど迂闊ではないようだが、向こうから接触してきてくれるなら、むしろ望むところだ。


 もっとも、武器もなければ、スキルだの魔法の使い方も何も分からん。

 だが、別に素手であっても何ら問題ない。


 武器に頼っているうちはまだまだとか、偉そうな説教を新兵たちにしていた程なのだから、当然ながら徒手空拳の白兵戦の覚えくらいはある……こちとら、帝国近接総合格闘術インペリアルアーツのマスター認定者なのだからな。

 

 このVR体も少々ウェイト不足だが、思った以上に動けるようだし、例え戦闘になってもなんら問題はなかろう。


 灰色の光点が薄めのところへ、敢えて向かう。

 時刻は夜……広場や大通りには照明があったが、裏通りにはそんなものはない。


 薄っすらと明るいのは、夜空を満たす星の海の星あかり。

 どこの惑星の星空を再現したのか知らんが、長年の帝国臣民としては、なかなかに斬新な星空だった。


「データ照会完了。これは……銀河連合の観光惑星ペラノイアの星空です。一致率99%……恐らく、かの惑星をこの仮想世界の環境ベースにしたのだと思われます。大気組成や植生などもかの惑星を参考にしているようですね」


 一瞬、星空に見惚れていた事で、アドミィも気を利かせてくれて、データ照会で特定してくれたようだった。

 もっとも、単なる興味本位で調べたうえで、情報共有したような気がしないでもない。

 いかんせん、コイツはそういう奴ではあるのだ。

 

「……ふむ、地球環境の再現で、かなりいい線行ってると言う評判の緑化観光惑星だったかな」


「ええ、そうですね。もっとも、機械文明の否定ってことで、何もかも人力でネット回線どころか電気もないとか、とんでもなく不便な所のようですけど」


「現代人としては、あまり住みたいとは思えない惑星だな。だが、銀河連合所属惑星である以上、細かい環境データまでは公開されていないはずなんだがな……。それに何よりあそこには、地球教団の最大拠点があるとされている。おかげで、何度奴らを潰しても根っこが残っているせいで、いつまで経ってもイタチごっこ。いっそ、惑星ごと焼き払ってやりたいくらいではあるな」


「あまり物騒な事言わないでくださいよ。おや、ようやっとレーダーに感ありですね。さすが、良い勘してますね!」


「お世辞はいい……。ああ、お前は引っ込んでていいぞ。戦力としては始めから期待しちゃいないからな」


 ようやっとサーチレーダーに反応あり。

 赤い光点……なるほど、敵対者の登場って訳だ。


 数は4つ。

 規則正しい動きをしていた灰色が唐突に意思を持ったような動きとなり、まっすぐこちらへ向かって、走り込んでくるのが解る。


 だが、すでにこちらも動いている。

 裏路地へ入ると、照明も家の明かりもなく、ひたすらに真っ暗。


 だが、この程度の闇など、どうということもない。

 勢いを落とさず、駆け抜けると相手も律儀に追跡してくる。

 

 いくつか曲がり角を曲がった拍子に軽く飛び上がると、あっさり民家の屋根の上まで上がれた。

 

 ふむ、重力係数が低いのか……あるいは、このVR体のスペックが高いのか。

 と言うか、小柄な分体重も軽いようで、明らかに現実世界の有機義体より身軽ではあった。


 気配を殺して、屋根に伏せてしばらく様子を見ていると、剣だの杖を持った連中が角を曲がるなり、キョロキョロと周囲を伺っている。

 ひときわ図体がデカいやつは、ロープと麻袋も持っていて、何をしようとしていたかはこの時点で明らかだった。


 人数は4人……もう一人小さいのが少し離れた角の辺りで、コソコソしているようだが。

 どうも私を追ってきた集団を尾行してきた何者かのようだった。


 よく判らんが、私は随分と人気者のようだった。


 もっとも、4人組の方は、まんまと撒かれて、焦っているようだ。

 追跡の手口も丸っ切りド素人……まぁ、なんともお約束っぽいが、こちらも敢えて乗っていくか。


「くそっ! 確かにこっちに行ったはずなのに! どこへ行きやがったんだ!」


「ちょ、ちょっと待てよっ! なんでいきなり剣なんか抜いてるんだ! 依頼内容はターゲットとの接触、その上で依頼人のところに連れて行くだけだったじゃないか!」


「うるせぇ! 手っ取り早くとっ捕まえた方が面倒無くていいだろ! てめぇらこそ、何をグズグズしてやがるんだ! おかげでまんまと逃げられたじゃねぇか! ったく、使えねぇクセに文句ばっかりは一人前かよ」


「そう言う問題じゃないだろッ! そもそも、そのデカい麻袋だって、まさかと思うが誘拐でもするつもりだったってのか?」


「あん? わりぃか? んな、俺等を見て逃げ出したってことは、大方なんかやましいことでもあったんだろうさ。そんなヤツ相手に、グダグダ話し合いとかしてねぇで、コイツをかぶせてふん縛ってから、問答無用で連れて行く。……簡単な話だろ?」


「ちょっ! ちょっと待ちなさいっ! さっきから聞いてれば……アンタらこそ、何も考えずに、武器を持って追いかけ回した上に、麻袋かぶせて誘拐とか……そんなの普通に犯罪じゃないっ! アンタ達、頭おかしいんじゃないのっ!」


「んだと! 頭おかしいとはなんだ……小娘っ! 大体、俺らだけで十分だったのに、なんでお前らみたいなのが割り込んでくるんだっ!」


「……それは僕らのセリフだ! 先に依頼を受けていたのは僕たちだったのに、お前らが勝手に割り込んできたんだろうが!」


「はっ! 駆け出しのど素人冒険者には荷が重いって、クライアントも判断したんだろうさ! むしろ、手伝ってやってるんだから、ありがたく思えや! それとも文句があるってのなら、この場で相手になってやってもいいんだぜ?」


 ……何だかよく判らんが、仲間割れとは……。

 何故か、勝手に追手側が一触即発のようになっていた。

 

 まぁ、この様子ではクライアントの調整ミスで、依頼が被ったとかそんなところだろうな。

 フリーランス業などではよくある話だ。


 もっとも、ここでいきなり、仲間割れで殺し合いなど始められても困る。

 こちとら、初めてまともに意思の疎通が出来そうな相手と出会ったのだから、少しは話くらいは聞かせてもらいたい。


 まぁ、登場タイミングとしては、今をおいて他はないだろう。


「やぁやぁ諸君ッ! この私に何か御用かな? 何やらただならぬ様子だが、そんな殺気を撒き散らしていては、不意打ちも何もあるまい? 返答次第では、穏便にすまさないでもないが、さてどうするね?」


 いい感じに雲間から、大きな衛星が顔を出し、それを背景に屋根の上から悪党どもを見下ろす……これはなんともゾクゾクするシチェーションだな。

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