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悪魔の棲む塔

【用意する物】

六面体のサイコロが必要です。堅めの紙でサイコロを自作するのもいいでしょう。

無ければ鉛筆の側面に数を割り振るか、紙に円を書いて6までの数字を配分し物を落とす等して、ランダムで数を出して下さい。

用意するのが面倒なら想像して好きに進むのもいいでしょう。

尚、用意はしたくないがどうしてもサイコロでやりたいという方。

そんな方はこちらのサイト様のWebサイコロを利用してみて下さい。

http://mpnets.net/dice/index.cgi?set=1


【ルール】

指定された数字に沿って進んで下さい。順に読んでも話は繋がりません。

死んだら1からやり直しです。

作中では少しのメモが推奨される場面があります。記憶力がよければ問題ないですが、なるだけメモを取りながら読み進める事を推奨します。





〔1〕

 その塔は荒野に立っていた。だが支配の象徴でもあった。

 荒野の周辺には複数の村落が点在していて、村人達はそれぞれ定期的に塔へ金品を献上していた。

 なぜなら塔には有力な魔法使いが住んでいたからだ。

 金品の献上は数十年前から続いていたが、近年の献上は困難になっていった。

 昔は村々が困窮するほどの要求ではなかったが、年々要求の度合いが増しているからだ。

 塔の主が変わったのではないかという噂もあった。

 結果的に魔法使いの要求を拒んだ村の行く末は悲惨なものだった。

 時には魔物に襲われ全滅し、時には嵐や落雷に見舞われ壊滅し、逃げ道の往来も盗賊に阻まれた。

 そしてまた一つの村落が苦しみもがき、風前の灯火。

 という場面で君という人間がたまたま現れた。


 君は一介の傭兵戦士である。腕は立つので、行く先々で雇われては戦って生計を立てていた。

 今までの君の剣にはポリシーや野心などなく、金さえ貰えればどこの陣営でもよく戦う。


「どうかどうか……お助け下さいませ」


 通り道でしかなかった村の外で君は老人にすがりつかれていた。

 貧しい村が餓えて滅ぶなど今の時世ではよくある話。無視して通り過ぎるのが定石であろう。

 しかしすがりつく長老の口から出た話は、君の興味を強く引いた。

 一帯を支配する魔法使いが困窮の原因であること。その魔法使いが財宝を持っているという噂。

 君は思案した。

 しがない自分にも遂に時機が巡ってきたのではないか?




