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働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜  作者: 烏羽 楓
第一章 しゃべる石ころ、魔王になる

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第4話「ダンジョンを再設計したら、俺がダウンしました」

 ダンジョンの最深部――俺、ヴァルト・ノクスの“核”が鎮座するこの空間は、相変わらず静かだ。

 

 目の前に立つのは、相変わらず無表情で毒舌な美女、眷属のレイラ。

 静寂を破ったのは、そんな彼女の淡々とした一言だった。


「……それにしても、あの冒険者、思った以上に弱かったですね。反応も遅いし、攻撃も単調で」


 いやいや、普通に強かったと思うんだけど?

 俺の罠とゴブリンくんたちなんか“秒殺”されてたぞ。

 

「弱くはないと思うんだけどなぁ。ほら、召喚したゴブリンくんたち瞬殺されちゃったし」


「あの程度の冒険者にも勝てないなら、元から必要なかったのでしょう」


 いやほんと、あの世で一回ぶん殴られてこい。


「レイラ。短い時間だったけど、一応、仲間だったんだからそういう言い方はダメだよ?」


 俺は元人間だから、魔物?魔族?側の感情とか思考回路とかわかんないし、本来は俺が合わせるべきなんだろうけど。

 

 どこまでいっても、ここでは俺が王様なわけだし、俺が言うことがルールでもいいよな?


「……はぁ。では、“気の毒でしたね”」


「まるで慰霊碑の前で言うような言い方やめなさい」


 わかってもらうには、まだまだ時間がかかりそうだ。

 ……まあ、それはさておき、今後の方針だな。


 あの冒険者の遺骸がダンジョンに吸収されるのを眺めながら、俺たちはダンジョンの構成を見直すことにした。


 問題は拡張ポイントが足りないってことだよなぁ。


 現状、初期の10ポイントはほぼ使い切ってる。追加階層も、特殊ギミックの設置もできない。

 これ以上何かを足そうにも、材料がないのだ。


 ポイントを稼ぐには、冒険者を倒すしかない。となれば、今ある構造を活かすしかない。

 低コストで高効率な、殺戮特化型のルート設計を――。


 そんな俺の考えを察したのか、レイラがわずかに眉を動かす。


 「そんなに心配なさらなくても大丈夫です。ある程度のことは私がなんとかしますから、(マスター)は好きなようになさってください」


 え、なにこの子。急に優しくするじゃん。惚れそう。

 ――なんて言ってる場合じゃないな。

 

 雑念を払い、まじめに考える。

 

 今のダンジョンは、複雑とは言えない。

 素人だからというのもそうだが、ポイントの制約のせいで出来ることも限られている。

 

 これじゃ、踏破されるのも時間の問題だ。


 でも俺には、“社畜時代の知識”という一番の武器がある。

 

 どんなクソ仕様でも“工夫”でどうにかしてきた、あの誇り高きエンジニア(社畜)時代を生きた俺にかかれば、どうとでもなる!


 俺は迷わず再構築に取りかかる。


 残りの拡張ポイントはすべて迷路に投入。細い通路、分岐、行き止まり、デッドエンド――とにかく、ぐっちゃぐちゃにしてやる。

 

 これで地図なしの冒険者は確実に混乱するはずだ。


 そこに後で大量のモンスターを配置する。格下でも、数の暴力で押せば消耗は免れない。

 

 スタミナを削り、精神をすり減らし、じわじわと追い詰める……これぞ社畜式持久戦。


「おっし、こんな感じかな」


「迷路の複雑化に数の暴力、ですか。……悪くない案ですね」


 作り替えていくダンジョンマップを見ながらレイラが呟く。

 

 反応を見る感じ、そんなに悪くなさそうだ。

 

「そして……」


 仕上げに、最奥部に“偽の階段”を設置する。そこに辿り着くと、自動的に“外”へ放り出される仕組みだ。


 一見すると、攻略達成のご褒美に見えるが、実際にはリセットポイント。再突入時には罠もモンスター配置も微妙に変動させて、ルートも変えておく。


 気づかれなければ、それはもう“無限迷宮”。


「外に出してしまうのですか?」


「ああ。突破したと思わせておいて、実際は強制送還。で、また最初からやり直し。しかも、次に来たときは罠やモンスターの配置が微妙に変わってて、ルートも変動」


「……なるほど。配信されることも加味すれば、攻略のための人寄せにもなりますね」


「その通り。ほんとの次階層へ繋がるルートは、別に用意しておくけど、“隠し扉”扱いにする。ギミックを解かないと現れないようにね」


 自分で言うのもなんだけど、めっちゃ悪どい。


 でも、こういう“工数ゼロで成果最大”みたいなやり方は、前世で腐るほどやってきた。ブラック企業で生き抜いてきた人材は、ダンジョンでも強いのだ。


「石ころのわりには考えましたね」


「石ころいうなッ! まじで人型になったらぶっ飛ばしてやるからな?!」


「おっと、失礼しました。つい本音が」


 ムカつくけど、何も出来ない今の自分が余計にムカつく!

 

 絶対そのうち、主として崇め奉りたくなるような存在になってやるからな……!


 こうして、俺たちのブラック企業仕込みのダンジョン改革が始まる。

 

 ――ダンジョン構成の見直しを終え、残りのポイントを使って再構築。

 

 ある程度の準備が整ったところで、俺はさっそくモンスターの召喚作業に取りかかった。


 魔方陣を次々と展開し、罠や通路の要所に魔物を配置していく。

 

 効率、心理効果、見た目――全部考慮済みだ。完璧な布陣に仕上げてやる。

 

 だが、異変はその最中に起きた。


 魔力が、引き絞られるように減っていく。何かがおかしい。いや、明らかに“限界”を超えている。


 ……あれ? ちょっと待て、これ……。


 視界が揺れ始め、音が遠ざかる。

 召喚の手を止めようにも、もはや制御すら効かない。


 ダンジョン内の魔素は枯れていた。

 代わりに使われていたのは、俺自身の魔力。

 それすら尽きて――今は、体力までも変換され始めている。


 これは、さすがにマズい。


 息が詰まりそうな感覚。脳が痺れ、意識がぐらつく。


 やばい、ほんとに落ちる――


 思考の最奥がそう叫んだ、その瞬間。


 意識が完全に途切れ、俺の視界は、真っ暗な闇に沈んだ。


 そして。


 核石の表面に、黒い亀裂が走った――。

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