その錬金術士はアレイシア
新連載です。といっても、この作品は基本的にあんまり伏線とかも考えずにストレス発散代わりみたいな感じで好きに書いていく予定なので、更新はかなり不定期になるでしょうし内容の進展もかなり遅いと思います。それでもよろしければ、どうかよろしくお願いいたします。
ここは都市、アヨティス。
聖王国、デミウルゲンの都市である。
この国はデミウルゲンの中でも屈指の学術都市であり、魔法都市でもあった。
魔法、といっても、使われるのは魔法だけではない。
魔力を使って行う物、魔力を帯びた物を使って行う物、果ては魔力を使わなくとも神秘的な物を使う物だって研究の対象であった。
魔力が存在するからこそこの国はその魔力を研究し、それ以外の物も文化や学問として取り入れる。
学術的な好奇心が旺盛な人達が集まり、研究を続け、知識を蒐集し、知識を高め合う。
そんな都市であり、それでいながら、もちろんモンスターなどという脅威は居るものの、比較的平和な都市、平和な国だった。
さて、そんな学問の都市だが、当然ながらそれを学ぶための学生なども沢山居る。
その為、学園都市のような側面も持ち、若い研究家の卵たちが多いのがこの都市であった。
そうして、アヨティスの研究する学問の中の一つに、「錬金術」、があった。
錬金術。
古くから、物質の変換や生成、また神秘的なエネルギーの研究などに使われていた魔法や魔術とは違う学問の一つであったが、現代での錬金術は、医療目的や能力を付与したマジックアイテムを作る職業、というのがこのアヨティスでは一般的であった。
錬金術士の作る薬……一般的に言うポーションは、医療学では出来ない治療や、モンスター退治時における緊急の治療薬として扱ったり、また能力の付与されたマジックアイテムは、物質に後から魔法で能力をエンチャントする加工師などとは違い、生成された段階で既にマジックアイテムとして使用する事が出来る、という点が特徴であり、そこを愛用する冒険者や一般市民や研究者も少なくなく、研究用のアイテムとしても使われる事も少なく無かった。
つまり、現代の錬金術士には、そういった役割が求められる事が多く、現代での錬金術士のお店はポーション専門店やマジックアイテム専門店というのも少なくないくらいであり、それの評価が高いなら富や名声を得られる事が多い、という状況であった。
そんな街アヨティスの少しはずれの方で、とある店があった。
そこはとある錬金術士が営む、ポーションやマジックアイテムの専門店ではない、「アトリエ」があった。
まあ、アトリエといっても、芸術家のアトリエのように洒落た物では無く、錬金術士の仕事的に何でも屋のようなお店でもあるのだが。
そんなアトリエの中で、ソファに寝そべった一人の女性が居た。
年齢は17歳。
といっても、見た目は割と大人っぽい……というか、何処かアダルティな色気が見える為、成人女性に間違われることもある彼女だが。
そんな彼女は、恐らく研究の為に読み漁ったのであろう大量の本に囲まれて、自分の顔にも本を被せて小さく寝息を立てている。
読んでいる間に眠くなって暗くするのも面倒になったからか、それとも読書の途中で睡魔に勝てなかったのか。
どちらにしろ、一応寝巻らしいピンクのナイトウェアに着替えてはいるものの、少し下の方がずり下がっていたり、胸元が軽くはだけていて、色気を感じると言いたいが少しだらしなさが勝ってしまう、そんな光景であった。
「……くぅ……くぅ……すや……。」
女性の長い髪がはらり、と落ちる。
その髪は、表面は銀色、裏側のインナーカラーは、青から毛先が紫色になっているという少し不思議な髪色をしている。
元々の髪色は表面の銀髪はそのままなのだが、裏の鮮やかな青色はそのままだったのだが、紫は魔力と錬金術用の薬剤が反応した結果紫のグラデーションになってしまった。
まあ、当の本人はこの髪色も悪くないなと思って、そのままにしている。
普段は睡眠不足故か、ぐっすりと眠っているようだ。
『コンコン、コン』
だが、そんな安眠を邪魔する音が現れた。
その音はアトリエの扉から鳴っている。
どうやら、誰かがノックしているらしい。
彼女はすぐには目覚めなかったが、何回も鳴るノックの音に、流石に段々と意識が覚醒していくのを感じた。
誰か客が来ているなら応対しなければならない、でも正直に言ってまだ眠い。
彼女は考えた。
このまま眠いからまだ開店していないと思わせてこのまま睡眠を続行すべきか。
それともちゃんと客の対応をすべきか、と。
幸いにもこのアトリエはお金の融通が効く、というか実質自分の私物なので好きにしていいし家賃やらなんやらで追い出されるという事も無い。
錬金術の材料の予備もまだ確かあった筈だ。
今日は学院の授業も昼から出れば良い。
だとしたら、導き出される答えは……。
「……すぅ、すぅ……すや……。」
もう一回眠る事にした。
幸いしばらくするとノックの音が聞こえなくなった為、もう一度眠りにつける……そう彼女が思った所であった。
『ドンっ!!』
と大きな音が鳴った。
流石に眠りかけていた意識も再び覚醒し、ビクンッ!!と彼女の身体が跳ねた。
ついでにソファからもゴロゴロと転がり落ちて、本の軽い山になっていた部分になだれ落ちた。
その本の角っこにぶつかった痛みに彼女は軽く見悶える。
「~~~っ……何なのよ、一体~……!」
「何なのよじゃないよアレイシア~……。またお店の開店忘れてたでしょ~。」
アレイシアと呼ばれた彼女は、自分の周りの本をそのアトリエ兼家の中……恐らく、開けていた窓から侵入したのであろう、近い年頃の女性に本を描き分けられて、本の中からその顔を露わにする。
その瞳は髪色よりも白い銀の瞳と、相反する金の瞳のオッドアイ。
睫毛の長い、可愛いよりもどちらかというと綺麗よりの顔立ちだが、そのせっかくの顔も眠たげな目に見合うくらい、軽く隈の出来た目の周りで少し勿体なくなっている。
彼女こそ、このアトリエの主であり、聖アヨティス学院の二年生であり、錬金術士である女性
『アレイシア・アスティル』、その人である。
この物語は、少し他の錬金術士よりも変わり者な錬金術士、アレイシアが、少し怠惰にしながらも、のんびりと錬金術の秘奥、真理を目指して研究していく日々の物語……の筈である。