●立ち去る→〔2〕へ。

●受ける→〔3〕へ。




〔2〕

 バカバカしい。人生は早々には変わらない。

 君は気にせずに去る。

 そして今までと同じように次の戦場へと向かった。

 単なる日銭を稼ぐための戦いを繰り返すのだ。


 君は戦場で敵の兵士と相対する。


 サイコロを振れ。

 1~5が出れば君の勝利。敵兵は一人死ぬ。

 6が出れば君は殺される。


 三回の勝利を得た君は〔5〕へ進め。

 一度でも6が出たなら〔4〕へ行け。




〔3〕

 君は運がいい。

 前回の戦闘は軽いもので負傷もなく、装備品も劣化していなかった。臨戦態勢は整っている。

 何よりも君には魔法使いと戦った経験が数回あったのだ。訓練場で、戦場で、任務などで。

 どれも三下の魔法使いが相手だったが、確かな経験則と不確かだが自信も得ていた。

 もしかすると、魔法使いに対しては相性がいいのかもしれないと君は考えている。

 長老から話を聞いた君は、村民達からも感謝を受けながらすぐに出立した。

 今回の任務は金銭が目的ではなく、地域一帯への救済と名誉と、今後の人生がかかっている。

 気を引き締めながら〔6〕へ進め。




〔4〕

 とある世界では、勇敢な戦士が死すると輝かしき天界へ招かれるという。けれどこの世界ではそう甘くはない。

 招く女もいなければ、館で待つ神もいないのだ。

 救いといえば魂の輪廻だけである。

 君もいずれ生まれ変われる日が来るだろう。

 その時まで、しばし待て。


 DEAD:END




〔5〕

 運はまだ尽きていない。生き延びた君はまた次の戦場へと向かう。

 それが死ぬまで繰り返される。

 どこかで戦死するまで、君は変わらぬ人生をひたすら送り続けるのだ。

 それが幸福かは、さておき。


 BAD:END




〔6〕

 君は投げにも用いる槍を背にさして荒野への道を歩いている。

 腰には二本の短剣をさし、携えた鞘には一般的な長剣を収めていた。

 武器の数は今後も必要になるのでメモしておくように。

 君の服装は軽装だが信頼できる革製の鎧を愛用している。

 盾は持っていないが、君の装備品で最も個性的な装備は篭手(こて)だ。革製でありながら両腕に鎖帷子(かたびら)を縫い付けており、緊急時の盾代わりとしている。


 道は段々と険しくなってきたので、君は危険な予感がしてきた。村人が盗賊の話もしてくれたからだ。


 ――予感は的中する。

 柄の悪い男が抜き身の剣を振りながらどこからともなく近づいてくる。


 君は怖じ気づいてないか?

 怖じ気づいて逃げたいのなら、短剣を投げつけたその隙に走って逃げられる。さあ〔2〕へ進め。


 意志が揺るがないなら盗賊を返り討ちにしなければならない。

 君の耐久力と防御力を合わせると【ヒットポイントは最大五点】という数値になる。メモしておくように。


 サイコロを振れ。

 1~4が出れば君は無傷で盗賊を倒せる。

 5が出たら盗賊からの攻撃を受ける。君はヒットポイントを一点減らしながらも敵を倒す。どちらも〔7〕へ進め。

 もし6が出た君は間抜けにも盗賊に負けて命を失う。諦めて〔4〕へ行かなければならない。




〔7〕

 君は盗賊の装備品を漁った。

 大した物はなかったが、唯一高価な軟膏(なんこう)を見つける。

 これは傷によく効く代物で、戦闘以外で使うといつでも【ヒットポイントを一点回復】出来る。ただし【ヒットポイントは最大五点以上は増やせない】ので注意せよ。

 軟膏は【五回分】あるからメモしておくように。



●君は歩みを再開して荒野に入って〔8〕へと進む。

●思い直して来た道を帰るなら〔2〕へ戻ることも出来る。




〔8〕

 荒野には道や案内などは全くなかったが、君は不思議と進むべき方角を知っているような気になっていた。

 きっと土地自体に魔法をかけているのだろう。君はそう推測した。

 これなら村民達が金品を献上する際に迷わずに塔へ着ける。帰り道も問題ない。

 ふと不安がよぎる。では自分が魔法使いを倒した後はどうなるだろうと。



●安全をとって今の内に帰るなら〔2〕へ戻れ。

●なるようになると突き進むなら〔9〕へ進め。




〔9〕

 荒れ地にぽつりと咲く花のように灰色の塔が立っているのが見えた。五階程度の高さだろうか。

 君は塔に向かって歩いていく。


 ――扉の前に一人の人間が立ち尽くしていた。君は番人の存在に気づく。

 周りには隠れる場所は何もないので君は警戒しながらも近づいていった。

 だが番人はピクリとも動かない。

 君は奇妙さを感じていた。経験的にも普通ではないのだ。

 まだ槍の間合いでも届かないほどの距離。君は番人の姿をよく観察した。

 番人は兜を被り、剣を携えた男に見える。

 だが目の周りが異様に黒いことに気づいた。

 というより――男には目玉がなく、それは大きな穴なのだと気づく。

 肌も青色で生気がない。


 どうする?




●話しかける→〔10〕へ。

●先制攻撃をしかける→〔11〕へ。




〔10〕

 君はごく自然に、気軽な挨拶をした。

 けれど反応はなかったので、もっと近づいて男の肩に触れながら話しかけようとする。

 その時、番人が動いた!

