第40話 撮影スタート
「南さん!迫田先生戻ってこれたのですね!もう大丈夫でしょうか?」
「中澤さん…。山倉君が頑張ってホテルから連れて来てくれましたが、まだ半泣き状態です。」
「最近痴漢事件があったところですし…体を触れられて迫られるのは怖かったですよね。無理もないです。もっと迫田先生に気遣うべきでした。申し訳ございません。」
「気になさらないでください。今回は店員が悪いですから。撮影準備は出来ていますか?」
「はい。当初の予定ではカフェテラスの椅子に座ってポージングして頂く予定でしたが…可能でしょうか?」
「うーん…今、タクシーの中で迫田先生は山倉さんの腕にしがみついて山倉さんの肩を涙を鼻水まみれにしている状態ですからね…もう少し時間が経てばいけるかもしれませんが…」
「明日にしますか?」
「いえ!なんとか10分程度で気分を回復させますから!」
「そんなに早く出来ますか…?迫田先生は本がお好きでしたよね。今回はポージングは無理そうなら本を読む姿を撮りましょうか?それなら出来そうじゃないですか?」
「いや…それは本当に最終手段にしましょう。おそらくカフェテラスで本を読むだけでいいと伝えれば喜んで撮影させてくれるとは思いますが…」
「それならいいじゃないですか!本を読む姿もお美しいでしょうし!」
「いや!ダメです!」
「何故ですか?」
「迫田先生は1冊読み終わるまで待たないと凶暴化します。途中で読むことをやめさせることは出来ません。」
「え…そんなにまずいですか?」
「私は仕事上、何回か読むことを中断させたことがありますが、蹴られたり噛まれたりしましたよ。」
「やばすぎでしょ…」
「豹変して襲ってきますからね。小説の世界を邪魔すると痛い目に遭います。」
「じゃあどうすれば…」
「別の物で釣りましょう。カフェですから迫田先生が好きなパスタとかでなんとか機嫌を直して貰いましょう!」
「食事する姿を撮るんですか?うーん…日常的すぎてインスタと変わり映えしなさそうですね…」
「パスタを食べた後は機嫌が治ってポージングしてくれるかもしれません!」
「本当ですか…?」
「マカロンもつけましょう!完璧です!」
「大丈夫かな…」
「迫田先生はすぐに気分が落ちたりしますけど、立ち直るのも早いですから!」
「うーん…南さんがそう言うのから…とりあえず食事させてみましょうか。」
「食事中も撮影してもいいですか?」
「え?何故です?」
「いつものインスタと変わらない雰囲気を出したら緊張も解れるかもしれないので…食事シーンは使わなくていいので、安心させるという意味では有効的だと思います。」
「なるほど。それはいい考えですね。撮影スタッフにも伝えてみます。なるべく安心させてあげて欲しいと。」
「助かります!よろしくお願いします!」
私はタクシーで待機している迫田先生に声を掛ける
「迫田先生!とりあえず食事にしましょう!食事シーンの撮影に変更にして頂けましたから!迫田先生は食べているだけでいいです!」
「本当…?」
「ええ!ほら!メニュー表です!大好きなパスタがたくさんありますよ!」
「うん…」
迫田先生はメニュー表を見る
「蟹のトマトクリームパスタ…」
「いいですね!それにしましょう!」
「白ワインも飲んでいい?」
「えっと…飲酒はどうでしょうかねぇ…」
「この白ワイン美味しそう…」
「いいでしょう!今日は嫌なこと忘れて飲んでください!!」
「わーーーい!!」
迫田先生はザルだから酔って失敗することはない
許可を取らずに了承してしまったがたぶん大丈夫だと思う
迫田先生はザルだけど、お酒が入るとテンションが上がる
機嫌を治すにはもってこいだ
蟹のパスタと白ワインで迫田先生を釣ることに成功した
迫田先生はスタイリストが購入した服を着てメイクをして、カフェテラスに座り、機嫌良く店員に注文をする
「南さん…迫田先生白ワイン注文していますけど…」
と中澤さんが不安気に聞いてくる
「大丈夫です。迫田先生はザルなので。機嫌が治るならいいと判断しました。」
「本当でしょうか…?初日から不安だらけだ…」
注文した蟹のパスタと白ワインがテーブルに置かれると迫田先生は大喜びしている
「わぁ〜!美味しそう〜♡いただきまーす!」
全人類私の敵なんだ!と泣き喚いていたのに
パスタと白ワインでご機嫌になるのだから可愛いものだ
迫田先生の扱いは大変だねとたくさんの人に言われるけれど
ピーキーな性格をしているだけで実は結構扱いやすかったりする
迫田先生は子供がそのまま大人になったような人だから
基本的に素直だ
子供を躾けている感覚だ
人を見下したり偉そうにする先生よりもよっぽど迫田先生の方が扱いやすいし可愛げがある
「めっちゃおいしー♡」
満面の笑みで迫田先生はワインとパスタを食べる
迫田先生が満面の笑みをするのはヒナ君を愛でている時ぐらいなので結構レアだ
カメラマンは迫田先生の笑顔をパシャパシャと連写して撮影している
迫田先生はインスタで料理の写真をよく撮るのであまり気にせず食事をしていて
私が描いた理想通りに事が進んだ
「迫田先生ってあんな風に笑えるんですね。とても愛らしい。」
と中澤さんが言う
「本場の味が美味しかったんでしょうね。こんなに美味しそうに食べてくれるならついつい貢いでしまう男達の気持ちがわかってしまいます。」
「罪な女ですね…」
「可愛いの暴力で全身粉砕骨折させられますよ。」
「黙ってても美人なのに笑顔も可愛いとか無敵ですね。」
「もうすぐ10年の付き合いになりますが…迫田先生の魅力は底なしです。迫田先生の魅力がこの写真集でもっとたくさんの人達に届くと嬉しいですね。」




