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悪役に応募した三流役者。異世界での雇用でした  作者: バッド
2章 アカデミー

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77幕 世界を救う方法

 管理権限を手に入れて、なんちゃって神様になったカナタです。なんちゃって神様になったからには、自分の願いを叶えること以外にも人々を救わなければいけないなぁと思ってしまいました。


 この地獄も真っ青な劇として破綻した世界を救うにはどうしたらよいか、僕は考えました。なにせ、人々は罪悪感を持っていないし、良心はゴミ箱に捨てている終わった世界。よっぽどの改革を行わないと駄目でしょう。


 ですが、この世界特有の理があるので、それを利用しました。我ながら、ピカリと光るアイデアだったと自画自賛してます。


 ━━何をしたかというと。


           ◇


 王位継承争いは、これまで多くの人々を巻き込み、悲劇を生み、死体の山と膨大な資源と財貨を費やしてきた。


 そして、現在行われている王位継承争い、頼朝第一王子と与一第二王子の戦いも佳境を迎えていた。


 アカデミーの講堂の外に出て、屋根の上で剣を打ち合っていた。二人とも、剣の腕は確かであり、そのなかでも体格に勝る頼朝は、与一を圧倒している。


「くはははっ、弟と継承権争いをするとは、以前は思っても見なかった。なぜ殺し合っているのか、今でも分からん! どうして王の座を求めた? 求めなければ、仲の良い兄弟でいられたものを!」


 頼朝の剣は、力任せの剛腕の剣である。しかしその剣の一撃一撃は素直ではあり読みやすくはあるが、視認も難しい速さであり、受け流そうとしても、強引に振り抜く力があった。そのため、与一は剣を打ち合っていても、回避に重点を置き、不利に陥っている。


「兄さん、王位継承権を持つ以上、王位を求めるのが王家の本能なんですよ、それがわからない兄さんではないでしょう?」


「ふっ、クハハハハ、そのとおりだ! 王家の呪われた血とでもいうのか、無粋な質問をしてしまったな、すまぬ、弟よ!」


 金属のぶつかり合いで火花が散り、いつの間にか振り始めた雨により視界が悪くなる。二人とも、濡れて滑りそうな足場も気にせずに、それでも戦闘を続けていた。


 だが、趨勢は頼朝の方に傾き始めていた。徐々に与一は傷が増えていき、血が服を真っ赤に染めていく。その傷が行動を阻害し始めて、与一の足運びは段々とふらつき始め、剃刀のように鋭い剣さばきも鈍くなる。


 頼朝は与一の様子を見て、己の優位と、決め時のチャンスを悟っていた。下ではヨグ・ソトースとの戦闘が続いているが、いつ何時状況が変わるかわからない。そのため、多少危険であってもリスクを取り、トドメの一撃を繰り出すことに決める。


「さらばだった……」


 剣を振り上げて、とどめの一撃。


「さらばだっ、優秀なる弟よ! これにて王位継承権争いは終わりを告げる!」


 剣を振り上げて、とどめの一撃。


 剣へと全魔力を込めていき、身体強化を限界を超えて使用する。限界を超えた身体強化は皮膚を破り筋肉を裂き、肉体を崩壊させ、血を噴き出すが、それでも止めることはしなかった。


『光速の剣』


 光が軌跡を残し、与一の体を通り過ぎる。光速の一撃は、与一が反応することも許さずに、縦に断ち切った。


「やったか!?」


 頼朝は自らの剣により、2つに分断されて、屋根を転がる与一の死体を見て歓喜を見せる。


 だが、その喜びはすぐに消え失せる。与一の分断された肉体がガラスのように割れると、いや、目の前の空間が割れると、その後ろには与一がいた。


 今放った必殺の一撃を受けたはずなのに、その肉体には先ほどまでの傷しかない。


「『分身鏡体(ミラーズボディ)』です、兄さん」


 与一の憐れみを含んだ声に、頼朝は口を開こうとして、激痛が肉体に奔り、体勢を崩してしまう。与一に放ったはずの光の一撃、縦に断ち切ったはずなのに、自分が縦に傷を負っていた。身体を分断させるほどの威力はないが、それでも深い一撃であった。


