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白い結婚のまま、さようなら ~女好きな夫との離婚は決定事項です  作者: 白まゆら


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キラリ、断罪の始まりです

 王族の登場に静かに頭を垂れる貴族の間で、異母妹の「ジアス様ー」という声だけが響きます。

 流石に継母が異母妹の頭を押さえつけて下げさせましたが、異母妹はまだ「何よ、離してよ」と悪態をついています。

 陛下が目を細めてその姿を確認しますが、何も言わずに皆の頭を上げさせました。

「気楽にしてくれ。本日はよく集まってくれた。まずは乾杯といこう」

 各々にワインや果実水などが配られ、乾杯の合図が行われます。

「我がエイワード国の未来を祝して、乾杯」

「乾杯!」

 ワッと喝采が起きました。

 一気にワインを煽る者や口だけをつける者など、それぞれです。

 そうして落ち着いた頃を見計らって、陛下が声を上げます。


「本日は皆に紹介したい者がいる。先日、無事に成人を迎えマルシアス侯爵を継いだ娘、クレイン・マルシアス侯爵だ」

 側にいたお姉様やご婦人方が一斉に場所をあけて、陛下の前まで行く道を私に作ってくれます。

 サッとジアス様がエスコートの手を差し伸べてくれて、二人で陛下の元まで歩きます。

 陛下の側には初めてお会いする王妃も微笑んでいて、先程まで一緒だった王太子と王太子妃もいらっしゃいます。

 途中、視界の端に目を剥く元家族の姿が見えましたが、無視です、無視。


 ジアス様と共に陛下へと頭を垂れます。

「両名とも面を上げよ」

 陛下の凛とした声が会場中に響きます。

 私とジアス様が顔を上げると陛下は微笑み、優しく言葉をかけてくださいました。

「貴殿の帰り嬉しく思うぞ」

「光栄でございます、陛下」

 会場内からホウッという熱い溜息が聞こえます。

「なんて麗しい……」

「ジアス様と並んでも遜色ない美しさね」

 ジアス様の好感度も相まって、今のところ悪感情はないように思います。


 そこで陛下が皆に伝えます。

「皆も知っているであろう。彼女は国のため王命により、十歳の年にサビティ国の王太子の元に嫁いだ。しかし度重なる王太子の裏切りに、両国総意の元、成人前に離婚が成立した。そしてかの国の王太子は、数々の悪行によりこの度、廃嫡が決定された。これによって我が国は賠償金などは問わない事とした。くれぐれも言っておくが、クレイン・マルシアス侯爵には一切の非はない。よって戻った彼女には、その正統なる血筋の元、マルシアス侯爵を継承する事とした。これは王命である」

 権威ある声に一瞬、会場内は静寂に包まれましたが、すぐにワッと歓声が上がりました。


「おめでとう」という声や「お帰りなさい」という声に、顔が緩みます。

 隣にいるジアス様に視線を向けますと、とても柔らかい眼差しで見つめてくれていました。

 ずっと私の様子を気にしてくださっていたのでしょう。

 ニコリと笑うと、同じように笑みを返してくださいます。

 ああ、これほど好意的に受け入れてくださるとは思ってもいませんでした。

 もちろん、これはひとえに陛下をはじめとした王族の皆様やご婦人方。そして何よりヘイネス公爵とジアス様のお陰です。


 嬉し涙を零しそうになったその時、場違いな濁声が響きました。

「お待ちください、陛下。私はそのような話、承諾しておりません。娘が帰って来ている事さえ知らなかったのです。いきなり侯爵位を引き渡されても困ります。その娘に、他国の王太子妃として甘えた生活を送っていた娘に、侯爵として長年やってきた私の仕事が勤まるとは思えません」

 お父様が陛下の前に転げ出ると、青い顔をして訴えます。

 あら、貴方がいつ侯爵のお仕事をしたのかしら?