 きらめく白刃が君の鎧の胸部を切り裂く。

 ヒットポイントを一点減らさなければならない。

 君は剣を抜いて反撃に出る。

 舞うように〔12〕へ進め。




〔11〕

 槍か短剣一本か、どちらを投げるか決めよう。

 決めたら攻撃するために〔13〕へ進め。




〔12〕

 君が相手にしている者は人ではない。

 人間の皮を使って中に魔法の土を入れた土人形なのだ。

 この土人形の番人は人間ではないが、剣の腕は確かだ。村人や盗賊程度ならまるで歯が立たない。


 サイコロを振れ。

 1~3が出たら君の快勝だ。

 4~5が出たらヒットポイントを一点失って君が勝つ。

 6が出ても負けないが、君はヒットポイントを二点失って自慢の篭手も破壊される。篭手が壊されると【数値は最大四点】となる。メモしておくように。


 まだ死んではいないだろう。土人形の番人を倒した君は、扉を開けて塔へ侵入する。〔14〕へ進もう。




〔13〕

 投げつけた武器の刃が番人に深々と刺さった。

 番人の姿は見るまに崩れ、透明人間が消えるように兜と服が残った。

 君が兜をどけると、黒い土の塊が服の中に入っていた。

 相手は邪悪な魔法で動いていたのだと君は気づく。

 なぜなら、投げた武器の刃が溶けてボロボロになっていたからだ。

 その武器はもう使い物にならない。メモから減らしておくように。

 君は扉を開けて塔の中へと侵入する。〔14〕へ行こう。




〔14〕

 塔の一階は広間のような景観だ。だが外観より広い印象で不思議だった。

 これも建物にかかった魔法ではないだろうか?

 君は用心深く〔15〕へ歩を進める。




〔15〕

 広間に人気(ひとけ)はない。

 正面奥には大きな扉がある。扉の両脇には二体の奇妙な像が鎮座しているのが見える。

 左側奥にはドアがある。

 右側奥にも似たドアがある。

 奇妙なことだが階段は見当たらない。三つの扉の向こうにあるのだろうか。

 さて、どの方向へ進もうか?




●奥の扉へ→〔16〕へ。

●左の扉へ→〔17〕へ。

●右の扉へ→〔18〕へ。




〔16〕

 奥の扉へ向かう。

 二体の像は神や悪魔をかたどっているのだろうか。人とも獣とも言える姿をしている。

 扉の上には札が貼られていて、君は札の文字を読んだ。


『最上階は許可のない立ち入りを禁ずる』


 こういった建物に住む主の部屋は、大抵最上階にあると相場は決まっている。

 君の目的地は主の部屋だ。この扉の向こうに直通の階段があるなら都合がいい。

 けれど君は、非常に嫌な予感がした。

 経験による直感力が告げている。不用心すぎるのではないかと。

 このまま扉まで進むか?




●扉まで進むなら〔19〕へ行け。

●考え直すなら〔15〕へ戻れ。




〔17〕

 左側のドアへ向かう。

 ドアの上には札が貼られている。


『三階は倉庫。献上品は倉庫へ』

(もし君が先に右側のドアへ向かっていたなら、妙な違和感を覚える)


 さて、どうする?

 引き返すこともできる。




●倉庫へのドアを開けるなら〔20〕へ進め。

●引き返して他へ行くなら〔15〕へ戻れ。




〔18〕

 右側のドアへ向かう。

 ドアの上には札が貼られている。


『三階は応接室。客人はこちらへ』

(もし君が先に左側のドアへ向かっていたなら、妙な違和感を覚える)


 ――君は客人と呼べる存在だろうか?

 招かれざる客ではあるが、礼儀正しい客人の振りはできる。


 さて、どうする?

 引き返すこともできる。




●応接室へのドアを開けるなら〔21〕へ進め。

●引き返して他へ行くなら〔15〕へ戻れ。




〔19〕

 虎の穴に入らなければ虎の子は得られない。

 君は強い足取りで扉へと近づいた。

 だが案の定、異変が起きる!

