6/10
08
しん、と静まり返った宇宙船の中は、いつもよりずっと寒い場所に感じられた。
この途方もない時間の中で、僕は永遠に、たった独りで生きていかなければならないのだと、唐突に自覚した。むしろそれは、遅すぎたくらいだった。
ずっと、目を背けていただけなのかもしれない。
何か大切なことを、ひどく大事であたたかなものを、忘れてしまっている気がして。
ただ、無性に悲しく、恋しかった。
置いてきた人々。何よりも大切だった人。あたたかい家。僕の故郷。
「マスター?」
後ろから声を掛けられて、それでも今は、今だけはそっとして置いて欲しかった。
「ごめん……それでも、君はロボットだ。ロボットなんだよ、アインス」
「分かっていますよ、マスター。それでも私は、あなたのそばにいます」
彼はそう言って、まるで人間がするみたいに、僕の背中を撫でた。ぎこちなくて、硬い金属の手は、全然あたたかくなんかなくて。
それでも、後から後から涙が零れて止まらなかった。
彼はただ、黙って、そうしてずっと僕の隣を離れることはなかった。