No.9 行き先
英国での任務を終え、シャトランスに帰って来た。
日常に戻り、安定した日々を過ごしていたのにも関わらず倦怠感が消えなかった。
「どうしたの、カンナ君?お腹空いた?アイス食べる?」
「ワットさん...下さい。1ガロン。今、無性に食べたくなりました!!」
「そうでなくちゃ。はい、どうぞ」
いただいたアイスを生徒会室で貪っていると、他の生徒会メンバーも入室し、勢揃いした。
「カンナ、そんなにアイスが好きだったの?そんなに食べたらお腹壊すわ。マヨネーズで中和しましょう!我ながらいい案だわ!」
「ヴァニラ、何がいい案だ。カンナは英国の件で疲れているんだ。今はそっとしておいてやれ」
「ラントユンカー殿、そう言わずとも良いではないか?カンナ殿、外国のアイスはカロリーが凄まじいでござるからな、そんなに食べたら太るでござるよ」
その言葉に「ハッ」とし、慌ててスプーンを止め、蓋を閉めた。
「うん...止める。ごめんなさい」
「やめてよ、カンナ君。僕が今後、アイスクリーム食べられなくなるでしょうが。そうそう、実はさ、皆んなに言っておきたい事があるんだ。冬休み、OBの人達に会いに行くからそのつもりで」
4人「...は?」
「ど、どう言う事ですか。ワットさん!?」
「どう言う事ってそのままの意味だよ。...正直言って、このまま不安要素がある中で学校生活を送りたくないしね。誰が味方で、誰が知っておかないとね」
「ワット、意味が良くわからないわ?何が言いたいの?」
「ヴァニラ君、君。隠し事してない?勘違いならいいんだけどさ、仲良いラトゥーシュカ君と2人揃って不審というか、変なのに絡まれてるでしょ?誰?あの子?一年生だよね」
「...ゴーリの事?同じロシア出身だし、仲良くなりたいってせがんでいるだけよ。それ以上の事は何もないわ。断っているもの」
確かに、1学期の初めにラトゥーシュカさんが大柄な男子生徒に絡まれていた。
...何と言ったらいいのだろうか?
一緒に居るはずなのに、その人の事が理解出来ていない。
もし、学園内や外にも母と協力する人がいるとしたら?
勘違いならそれで構わない。でも、分からないのが一番怖い。
決戦のその時までに敵、味方の判別は付けなければ...
「...あの、ヴァニラさんって誰の味方なんですか?それともう一つ、シュン君やヒデキチさんと一緒に《人工的な繰り上がり》をしてますよね?カードキー持っていませんか?」
その言葉に彼女はピクリと体を震わせる。
ビンゴだ。諦めたのか、ポケットからカードキーを見せてくる。
「理事長と校長から聞いたの?私達の事を...」
「1人、天然な子がいたのでペラペラと話してくれました。...ペルケレ先生は全ての責任を父に背負わせようとしていたそうです。母が生きかえってそれも帳消しになったようですけどね」
「父もそうよ。それどころか融資する全員がカンナのお父様に罪を擦りつけようとしてた。ここは都合が良いの。人身売買と一緒よ、兵器を売るように守護霊使いをここで量産して各国に送る。私も商品。貴方達と一緒」
「ヴァニラ君、君はロシアの味方なんでしょ?当たり前と言えばそうだけどさ、僕だって母国が危機に晒されたら助けに行くからねヒーローみたいに」
ヴァニラさんは何も悪くない。
自分から望んでこう言う事をしている訳ではない。
家族の為、国の為に動いているだけなのだ。
一番厄介なのは、利益、無利益に関係なく母の為に動いている人がいるかどうか?だ。
「成る程、そう言う事でござったか。しかし、理事長は罪人でござるよ。何年も前の事件で容疑者になった後、国外逃亡している。そうであろう?カンナ殿?兄上はそれを今でも追っている、尻尾を掴むのも時間の問題かと」
「パパはママを殺してない!!」
生徒会室に怒鳴り声が鳴り響いた。私のだ。
「おい、カンナ落ち着け。シュウマも状況を考えろ」
「すまぬ。しかし、それなら誰が殺したと?まぁ、いいでござるよ。ワット殿、家宅捜査は何処から行くでござるか?」
「うふふ、まずはヨーロッパ支部から行ってみよう!!」
No.9を読んでいただきありがとうございます。
次はNo.10「番犬と白鳥」をお送りします。