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プロローグ

私は式神である。


そう言うと聞こえは良いが、実態はもう少し情けない。


呼ばれれば行く。戻れと言われれば戻る。

主が眠れば待ち、主が起きれば働く。

気付けば何百年もそうしている。


人間だった頃の私が見たら、さぞ笑うだろう。

力を求め続けた男の末路がこれだ。

自由もなく、契約に繋がれ、主の機嫌一つで呼び出される。


実に馬鹿らしい。

本当に、馬鹿らしいのだ。


だから不思議なのである。

何故私は、この契約を失う想像だけはしたくないのだろうか。


主は妙なものを集める。

壊れた術具。役目を終えた呪物。忘れられた神の欠片。

使い道のないものほど捨てずに残しておく。

蔵にはそういうものが山ほど眠っている。


私は何度も思った。

収集癖の延長で拾われたのではないか、と。


事実、最初は力だけが目的だった。

私は力が欲しかった。

誰にも奪われない力を。人を見返せる力を。負けないための力を。

そのためなら神でも妖でも利用するつもりだった。


だから探した。

異形を狩り、禁忌を漁り、人の踏み入らぬ場所を歩き、ようやく辿り着いた。


白い気配だった。

最初は名前すら知らなかった。

神とも妖ともつかない何か。

静かで、得体が知れず、恐ろしく強かった。


だから近づいた。

力があると思ったからだ。それだけだった。

本当に、それだけだったはずなのだ。


それがどうだ。


今の私は影の牢に繋がれ、呼ばれもしないのに主のことを考えている。


契約を失う想像に怯え、他の者が隣に立つと少し腹が立ち、何かあれば結局手を貸している。


何百年も生きてきて、ここまで滑稽な話もない。


だからもし、これから私の話を読む者がいるなら、一つだけ忠告しておこう。


力を求めるのは構わない。神を探すのも勝手だ。

 

だが、白いものだけは追うな。

追えば最後、人生が滅茶苦茶になる。


私が保証する。

X:@kohakugatari


Xアカウントにて登場人物の紹介画像アップしていますので、フォローよろしくお願いします。

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