24
みゆきと別れて病室を出た。エレベーターで下へ降り、正面玄関へ向かって歩いた。
一歩前へ進むたびに、後ろへ引き戻されるような感覚に襲われた。
自動ドアが、ほとんど音も立てずに左右へ開いた。
病院を出て脇道へ足を踏み入れた途端、身体から力が抜けた。壁に背を預け、そのまま崩れ落ちそうになった。
ただ、涙に身を任せて泣きたかった。
駅までの道すがら、みゆきの顔が何度も浮かんだ。彼女に会うことは、もう二度とないだろう。実際、それが最後になった。
改札を抜け、長い階段を上ってホームに出た。空の下、いくつもの屋根が並んでいた。
まるで、この世のすべてから切り離されたようだった。
この途方もない孤独を止める術など、あるのだろうか。
この記憶を語るにふさわしい時なんて、きっと訪れない。
それでも、いつか特別な物語に変わってくれることを、どこかで願っていた。
深く息を吐き、帰りの電車でドアにもたれて外を眺めた。信号待ちの交差点に、ランドセルを背負った幼い子どもたちが二人、並んで立っていた。
肩が触れそうな距離で、二人は同じ方向を見つめていた。
幼いころは、大切な人が当たり前のように隣にいるものだと思っていた。
けれど今は、どこへ行っても一人きりなのではないか。そんな思いが頭をよぎった。
その寂しさは思いのほか重く、胸の奥深くに沈み、僕を押し潰そうとしていた。
そっと視線を上げ、空を仰いだ。それから再び前を見つめた。
雲の切れ間から差し込む光が、新宿副都心の高層ビル群の隙間に、かすかに届いていた。
それは、僕が胸に描いてきた「永遠」に、少しだけ似ていた。
電車は大きくカーブを描き、長く続く線路の上を走り抜けていく。
けれど、この世に永遠があるかどうかなんて——。
わかっているのは、汚れながら、肩を落とし、死人のように彷徨い歩きながらも、それでもずっと探していた。
君を。
そして、永遠を。