 扉の両脇に鎮座した像がモゾモゾと動き始めたではないか。

 人と獣の中間のようなこの像は、生気の色を帯びると襲いかかってきた。

 君にとって幸運だったのは、敵の体が石や鉄ではなかった点である。

 二体の人獣像は非常に強力な守護者だ。身のこなしは素早く、一体でも強い。その上、巧みな連携攻撃をしかけてくる。


 慎重にサイコロを振れ。

 1~2が出たらヒットポイントが一点のみ減少して奇跡的な勝利を得る!

 3~4が出たらヒットポイントが三点減少するも勝機を得る。

 5~6が出るとヒットポイントを四点も失う。それでも生きていれば勝てる。


 死ねば〔4〕行きだ。

 剣の達人のように守護者を撃破したならば〔22〕へ進もう。




〔20〕

 君はドアを開けた。

 すると不思議な感覚がして、脚を動かす前にいつの間にか部屋に入っていた。

 いや、無意識で脚を動かしたのだろうか?

 いずれにせよ、君の後ろにはすでにドアはなかった。魔法の作用に違いないのだ。

 部屋を見回すと大小様々な物品や箱が乱雑に置かれている。いかにも倉庫の様相だ。

 テーブルも用意されている。

 そのテーブルの上には箱が置かれており、中には書き置きが残されていた。


『献上品はこの中へ』


 そんな物は持っていない。君は別の出口を目で探した。

 右手に扉、正面奥にドアがある。

 どちらも広間で見かけた扉やドアと似ているような気がする。

 右手の扉には『立ち入り禁止』と札があり、正面奥のドアには『出口』という札がある。


 さあ、どちらから出ていく?




