結
荒野に一人、少女がいた。
何も知らない、ただついさっきまで学友と次の授業の愚痴を言っていただけの、ある時代ではどこにでもいるありふれた少女。
剣も槍も、武器など一度も持ったことのない柔らかな手は今や汗を滲ませるのみ。体育の授業と遅刻した時くらいしか本気を出さないひ弱な脚も、今にももつれそうに悲鳴を上げている。
(なんで……なんでこんなことに……どこなのよここは!)
ただ一つわかるのは、今自分は追われているということ。物語の中、絵に描いたような悪党がこちらに手を伸ばしているということ。
「ようやく捕まえたぜお嬢ちゃん……その変な服装、迷イ人だな……?」
「嫌! やめて、放してよお!!」
「ひひ、護リ人からの依頼は無くなったって聞いてたが……今じゃこいつは金のなる木。そこらの貴族にでも売りつければ……」
無造作に髪を掴み、下劣な欲望を垂れ流す見知らぬ男。その手に光るナイフを見て、暴れていた少女は顔を青くした。
(やだ……お母さん……お父さん…………!こんな知らない場所で、私……)
現実から目を逸らすように、ぎゅっとその目を瞑った。その時だった。
「雷術――――薙刀。非道外道は切って捨てます、その覚悟を貴殿はお持ちで?」
瞼の向こうが雷雨の夜のように瞬いた。凛とした女の声と共に、パチパチと弾ける音がする。
何が起きたと認識するよりも前にフッと捕まれていた髪が自由になり、少女は前に倒れそうになった。
「っと…………朝! こっちは大丈夫。その野郎はちょっと強めに絞めといて!!」
「わかった」
少女を支えた者もまた少女。口調は野蛮だが、添えられた腕は温かみを感じる。
恐る恐る目を開けると、そこには人形のようにお淑やかな金髪が流れていた。そして背後を向けば、和装の少女が薙刀で男を取り押さえている。
わけもわからないまま呆然としていると、金髪の少女が一度離れて手を差し伸べた。
「間一髪、遅くなって悪かったな。初めまして異郷の友人。まあこの状況じゃあ答えは分かりきってるけど、一応聞くぜ――――お前は家に帰りたい? それともこの世界に残る?」
最後まで読んでいただき誠にありがとうございます!
異世界転移・転生ものは数あれど、特別無双するわけでもなくチートでもなくハーレムでもない、なんかほぼ恩返しだけで動く武人の物語。楽しんでいただけたならこれ以上の幸せはありません。
戦闘後に主人公不在であんな会議が挟まる予定ではなかったのですが、あれはしっかり書かねば終われないと思いました。
主人公は朝ですが、それ以外のキャラが舞台装置になるだけは絶対にダメだというこだわり。蛇足でないといいのですが・・・。
改めて、ここまでお付き合いいただきありがとうございました!
もし良ければ一言でも感想等いただけると嬉しいです。
追記:活動報告に裏話等書きました。良ければ覗いて見てください
この出来事の数百年先を描いた、同一世界の長編があります。現在全体の半分ほどまで進んでいます。
話によって視点は変わりますが、そちらの主人公は護リ人側です。気が向いたらどうぞ。
【氷炎護リ人 現地主人公×異世界転移】
https://ncode.syosetu.com/n4741lt/