「『分身鏡体』だと? あれは低レベルの魔法。魔力の放つ威圧だけでも揺らぎ消える他愛のない魔法であるのに、なぜ……」


「本来はそのとおりです。でも私の『ミダスの手』はAランクの強力な魔法へと変えるんです。他者からの攻撃を半分跳ね返す強力な魔法にっ!」


 与一も余裕があったわけではない。その額には汗が流れ、息も荒く、剣を持つ手も震えている。

 

 だが決定的な一撃を入れるために耐えに耐え抜いたのだ。


「さようなら、兄さん!」


「ぐぁぁぁっ!」


 そうして、突きつけた剣は頼朝の体を貫き、終わりを告げるのであった。


 力尽きた頼朝は命の炎を消し、倒れ込み━━。


「ぐぁぁぁっ! こ、ここまでか……」


 苦しみながらも、なおも立つ頼朝。


「さようなら、兄さん」


 ザシュッと袈裟斬りにする与一。斬られた頼朝は苦痛で顔を歪ませて、ふらふらと倒れて━━


「ぐぁァァァァァァァァ、こ、ここまでか……」


「……てい」


 まだ倒れないので、ザクッと頭に剣を叩き込む与一。その顔は若干軽蔑の眼だ。


「ぐぁァァァァァァァァ、こ、ここまでか……」


「もう倒れてください! 明らかにNGになりますよ? ドリフの殺陣コントになるじゃないですか!」


 まだまだ元気な様子の頼朝に、ガチギレする与一であった。


「えぇ、でも良い役だから、もう少し、な?」


「もう少しじゃない!」


 もうかっこよさなど無縁で、サクサクと頼朝を切る与一である。その責める視線を受けて、ようやく諦めた頼朝は倒れ伏すのであった。


「それじゃこの世界ではさよならだな。来世でよろしくお願いします」


 最後の言葉はへんてこだった。


 そうして、戦いは与一の勝利で終わるのであった。


 だが、与一の表情は浮かない。本来は勝利に喜ぶところなのだが、微妙な結果に終わったからだ。


「なぁ、カナタ君? 本当にこの仕様にして良かったのか?」


 いつもの第二王子のキラキラとした話し方ではなく、年長の威圧感のある話し方で与一は問う。


 周りを見ると、ヨグ・ソトースとの戦闘を前に、逃げ惑う人たちの姿がある。


「きゃー! あの目玉はなんなの!?」


「逃げるんだ! あの光線に当たると粉々になるぞ!」


「きっと名前は権左衛門ね!」


 逃げ惑う生徒たち。押し合いへし合いして逃げ惑うが、絶妙な間隔をとり、倒れた人の手を踏まないように避けたり、大声で悲鳴を上げながらも、その足取りはしっかりとしていた。