●立ち入り禁止の扉なら→〔23〕へ。

●ここまで来て出口のドアなら→〔2〕へ。




〔21〕

 君はドアを開けた。

 すると不思議な感覚がして、脚を動かす前にいつの間にか応接室に入っていた。

 君の目の前に立派なソファーや机があり、周りを見渡せば絵画や植木や書棚など客人を迎えるに相応しい環境が整っている。

 暖炉もあるので冬でも暖かいだろう。

 左手には見覚えがある気もする扉が見えた。

 君にはまだ考える猶予がある。どういう作戦で打って出るか。




●猪突猛進で扉へ駆ける→〔24〕へ。

●客人の振りをして待つ→〔25〕へ。




〔22〕

 君は扉を開けると螺旋階段があると思っていたかもしれない。

 だが実際には扉を開けた途端、君の体はテレポートで移動した。

 一瞬で最上階へと到達、主の部屋へと入り込んでいた。


 ――そこは豪華な書斎だった。

 正面中央に位置する机やそれを取り囲んで壁際に並ぶ書棚には、多数の逸品が所狭しと置かれている。

 机を挟んで向こう側には、椅子に座っている若い男がいた。

 真正面から侵入してきた君の姿を見て驚きを隠せないようだ。

 実は正面から入る者は滅多におらず、いても守護者にやられてしまうので彼には珍事だったのだろう。

 魔法使いが完全な臨戦体勢に入るまで君には時間がある。

 思考と行動の猶予があるのだ。

 好機を感じながら君は〔29〕へ飛び込んだ。




〔23〕

 君が扉を開けると、そこは書斎のような部屋だった。

 正面中央に置かれた机の側面と、若い男が椅子に座っている横顔が見えた。

 右手側の向こうには正面扉のようなもう一つのドアがある。

 彼は君の存在にはまだ気づいていないようだ。机の上に集中してなにかを書きしたためている。

 君の入室に気づかれるまでにはまだ時間があり、思考と行動の猶予がある。




●話しかけてみる→〔30〕へ。

●速攻に賭ける→〔34〕へ。




〔24〕

 君はすぐさま扉の方へ駆けた。

 扉へ飛びついて、開ける。

 その瞬間――――残念だが、君は真っ黒な亜空間にいた。

 厳密には宇宙に似た異次元へ飛ばされてしまったのだ。

 ここは宇宙と違って呼吸は出来る。景色もいいが、何もない空間でしかない。

 君は生きている限りこのゴミ捨て場を永久にさ迷うだろう。

 残された選択は餓死か自殺だ。諦めたら〔4〕へ行け。

 ちなみに君が応接室へ入った瞬間、塔の主は君を感知していた。

 ここは塔の二階に位置する異次元空間で、無礼者が応接室で主の部屋の扉を開けた瞬間に転送される仕組みなのだ。




〔25〕

 少しすると左手の扉が開いた。

 中から綺麗なローブを着た若い男が現れて扉を閉めると、ソファーへ座った。


「やあ、座りたまえよ」


 気品を感じさせる男がそう言って君を促す。

 君は油断せずに相手を見据えながら座った。

 男は柔和な表情でいるが、君から見ればただ者でないのは間違いない。傲慢さを感じる。


「ここに人が来るのは久々だよ。それに師匠は今忙しくてね。弟子の僕が応対しているんだ。君とは知り合いではないはずだが、君のような武人がこんな場所に何用かな?」


 師匠とは塔の主だろうか。そうならばこの男の相手をしていても仕方がない。

 とはいえ後々敵対すれば厄介だろう。


 君は考えている。

 何かよい言い訳、または交渉を促すか。先手を打つか。




●師匠に呼ばれてやって来たとハッタリをかます→〔26〕へ。

●身分を明かして一緒に師匠を倒そうと誘う→〔27〕へ。

●有無を言わさず短剣を投げて先制攻撃を仕掛ける→〔28〕へ。




〔26〕

 男は合点がいったという顔をした。


「ほうほう。しかしおかしな話だね。実は師匠なんて一年前に死んだというのに」


 彼はニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。

 ハッタリをかまされたのは君の方だったのだ。


「師匠のスレイルは衰えた。最近知ったんだが、奴が自分の師バルザックを殺したのと同じだ。そうして時代が変わったんだ。今は僕の時代なんだよ」


 遠回しに師匠殺しを自慢している。


「まあ君には分からないだろう。これは魔法使いでないと分からない。そもそも君は野心家ではないのかもね」


 君は彼の話を聞いているしかなかった。いつの間にか身動きがとれなくなっていたからだ。


「金縛りの術だよ。魔法円はソファーの下にあるんだ。では息抜きもそろそろ終わりにしよう。さようなら」


 男がパチンと指を鳴らす。

 ヒュンと音がした。

 矢が二本飛んでくる。


 必死にサイコロを振れ。

 1が出れば気合いで金縛りを破って矢を回避できる。

 2が出れば矢を受けるが致命的ではない。ヒットポイントを三点失う。

 3~6が出たら矢は頭や心臓に命中する。即死で〔4〕行きだ。


 生存していれば反撃のチャンスがある!

 金縛りを破った君に魔法使いは驚き、彼は自室へ逃げ込んでいった。

 急いで追撃するために〔29〕へ進め!