 言ってもいいかしらとムズムズする私に、ジアス様がもう少し待ってねと苦笑します。

 まあ、あちらの言い分も少しくらいは聞いておかないといけませんしね。そこでボロを出してくれたら、やりやすいのですけれど。


 陛下は目を細めてお父様に視線を送ると、つまらなさそうに返答しました。

「貴殿に承諾を得る必要があるか? 親であるなら、いくら他国といえども密に連絡を取り合って、情報を得ているのが普通だろう。それにマルシアス侯爵家の正当な血筋は彼女だけだ。貴殿はあくまで彼女が成人するまでの後見人で仮の侯爵であったにすぎない。マルシアス侯爵が戻って来たのなら彼女が継ぐのは当然ではないか」

「しかし、先程も申しましたが娘はずっと他国に嫁いでいたのです。いくら成人したとはいえ侯爵の仕事も分からないのに、いきなり押し付けるのは酷というもの。娘が慣れるまで私に任せていただけませんか?」

「貴殿は王太子妃という立場を馬鹿にしているのか?」

「へ?」

 ジロリと睨みつけてくる陛下と王妃に、お父様は素っ頓狂な声を上げました。


「他国ではあるが、彼女は立派に王太子妃としての仕事をこなしていたと聞く。成人前の娘が王太子妃としての評価を得ていたのだ。それ相応の能力の持ち主と見るのが当然だろう。そのような者が突然、侯爵の仕事を押し付けられたからといって困ると思うか? それに彼女は、マルシアス侯爵家の内情をよく知っている。新情報も得ているようだ」

「なっ、何故そんな事を? まさか、使用人が情報を漏らしたのか? 屋敷の情報を漏らすなど使用人にあるまじき行いだ。一体それは誰だ? クレイン、答えろ! 即、解雇にしてやる!」

 唾を飛ばして怒鳴るお父様は、やっと私に視線を向けました。

 六年ぶりに会った娘にたいして第一声がそれですか……。呆れて言葉も出ませんね。


 使用人の問題にすり替えて裏切り者と喚くお父様に、呆れた陛下の代わりに王太子が前に出ます。

「そんな事はどうでもいい。それにその者は、正当な侯爵に情報を伝えただけで何の問題もない。解雇理由にはならないな」

「雇用主は私です。私が侯爵で主だ!」

「いや、未成年なので侯爵を継いではいなかったが雇用主はずっとクレイン嬢だ。貴殿は侯爵であるにもかかわらず、書類に判を押した記憶はあるのか?」

「へ?」

 そこで王太子が反対にお父様に問います。

 仮とはいえ侯爵であったお父様が、領地の大事な案件の決定書類に判を押していたのか問うているのです。

 遊び惚けてばかりいるお父様には、寝耳に水の話でしょう。


 侯爵の仕事はオーガとマリッサが行っていましたが、やはり大事な案件には主である侯爵の判を押さなければいけません。

 お父様のように後見人か、侯爵家の血筋を引き継ぐ者しか押せない判なのです。

 使用人が勝手に押していい物ではありません。下手をすれば捕まってしまいます。

 それなのにお母様が亡くなってから十一年もの間、誰がそれを行っていたと思っているのでしょう。

 そんなの私しかいませんよね。

 意味が分からないながらもオーガとマリッサに優しく教えてもらいながら、サビティ国に嫁いだ後も、書類を送ってもらいずっと私が行ってきたのです。

 王太子妃の仕事は重要な物意外でしたが、それなりに数はありました。

 それと同時にオーガが見繕ってくれていたとしても侯爵家の書類もこなしていたのですから、私が忙しかった理由がここにあるというものです。

 元夫や愛人に構っている暇など、本当になかったのです。


 それを王太子もご存知だからこその質問なのですが、お父様には分からないようですね。

 その様子に貴族が眉を顰めます。

「あいつは本当に侯爵として仕事をしていたのか?」と疑問の声が上がります。

 ざわつく会場に身を縮こませるお父様。

 それを見ていた継母が、お父様の横に並びます。

「私から申し上げますわ。彼は侯爵として領地の視察や領民の声を聞く事を中心にしていたのです。書類の判押しなど、そんな些末な事は家令に任せていました。それの何が悪いのでしょう。どこの貴族も行っている事ではありませんか⁉」


 継母の発言……というよりは衣装に、会場中が眉を顰めます。

 彼女は、クラウディア様に負けないほど露出したドレスに身を包んでいたのです。

 いくら瘦せ細って骨と皮だけだったとしても、流石にその露出はいただけません。

 我が国はサビティ国ほど鷹揚な感性はございません。

 必要以上に肌をさらけ出すドレスは、反感を買ってしまうのです。


 華美な衣装に身を包み、並んで王族に文句を言う夫婦に、貴族たちは呆れた溜息を吐きます。

 そんな中、飛び出してきたのは異母妹です。

 ですが彼女が飛び出してきた場所は両親の元ではなく、王族の方でした。

 彼女の眼には、一緒に居る私とジアス様を捕えています。

 血走った眼を私にひたと向けていたのです。

 背筋がゾッとして思わずジアス様に抱き着きました。

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