ep13 人を生かす神
お久しぶりです、YUKIです。
ただいま絶賛テスト期間中ですが更新させていただきます。
来週からも忙しいと思いますが、頑張っていきますのでよろしくお願いします!
橘「あれは私が死んでから40日目の日・・・
そのころには前と同じように笑顔で生活するようになっていました。
いつも通り学校で勉強し、友達と遊び、家に帰る・・・その時でした。
工事現場の傍をあかりちゃんが通ろうとしたとき上から鉄骨が落ちてきたんです。
私は必死に声を上げました。
しかし、あかりちゃんに届くはずもありませんでした。
もうダメかと思ったその時、工事現場の人の叫び声であかりちゃんは鉄骨に気づき
何とかそれを避けました。
幸いにもあかりちゃんは軽い捻挫で済みました。
わたしもホッとしました・・・”その時は”。」
青葉「”その時は”・・・?どういうことだ?」
橘「四十九日までの残りの9日間であかりちゃんは3回も危険な目に遭いました。
しかも、いずれも死の危険があるほどの・・・。
居眠り運転をしている車にはねられそうになったり、
踏み切りの不備で電車にひかれそうになったり・・・。
明らかに何かがおかしい。そう思った私は四十九日の後、神様に尋ねました。
あかりちゃんにいったい何が起こっているのか。
それともただの偶然なのか。
できれば偶然であってほしかった。
でも・・・神様から聞いた答えはあまりにも哀しいものでした・・・。」
青葉と綾川はごくりとつばを飲み込んだ。
橘「特別に強い思いをもったものは不思議な力がある。
何を言ってるんだと思われるかもしれませんが、これも真実です。
だからこそ”死神”や生神”が存在するのですから。
あかりちゃんも人の何倍も強い思いをもつ人間だったんです。
あかりちゃんがもっていた思いは・・・過剰なほどの”罪悪感”でした。」
青葉「過剰な”罪悪感”?」
橘「はい。あかりちゃんは前と変わりなく
生活している・・・ように見えるだけだったんです。
あかりちゃんの笑顔はただの作り笑いだったんです。
私は誰よりもあかりちゃんの傍にいたはずなのにそれに気づかなかった。
あかりちゃんにとって私を救えなかったことは、大きな大きな罪だったんです。
ずっと一緒にいる・・・あの言葉を守れなかったことを強く悔やんでいました。
いなくなったのは私だったのに・・・。
あかりちゃんとの約束を守れなかったのは・・・
あかりちゃんの思いを裏切ったのはわたしだったのにっ・・・!」
橘はこらえきれなくなった涙を流した。
あまりにも切ない涙だった。
橘「その”罪悪感”が持っていたのは”死を呼ぶ力”。
生きていかなくちゃいけない。周りに迷惑をかけてはいけないと思いながら
あかりちゃんは心の中で無意識にずっと死を求め続けていたんです。」
綾川「ちょ、ちょっと待って!」
これまでずっと口を閉ざしていた綾川が不意に声を上げた。
綾川「本人も無意識のうちに死を呼び寄せる?いくらなんでもそんなこと・・・。」
橘「ありえます。」橘は断言した。
橘「あなたも私も強い思いによってここにいる。
普通はこれもありえないはずです。
でも、現実に起こっている。
人が持つ思いは常識にはあてはまらない。違いますか?」
綾川「っ!!」
綾川は何も言い返せないようだった。
青葉「・・・岡崎に”死を呼ぶ力”があるとする。
それならいまだに岡崎が生きてるってことは・・・。」
橘「お察しの通り私はあかりちゃんを守るために生神・・・
”人を生かす神”になりました。
生神には死神とは違ったルールがあります。
生神のルールについてお話してもよろしいですか?」
青葉「ああ。続けてくれ。」
橘「まず、生神には死神のように修行が必要ではありません。
常識を遥かに超えた強い思いを持っていれば誰にでもなれます。
そして無の世界に連れて行かれる事もありません。
普通の死者と同じ扱いになります。
そのかわり死神ほど強い力を持っているわけでもありません。
死神は、例えどんな相手でもどんな状況でも人に死をもたらすことが出来ます。
でも生神にそれは出来ない。
末期がんなどの重い病気。憎しみを伴った殺人。
これらによる死を止めることは出来ません。
そしてもう1つ。生神は自分が生かしたいと思う人に会うことは絶対に出来ません。
勿論声も届きません。あかりちゃんからは私が見えないし、
私の声は聞こえませんから。
そして、これがあなたへの頼みに関係していることです。」
青葉「なるほどな。それで、頼みってのは何だ?」
橘「あかりちゃんを・・・救って欲しいんです。」
青葉「岡崎を救う・・・?」
青葉は意味が分からなかった。
橘「私は何度もあかりちゃんを死の危険から救ってきました。
だけど、少しずつあかりちゃんに迫る死の影は濃くなっていって・・・。
もう私でも守るのが限界に近づいてきています。
だから、あなたに救ってほしいんです。気づかせて欲しいんです。
あかりちゃんが”罪悪感”を持つ必要なんて無いって。」
青葉「・・・知り合ってほんの数日の俺がか?相手を間違えてるんじゃないか?」
橘「・・・気づいてないんですか?あんなに露骨なのに。」
青葉「は?」
橘「あかりちゃんはあなたのこと・・・いえ、やめておきます。
これは私が言うべきことじゃないと思いますから。」
青葉「?」
橘は微笑を浮かべてはぐらかすことにした。
橘「とにかく、あかりちゃんを助けてくれませんか?」
青葉「・・・断る。」
綾川・橘「「え?」」
まさか断られることは思っていなかった橘は驚きの声を上げた。
横で話を聞いてた綾川も同様だった。
橘「どうして?」
青葉「それは俺が口を出すことでもないだろ。
たとえ無意識だったしても、それがあいつの選んだ運命じゃないのか?」
橘「そんな・・・。あかりちゃんが望んでああなったわけじゃないんですよ?」
青葉「・・・・・・それに、俺に人を救う資格なんか無い。
俺は・・・人に関わることをやめたんだ。」
橘「青葉さん・・・。」
青葉「悪いな。帰ってくれ。」
青葉は淡々と言葉を続けた。
橘「・・・私は信じています。あの日あなたがあかりちゃんを助けたように、
今度もあなたが救ってくれることを。」
最後に橘が言ったこの言葉に青葉は答えることが出来なかった-------
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