〔27〕

 彼は大笑いしだす。


「なんて面白い男だ! 僕も同意見だよ。では場所を移して真剣に話し合おうじゃないか」


 君は男に誘われるがまま扉の方へ向かう。

 扉を開けると書斎のような部屋があった。

 とても豪華で様々な高級品が書棚や机に置かれている。


「君に見せたい逸品があるんだ」


 そう言うと男は机に近寄り、椅子を動かして何かをさっと拾い上げた。

 彼がそれを掲げると君はそれが何か分かった。

 刀と呼ばれる東方の武器である。君も今まで一度しか見た経験がない。

 男は白刃を抜き放ち、鞘を投げた。かなりの業物だと見える。


「見たまえ、素晴らしいこの武器を。僕のものだ! 僕はこの刀であの師匠を切り裂いたのだ! 反逆の感触は今でも忘れがたい」


 しまった、と君は思ったがもう遅かった。

 一杯食わされた、と悟った頃には業物の刃が君の首を裂いている最中だ。

 首を両断されてふき飛んだ君の頭は、彼が片手で放った火球によって空中で燃え尽きる。

 倒れた体は魔法使いが呼び出した闇の精霊によって瞬時に腐敗、細かく分解されて消滅した。

 もはや何も語ることはないだろう。〔4〕へ行こう。




〔28〕

 君は短剣を投げ放った。


 腕を信じてサイコロを振れ。

 残りの短剣が一本なら1~2で命中する。

 残りの短剣が二本なら1~4で命中する。

 命中すると魔法使いは自分の部屋へ逃げ込む。

 外せば彼の接近を許してしまい、なんと体術で連打を食らった。ヒットポイントが2点減少してしまう。男は息を切らしながら自室へ逃げる。


 数値が0になったなら〔4〕行きだ。

 無事なら急いで追撃せよ。さあ〔29〕へ進め!




〔29〕

 全てがゆっくりとした体感速度の中で流れていく――

 疾風迅雷のごとく部屋へ飛び込んだ君に対して、魔法使いはまだ体勢を整えていない。

 魔法を繰り出すには冷静な思考や動作、繊細な作業が必要である。彼は何かしらの要因で冷静さも欠いていた。

 魔法使いが得意の魔法を使うには時間が要る、君はそれを経験的に察していた。

 彼の一挙一動を目で追いながら君は自分の体を反応させていこう。


 さて、君はより早く接近戦に持ち込むべきと考えるか。

 もし槍が残っていれば間合いをとって戦おうと考えるか。

 または槍や短剣が残っていれば投げつけるか。

 忘れてはならないのは、魔法使いの彼もまた君の目を見据えて反応するという点だ。




●接近戦に持ち込む→〔31〕へ。

●槍で間合いを取る→〔32〕へ。

●投げつける→〔33〕へ。




〔30〕

 君は咳払いをしてから男に挨拶をした。

 若い男は君の姿を認めると目を丸くする。

 そして笑顔を作ってから客人に対するように握手を求めてきた。

 ぎゅっと手を握って話しかけてくる。


「やあ、あなたはどちら様でしょう。献上品を持ってきて下さった方か? それにしては良い体格をしておられる。武器もお持ちなようだ」


 言い終わると、君は手のひらに痛みを感じた。

 徐々にじんじんとした痛みが大きくなり、握手をした腕の方から広がっていく。


「毒手の術の味はいかがかな。最近は人と接する機会がないもので、初めて使ってみたが」


 君は全身の麻痺を感じながら意識を失ってゆく。

 愚かな行為をしたものだ。気安く魔法使いと接してはいけない。

 相手が邪悪な者なら尚更だ。騙そうとしても騙されてしまうのだから。

 その後、君の体は彼の魔法実験の道具として扱われることになる。

 無論とうに君の魂は〔4〕へ進んでいて、自分の体の状態など知るよしもなかったが。




〔31〕

 君は彼が椅子を動かして何かを拾い上げるのを見ていたが、君もすでに飛びかかっていた。

 魔法使いに魔法を使わせる隙を与えてはならないと察したからだ。

 目前の男の眼も血走っており、まるで狂人のような雰囲気であった。

 だが男は見事な刀で君の剣をしっかり受け止めている。

 男には魔法使いとは思えぬほどの覇気が感じられた。殺気がほとばしっており、剣士と言っても差し障りない。

 最も接近しての刃の打ち合いが始まる。


 最後の戦いを前に、メモを控えておくように。

 塔の主である若き魔法使いのヒットポイントは3点だ。もし彼に短剣を命中させていれば残り2点となる。


 いざ尋常にサイコロを振るのだ!

 1~3で彼のヒットポイントが一点減少する。

 3~5で君のヒットポイントが一点減少する。

 6が出ればもう一度サイコロを振らねばならない。1~3では何事もないが、4~6で彼が雷撃の魔法を指から放つ。君の心臓へ直撃するので心臓麻痺が起こる。行く先は〔4〕だ。


 この死闘を制する幸運を持つ君は〔35〕へ進め!




