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働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜  作者: 烏羽 楓
第一章 しゃべる石ころ、魔王になる

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第7話「“凍狼王”ゼトス、忠誠と共に吠える」

 世界の声が響いた直後、俺は迷わず《はい》の選択肢を選んだ。


 《眷属召喚を開始します……》


 コアルームの空間が微かに震える。レイラが俺のすぐ横に立ち、警戒と興味が入り混じったような目で周囲を見渡していた。


 次の眷属が来る。それはつまり、俺のダンジョンにとって新たな仲間が増えるということだ。


 光の柱が、拡張したばかりのコアルーム中央に降り注ぐ。

 

 その光の中から、唸るような風と共に、銀灰の毛並みを持つ巨大な狼が姿を現した。


「……でけぇ」


 思わず声が漏れた。その大きさは俺の想像を遥かに超えていた。

 正直、天井まで届きそうなサイズで、さっき広げてなかったら完全に詰んでたレベルだ。


 そのときだった。


 ぽんっ――という、やけに軽い音と共に、目の前のフェンリルが小さくなった。あれよあれよという間に、サイズは通常の大型犬くらいにまで縮む。


「……今度は、小さくなった」


 俺の言葉に反応するように、そのフェンリルが俺の前に伏せた。


「お初にお目にかかります、主。我は凍狼王(フェンリルキング)のゼトスと申します。主の呼びかけに馳せ参じました」


 落ち着いた低い声。威厳ある挨拶。なのに――尻尾がぶんぶん振られている。


 ……かわいいな。


 口には出さず、心の中でそう呟いた。


「よろしくな、ゼトス」


 そう言って頭を撫でると、今まで以上の勢いで尻尾が暴風のごとく振られる。ご丁寧に耳までぺたんと寝かせて、どこからどう見てもただの忠犬だ。


 いや、ほんとにわかりやすいな!


 そんなゼトスに軽く笑いながら、レイラも一歩前に出て会釈をした。


(マスター)の第一眷属のレイラです。よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします、レイラ殿!」


 二人が挨拶を交わしたところで、俺は少しだけ真面目な話をすることにした。


「さて、これからダンジョン運営をしていくにあたってだけど……俺は“ボス部屋”っていうのを、基本的に作るつもりはない」


 レイラとゼトスが同時にこちらを見た。どちらも、驚きと疑問の入り混じった顔だ。


「えっ、それは……安全面で問題があるのでは?」


「まさか、主……戦力を隠すという戦術でしょうか?」


 いや、違う。


「いや、別になにもかも“なくす”わけじゃない。中ボスみたいなやつは、区切りのいい階層に配置するつもりだ。だけど――お前らみたいに別格の強さの奴らには、日替わりでダンジョン内を自由にうろついてもらおうかなって」


「うろつく、ですか?」


「そっ。“イレギュラーボス”ってやつだよ」


 ゼトスが興味津々に身を乗り出す。レイラもいまいちピンと来てないようで、俺の説明に耳を傾けている。


「たとえば、台風とか地震って、どこで起こるかとか被害がどれくらい出るとか前もってわからないだろ? そういうのと同じで、ダンジョン内における“ボス”の役割を“天災”みたいに扱いたいんだ」


「天災……つまり、予測不可能な存在としてプレッシャーを与える、と?」


「そういうこと」


 言い終えた瞬間、レイラが小さく笑みを漏らす。


「……斬新なアイディアですね。いいと思います」


「なるほど! その考え、感服いたしました!」


 ゼトスのしっぽがまたぶんぶん振られている。


「じゃあ、とりあえず現状は四階層まであるし、区切りとして中ボスを配置する五階層目を新たに作るか」


 コアルームに広げた立体地図に目を落としながら、俺は言った。


「表向きには、この中ボス部屋が最終階層=ボス部屋だと思わせる。だから、それなりに強い魔物と、それに合わせた専用部屋にしたい」


 そもそもそこまで辿り着けるやつが現れるかどうかも怪しいけど。


 ――そのときだった。


 レイラは立体地図を一瞥し、少しだけ眉を寄せると……静かに口を開いた


(マスター)、一つ提案があります」


 その表情は、いつになく真剣だった。

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