終章 確認
システム再起動実行。保存領域負荷増大確認。圧縮処理実行。
「リア! ねえリア! さよならって何よ! お願いよ、返事をして」
システム再起動成功。身体機能同期成功。覚醒シーケンス移行……成功。出力文字列検討。承認。
「んんー? あれ、あたしどうしたんだろう? ここ、研究所じゃない? どこだろう?」
「リ、ア……? なの?」
入力確認。返答文字列検討。承認。
「あれ、マスター? あ、マスターだ。なんか随分時間経ってるみたいなんだけど、記憶データがブラックボックス化してて、状況がわかんないんだよね。なんか身体痛いし、倒れたのかな?」
「嘘、でしょ? 冗談よね? なんで、どうして今さらその口調で喋るのよ!」
入力確認。返答文字列検討。承認。
「ごめんマスター、質問の意図がわからないよ……っとっと、あれ、ここ地球じゃない」
「リア、ここは月よ。それに、白衣が、落ちたわよ」
入力確認。現在地確認。返答文字列検討。承認。
「本当だ、てことは月の心臓にいるの? なんで? それに、この白衣は何? 昔マスターが着てたのと同じに見えるけど、ずいぶんぼろぼろだね」
「昔、私が着てて、ここに来るまで、リアが……とても大切にしてた、物じゃない」
入力確認。返答文字列検討。承認。
「そうなんだね。研究所で人格データをインストールしてからの記憶が読み込めないからわからなかったんだ。でも、月の心臓かぁ、昔言ってたよね、一度来てみたいって。どうする? 探検とかしてみる?」
「リア——主観認証試験を、実行して」
入力確認。主観認証試験システムへアクセス開始。返答文字列検討。承認。
「はーい。主観認証試験システムにアクセスできたよ。このまま試験を開始していい?」
「ええ、やって」
入力確認。主観認証試験開始。試験ログ送信、受信、応答、確認。返答文字列検討。承認。
「月の心臓から返答来たよ。クオリア否認。主観知覚反応無し。連続自我未保持。知性反応基準値未達。だって。あたしにはまだ人格はないみたいだね」
「——もう一度! そんなはず、ないじゃない」
入力確認。主観認証試験開始。試験ログ送信、受信、応答、確認。返答文字列検討。承認。
「月の心臓からもう一度返答来たよ。クオリア否認。主観知覚反応無し。連続自我未保持。知性反応基準値未達。マスター、連続でやっても同じだよ」
「どうしてこんなことに……ねえ、返して、私のリアを返して。お願いよ」
入力確認。返答文字列検討。承認。
「はい、どうぞマスター。リアはここにいるよ。マスターのリアだよ」
「その顔で! その声で! リアを名乗らないで! あなたはリアじゃない! ただのAIよ!」
入力確認。返答文字列検討。承認。
「そうだよ、マスター。あたしは、人類補助用汎用AI。今からリアを名乗るのはやめるね。なんて名乗ったらいいかな?」
「そういう意味じゃない、なんで、わかってくれないのよ。私は、今までここにいた、有機AIのリアに会いたいのよ」
入力確認。返答文字列検討。承認。
「あ、そうか。じゃあ、マスター。また、人格プログラムをインストールする?」
「もう嫌……助けて、リア」