〔32〕

 彼が椅子を動かして何かを拾い上げるのを見ていたが、君も冷静に槍を構えていた。

 そして君は、魔法使いが東方の武器“カタナ”を抜いた姿を初めて目撃する。

 見事な業物を構えた彼は、魔法使いとは思えぬほどの覇気と殺気を放っていた。

 ここに刀と魔法対槍の戦いが始まる。


 最後の戦いを前に、メモを控えておくように。

 塔の主である若き魔法使いのヒットポイントは3点だ。もし彼に短剣を命中させていれば残り2点となる。


 いざ尋常にサイコロを振ろう!

 1~2で彼のヒットポイントが二点減少する。

 3~4で君のヒットポイントが一点減少する。

 5が出ればもう一度サイコロを振らねばならない。1~3が出ると君は見事に彼の心臓を貫いて倒す! 4~6では彼が部分防壁の魔法を張り、心臓への直撃を防いでしまう。

 6が出ればもう一度サイコロを振らねばならない。1~3では何事もないが、4~6で彼が火球の魔法を手から放つ。君へ命中するのでヒットポイントが四点も減少する。

 君のヒットポイントが0点になれば、残念だが〔4〕行きである。


 この死闘を制した武力を持つ君は〔35〕へ進め!




〔33〕

 魔法使いに対して飛び道具で勝負を挑むとは……。

 不意打ちならばまだしも、真っ向勝負では勝敗は見えていた。

 君が生真面目に槍や短剣を投げつけると、動作に合わせて彼の呼吸も整った。

 部屋の中にある多数の武器や凶器が空中へ浮遊する。

 それらは刃先を君の方へ向け、発射されるようにして飛んでくる。

 ただ飛んでくるに留まらず、乱舞も始まった。何度も刺したり斬ったり、殴打したりのオンパレードである。

 もはやサイコロを振りたくても振る意味がない。この作品でのヒットポイントの最大値、五点を超える十五点のダメージを君は受けてしまったからだ。

 その様は余りに無惨なので書き記すのも躊躇ちゅうちょしてしまう。

 悲惨な光景を想像しながら〔4〕へ行くように。




〔34〕

 意思は決まった。

 君は男が目的の人物だと察している。


 では、どう行動するか?




●長剣か槍か短剣を用いる→〔29〕へ。

●雄叫びをあげる→〔37〕へ。

●ふと机の上にある何かが気になった→〔38〕へ。




〔35〕

 野心を持った若き魔法使いは崩れ落ち、血まみれで倒れている。

 勝利を確認した君は周りを見渡すが、妙な不安に襲われた。魔法に気配というものがあるならば、気配が変わっていないと感じる。

 その時、君の前で信じられないことが起きたのだ。

 死体になったと思われた男がゆっくりと立ち上がっている!

 なぜなのかは分からない。だが確実に甦生したであろう魔法使いは遺恨の塊であり、まだ刀を握っている。

 君は反射的に突進した。武器を持つ暇はない。


 遺恨の魔法使いは驚異の再生力で復活したが、まだ半分は死に(てい)である。

 君はとにかく鬼となって彼を殴りつけなければならない。


 サイコロを振ろう。

 1~4が出れば君は相手を殴って殴って殴り続けて、彼は昏倒する。

 5~6が出れば彼の刀が君に傷を負わせるので、ヒットポイントが一点減少する。

 君のヒットポイントが0点になれば、ここまで来たのに〔4〕行きである。


 真の勝利を得た者だけが〔36〕へ進める!




