表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生? ステータスなし! 〜山奥に捨てられたニート、現実逃避のサバイバル〜  作者: あずきまんま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/4

第4章:〜突きつけられた棄ての真相〜

救助ヘリで運ばれ、麓の病院で一通りの検査を受けた後、タツヤは警察署の一室へと案内された。


怪我は足の裏の軽い切り傷と全身の擦り傷程度。命に別条はなかった。


パイプ椅子に腰掛け、温かいお茶(タツヤ視点では『聖なるエリクサー』)を啜っていると、部屋の扉が冷ややかに開いた。



「……まったく、何ですぐに見つかるのよ」



入ってきたのは、不機嫌そのものの表情を浮かべた母親と、気まずそうに目を逸らす父親だった。


タツヤは目を丸くした。



(なっ……バカな!? なぜ俺の親父とオフクロがこの異世界の王都警察ギルドに……!? まさか、俺を追って時空の歪みを越えてきたとでもいうのか!?)



タツヤはガバッと立ち上がり、大袈裟に両手を広げた。



「親父! 袋! お前たちもこの世界へ召喚されたのか!? だが安心してくれ、俺はすでに『アーマード・ボア』を打倒し、聖騎士団の保護を受けるまでに成り上がった! これからは俺が二人を養ってやるから——」



「いい加減にしなさい!!」



母親の怒号が取調室に響き渡った。


今まで見たこともないような、冷酷で冷め切った視線がタツヤを突き刺す。



「何が聖騎士団よ! 何が成り上がりよ! あんた、自分がどうして山の中にいたのか本当に分かってないの!?」



「え? だから……昨晩寝ている間に異世界転移の時空洞が開いて……」



父親が溜め息をつき、首を振りながら吐き捨てるように言った。



「……お前を捨てたんだよ。タツヤ」



「……は?」



タツヤの思考がフリーズした。



「お前はもう25歳だ。働きもしない、家事もしない、毎日部屋でゲームとアニメばかりで、注意すれば逆切れする。これ以上、お前みたいな穀潰しを養えるわけがないだろう!」



母親も腕を組み、冷ややかに言葉を重ねる。



「昨日の夜、あんたが泥のように眠りこけてる隙にね、二人で車に乗せてあの山奥に置いてきたのよ! 携帯も取り上げてね! もう二度と家に帰ってこられないように、自力でどこかで野垂れ死ぬか、更生して勝手に生きろと思って捨てたの!」



「……っ!?」



警察官が「まあまあ、お母さんたちも言葉が行き過ぎていますが……」と間に入ろうとするが、両親の殺気立った態度に気圧されている。



冷酷すぎる現実の真相が、怒涛の勢いでタツヤの脳内に叩きつけられた。



異世界転移ではなかった。


トラックにも跳ねられていなければ、神様にも召喚されていない。


単に、実の両親から「役立たずの穀潰し」として見捨てられ、真夜中の山奥にポイ捨てされただけだったのだ。


自分が「薬草」だと思って毟ったのはただの雑草オオバコ


「魔獣」だと思って命がけで逃げ回ったのはただのイノシシ。


「NPC」だと思って絡んだのは、警察に通報してくれた親切なトレッキング客。


「聖騎士団」だと思って威張っていたのは、親から捨てられた哀れなニートを救助しに来てくれた警察と山岳救助隊。



すべての謎が、あまりにも悲惨な形で完璧につじつまが合ってしまった。



静まり返る警察署の室内に、両親の冷たい声が響く。



「警察から連絡が来たときは耳を疑ったわよ。たった半日で保護された上に、警察署で支離滅裂な妄想を叫んでるって。……本当に恥ずかしい。家には絶対に入れないからね。身元引受の書類は書くけど、あんたは今日から自立しなさい」



普通なら、ここで絶望し、立ち直れないほどのショックを受ける場面である。


実の親から捨てられ、社会からも見放された、正真正銘のどん底。



しかし——



タツヤの肩が、ヒクヒクと震え始めた。



「……ふ」



「なによ。反省の欠片もないわけ?」



タツヤはゆっくりと顔を上げた。


その瞳には、絶望の影など微塵もなかった。


それどころか、怪しいほどに爛爛と輝く不屈の光(極限の現実逃避)が宿っていた。



「ふふふ……ハハハハハッ!! あはははははッ!!」



高らかに笑い出すタツヤに、両親も警察官もドン引きして後ずさりした。



「な、何笑ってるのよ……気味悪いわね……!」



タツヤはビシッと、目の前の両親を指差した。



「甘い……甘いぞッ! 俺の脳内データベースを舐めるなよ!」



「はあ!?」



「フッ……なるほどね。よく出来たシナリオだ! 『実は親に捨てられただけでした』という絶望を叩きつけ、主人公の精神を崩壊させようとする……これこそが、この異世界が仕掛けた【精神汚染系トラップ】だな!?」



「……は?」



両親が呆れ果てて口を開ぐ。



「目の前にいる二人も、本物の親ではない! 俺のトラウマを具現化した偽物の擬態モンスター(ドッペルゲンガー)だ! だからそんな冷たいことを言うんだろ!? だって俺の親が、実の息子を山に捨てるなんて鬼畜な真似をするはずがないからなッ!!」



「本当に捨てたんだよバカ息子ぉぉぉぉッ!!」



母親の血管が切れそうな叫びが警察署に轟いた。


だが、タツヤはまったく耳を貸さない。胸を張り、不敵な笑みを浮かべて堂々と宣言した。



「よし分かった! 家を追い出され、身一つで放り出される『追放系スタート』というわけだな! 上等だ! これより俺の『無一文からの成り上がり異世界生活』第二章を開幕する!」



「だからここが現実の日本だって言ってるでしょうがぁぁぁッ!!」



「警察官どの! 俺に最も過酷な『労働ダンジョン(日払いバイト)』の斡旋を頼む! 稼いだ銅貨で『伝説の拠点(家賃3万円のアパート)』を借りて見せるぜ!」



「会話にならん! こいつもうダメだ!!」



両親は頭を抱えて崩れ落ちた。



実の親に山へ捨てられようとも、冷酷な現実を突きつけられようとも、己の都合の良い勘違いと無敵の現実逃避で全てを跳ね返していく男・山田タツヤ。


彼の『現実という名のハードモード異世界サバイバル』は、今日ここから、新たなる伝説(と極貧生活)の幕を開けるのであった。



(完)


お読みいただきありがとうございました!


面白かったらぜひ【ブックマーク】とページ下の【★★★★★評価】で応援よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