「ほら、エキストラの皆の実力の差がはっきり分かるじゃないか。あれは少し演技指導が必要ではないか?」


「まぁ、前よりはマシだと思いますけどね」


 与一の不満そうな声に、銀髪の美少女が舞い降りる。


「現実主義の動画よりも、やはり演技をする動画の方がウケが良いです。大御所もそう思わないですか?」


「確かに……。現実よりも臨場感があり、観客を楽しませるのが劇だ。本来はこうあるべきだったともいえる」


 与一も役者であるから、カナタの言い分は充分にわかっている。創造神は現実を使ってキーマンを介入させて劇を作っていた。だがそれは違うのだ。


 本当に面白い劇は、ただ現実的にやれば良いというわけではない。現実よりも現実らしく、そして観客を魅了するために役者は腕を磨き、パフォーマンスを高めるのだ。


 なので劇の神として創造神は方向性を誤っていた。


「だが、まさか全人類の前世の記憶を取り戻すとは、思い切ったものだな」


「皆、役者として命を賭ける人たちですので、最初から記憶があった方が良いんですよ」


 そう、カナタは皆の記憶を取り戻していた。キーマン、モブ役、エキストラ関係なく全人類を。


 その結果、劇の世界であると思い出し、皆はそれぞれ喜んで演技を始めた。さっきの頼朝も同じだ。死ぬとしても演技をやり通した。


 普通の人間なら不可能だろう。だが、この世界の人間たちは違うのだ。


 権力争いも金稼ぎも戦争も恋愛も全ては演技のため。演技に狂いし役者として選ばれた人間たちは、劇のために動く。


 あと、死ぬ時は痛覚オフにしたことも関係あるけどね。


 全人類がポイントを稼ぐことができて、来世も人間として生きる。以前の修羅の世界よりも遥かに良いのではなかろうか?


「家族とかも娘の中身が元おっさんだったり、好きな相手が前世では老婆だったりと、大変なことにならない?」


「確かに普通の精神ならそうなると思います。でも劇に殉じて、劇の世界に来た人たちはこの世界では永遠に死ぬまで演技をすることに躊躇いはないですよ。大御所先輩は嫌なんですか?」


「……そう言われると確かにそのとおりだ。たとえ中身がおっさんでも、恋人にも妻にもできるよ、なにせ私たちは役者だから」


「ほら、問題ないでしょう?」


 その笑顔には嘘はなく、本心からのものであると、カナタも笑うのであった。


「ぐぁァァァァっ、このヨグ・ソトースが定命の者に倒されるとは━━」


 断末魔の叫びが聞こえてきて、講堂が崩れ始める。どうやらヨグ・ソトースは負けた模様。


 どちらにしてもこの世界にもはや介入はできない。


「ハッピーエンドとはならなくても、ベターエンドとなったと言えないでしょうか?」


「次に転生させるのは脚本家を希望したいね」


 自由となった劇の世界。この先になにが待ち受けているかは誰も分からない。


 でも劇であるからこそ、人は一線を守るだろう。


 なぜならば映倫に引っかかるからである!


          ◇


 劇の世界。悪役として雇われた僕はこれからも長い間、この世界で役者を続けることとなる。


 その後、学長の逆襲や、魔物のスタンピード、様々な災害から起こる戦争。小さなことから大きなものまで、多数の事件を経験することとなる。


 でも死ぬ気は無かったため、長い間生きることとなった。


 なぜかというと、この世界こそ、演技力を高めるための訓練場として最高だからだ。


 次の世界にて、才能がないとか言われないように。三流役者で終わらないようにと僕は頑張るのであった。


「ねぇ、カナタさん? カナタさんの願いって結局なんだったんですか?」


「あ〜。それはね、あれだよあれ。自分の努力ではどうしようもないこと」


「なんです?」


「背丈。前の僕はチビだったの! 背丈だけは劇の世界では致命的なんだ。役者としての幅を狭めるから、背丈が欲しかったんだよ!」


 なにか悪い?


〜 おしまい 〜

新作『魔法科学を広めたい』を投稿してます。エセ科学で世界を革新していくお話です。よかったらお読みください。

※『黒幕幼女の異世界ゲーム』が9月30日にシーモア様から連載します。よかったらお読みください。

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― 新着の感想 ―
更新乙かり~ まさかオチが背丈だったのか・・・ てかその願いを叶えるポイント高くない?www
ありがとうございました。アースウィズダンジョンやコンハザやミーちゃんなどのように、ええっとびっくりする裏こそなかったものの、すごく面白かったし綺麗に終わって楽しかったです。またマモとロロと幼女の三点セ…
お疲れ様でした! いっそ極端に低ければ使いようもあったかもですが、平均より低くて際立った特徴もなければ役を取るのは難しかったのですかねぇ……(^_^;)
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