003 幸せをかみしめて ~ユルシュル・シュミット子爵令嬢side~
告白後のユルシュルの動向です。
恋バナって楽しいですよねぇ!
ユルシュルは、ステファンからの告白に了承した。
殿下は、卒業パーティーまでの半年と言っていが、彼が罪悪感から今すぐ【嘘】だと訂正してしまわないように別れの挨拶を優雅にとり、ステファンが呆然としている間に席を立って逃げるように馬車寄せに向った。
しかし、常に図書館の手伝いをして帰宅時間ギリギリに帰るユルシュルの迎えが来ていない事に馬車止めに着いて気が付いた。かなり浮かれている自分に苦笑しつつ、図書館へ戻るべきか、待合のベンチで本でも読みながら馬車を待つかと思案してると、肩をぽんぽんと叩かれた。
「シェル?図書館は?」
耳慣れた声に頬がゆるむ。振り返るとそこには、二年次から同じクラスになった男爵令嬢オデット・レノーが不思議そうに深い紫の瞳でユルシュルを見ていた。
「少し用事が出来て、今日は図書館のお手伝いはお休みしたの。オデットはこの時間までどうしたの?」
ユルシュルが聞き返すと、オデットは深い緑の豊かな髪の上部をユルシュルに見せるように頭を傾けた。そこには、美しい蝶をかたどった銀細工の髪飾りが今にも羽ばたきそうに鎮座している。オデットは髪飾りを少し手で触れながらにこやかに答える。
「ふふっ。他のクラスの方たちがこの髪飾りが気になったようでお声がけ頂いたの。少し話をしていたら遅くなってしまったわ」
楽しそうなオデットの話を聞いていたら、御者はすでに一刻ほど待っているという。慌てて先を促すがユルシュルが馬車止めから動かない様子をみてオデットは尋ねる。
「シェルは、何故馬車を呼びに行かせないの?」
馬車止めから馬車の待機場所へは、学園の使用人に声をかけて呼びにいってもらう。使用人部屋にも行かないユルシュルをオデットは不思議に思って声をかけたのだといった。
「いつもと違う時間に来てしまったので、家の馬車がまだ来ていないのよ。後一刻ほどで来るから本でも読んでまっているわ」
「じゃあ、私の馬車で送るわ!20分ほどで着くんですもの!入れ違いになる事もないじゃない?」
一度は断るが、是非話を聞いてほしいのよ。と言われると断れず、レノー家の馬車へと同乗する。レノー家は男爵家であるが、商会を持ち手広く商売をしており裕福な家になる。落ち着いた外装とは一転して、豪華な内装の馬車に感嘆の息を漏らす。今日は、色々いい日だなとウキウキした気持ちで乗せて貰った。
馬車をユルシュルの今の住いである叔母の家に向けると。商売の話を一通り捲し立てたオデットは一息つくとふと思い出したようにユルシュルに質問してきた。
「ねぇ?シェルは何で図書館をお休みしたの?用事って何があったの?」
ユルシュルは暫し悩んだ。ステファンの告白は【嘘】である。きっと、この関係は秘密という事だろうと思う。でも、恋人としての時間はあるのだろうか?卒業までオデットに内緒にする事は出来ないと思うししたくない。
田舎の子爵領から単身で王都に上都した。独身のまま女医になり王宮に勤める父の妹である叔母の家に身を寄せて貰っているが、進学する為に初めて帝都に出てきたので叔母以外に知り合いも誰もいない。
1年生の時は帝都や学園生活、勉強に必死でずっと独りで過ごしていた。2年に上がり同じ講義でよく会うオデットが話しかけてくれ仲良くなった。初めてできた友達。
卒業するとオデットは商会を手伝い王都で過ごし、ユルシュルは皇女様付の侍女として王宮又は皇女様の嫁ぎ先次第では他国へ渡る可能性もある。疎遠になってしまうかもしれないがいい関係をずっと続けていきたい大切な友達だと思っている。
【恋人】になることは言おう。秘密にしてもらおう。トリュフォー侯爵子息がどうお付き合いするつもりなのか分からないと思いつつオデットに説明を始める。
でも【嘘】の事は言えない。オデットは怒ってしまう。心配させてしまう。私の我儘でお付き合いするのにトリュフォー侯爵子息にご迷惑をかけるわけにはいけないわ。
「ねぇ、オデット。私が秘密にほしい事を誰にも絶対言わないって出来る?」
「え?何言ってるの?商売人は情報と信用が大切なのよ!情報が命だし、情報を得るには信用してもらわないといけないのよ!私が親友の!シェルの秘密を誰かに言うなんて!ありえないわ!」
ぷんぷんと怒っているオデットは可愛いわ。と気を逸らしているとオリーブ色の深い緑の瞳が心配そうにユルシュルを覗き込んだ。
「ねぇ。大変な秘密なの?シェルは大丈夫なの?」
「ふふっごめんなさい。大丈夫よ。秘密なのか、そうじゃないのか。わからないの」
「どういう事?」
「あのね。私、ある殿方から告白をされたの」
「え?えっ?きゃー!」
ステファン・トリュフォー侯爵子息から告白されて、嬉しくて返事をしてそのまま帰って来てしまったと話した。オデットは興奮して両の手を繋ぎぶんぶんとふりながら喜んでおめでとうと言ってくれてた。
侯爵子息にしては見る目があるな。とは言う。だけど、今後について何も話をせずに帰って来てしまったので、お付き合いする事を公表していいのか分からない事をオデットに告げる。
「そうなの?でも、ガゼボを飾ってお茶とお菓子まで準備して告白してきたんでしょう?どう考えても本気じゃない!何で、内緒にする必要があるのよ!」
「でも、彼は侯爵子息だもの。私は片田舎の子爵令嬢よ。身分差があるわ」
オデットは眉間にきゅっと皺を寄せる。
「そう?彼、侯爵子息って言っても三男だし皇宮勤務じゃない?シェルは子爵令嬢って言ってもあの第三皇女に認められて皇女付の侍女として皇宮にあがるのよ?つり合いが取れてない様にはみえないんだけど?」
「どうかしら?彼はオクタヴィアン第五皇子に侍っているから。卒業後の事はわからないわ」
「え?卒業後は別れるつもりで告白してきたの?」
「ごめんなさい。分からないの。逃げて来ちゃったから・・・」
「あぁ。いいのよ。シェルびっくりしたんだもんね!・・・・嬉しかった?」
「えぇ。ずっと憧れていたから」
「やぁ~乙女ぇ~」
無表情と言われているユルシュルではあった。けれど、憧れていたと頬を染めるユルシュルはオデットが見たことないほど可愛くてオデットは心を打ちぬかれた。
「任せてユルシュル!デートとか!デートとか!デートとか!行くときは私がとびっきり可愛くしてあげるからね!私に任せて!」
読んで頂きありがとうございます。
ユルシュル・シュミット子爵令嬢(16)今年で卒業で成人
髪型:ストレートロング一つ三つ編み 髪色:シアン 瞳:スカイグレイ
オデット・レノー男爵令嬢(16)
髪型:くせ毛ロング・ハーフアップ 髪色:ラズベリー 瞳:オリーブ