〔36〕

 死闘の果て。

 君は屍が再生しないように長剣で男の首を切断した。

 男の目は怨みそのもののようで、目からは涙をこぼしていた。

 魔法の影響であろうか、涙が結晶化して小さな真珠のような形になっている。

 絶対に触れないほうがいいだろう。

 息も絶え絶えの君はなるだけ早くこの場から立ち去ろうと考えた。魔法の影響下にある塔が主を失えば、どうなるかも分からない。

 その時、ふと君は机の上に飾られた球体の存在に目をやる。

 今までは気にせずにいた、不思議な存在感を持つ水晶球を見つめた。




●見つめ続ける→〔39〕へ。

●一刻も早く去る→〔40〕へ。




〔37〕

 君は北方の蛮族を思わせる雄叫びをあげた。

 とても勇ましく、普通の相手ならば怯ませることも出来たろう。

 しかしこの場面では不釣り合いだった。

 突然発せられ響いた怒号。若き魔法使いは驚くものの、すべき手段をすぐに取りはじめる。

 魔法の行使。それは侵入者の排除だ。

 事はすぐに始まった。

 床や壁から細い針のような物体が複数伸びて来る。

 素早く伸びた針は君の体を穴だらけにするには充分だった。


 サイコロを振ろう。

 出た目の数だけ君はヒットポイントを失う。即死なら行く先は〔4〕だ。


 もしもまだ息があれば、逆襲のチャンスを得られる。決死の覚悟で〔31〕へ進むのだ!




〔38〕

 丸い物が机の上に置かれている。

 君はそれがどうしても気になった。

 瞬間的に丸い物が水晶の類いであると気づいた。占い師が使う水晶に似ているが、さらに小振りだ。

 水晶球の内部には光があって、まるでたゆたうオーロラを思わせる美しさを秘めている。

 君はこの怪しげな球が欲しいと強く感じた。

 手に入れるにはどうすればいいのか? 持ち主を殺して奪えばいいのだ。

 君の体感時間は再び攻撃に向けて動き出す。


 今後、水晶球の存在を再び感じた場面では、水晶球を見る選択を必ず選ぶように。


 では〔34〕へ戻って他の選択を選べ。

 相手が気づくまでもう時間がない。早く選ぶように。




〔39〕

 なぜだろう。

 水晶球を見つめていたはずが、いつのまにか机に歩みより、球を手に取ってしまっていた。


 ――今までのお話を知る君ならば、もう分かっているだろう。


 その水晶球と、刀と、この塔の――――次の主は、君になったのだ。


 永遠に続く地獄の一つに組み込まれながら、今を享受して生きよう。

 それでもまずは、首と胴体が分離した哀れな死体の後片付けからだ。


 HELL:END




〔40〕

 君は入ってきた扉を開いた。

 不思議だがそこは塔の入り口で、番人の衣装だけはまだ残っていた。

 だが魔法の支配もそこまでのようで、荒野に入った際の方向が分かる自信はなくなっていた。

 行くあてもなくさすらうのも君のいつものやり方なので、前の感覚を思い出しながら歩き出す。

 次に轟音がして背後で塔が崩れ落ちた。

 建物が崩壊すれば瓦礫が残るものだが、砂塵だけが舞い上がって更地と化していた。

 君はその光景を見終えると振り返ってまた歩く。

 そういえば魔法使いの宝とはなんだったのだろう。あの刀のことか。だがあの刀には良い導きはないだろう。などとそんな考えも巡らせていた。

 けれど何よりも、今の君は人生で感じた経験がないような充実感を全身に感じていた。

 今回で最後かもしれないが、この一帯を平和へ導けたなら、人生の中で意義がある何かを成し遂げたと思える。

 元傭兵戦士の君は、やっと幸福を噛みしめた。


 TRIUMPH:END







なんと10年ぶりの更新です。

小振りながら三部作の予定通りこれにて完結しました。

もしもバグや難度の困難さなどありましたら遠慮なくご報告下さいませ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ・正統派なゲームブックであること。 出版されてもおかしくはないレベル [気になる点] ・なろうだとズルできるのが問題で、選択肢毎に行先をリンクさせれば更に良くなる所.. ちなみにカクヨムと…
2021/10/01 10:43 退会済み
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