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第4話 ディナータイム

嵐のような一日が終わり、通常の日常が帰ってきた。

 私の生活はほとんど誰からも連絡がなく、引き篭っている。元々、東京出身で家族も東京都内には住んでいるが、会いに行くのはお盆と年末年始だけだ。友人が一人いるので、月に一回お茶をしに出かける。後は仕事の関係で担当の南さんが連絡したり、家に来たりする。

 私が廃人の時は色々世話になった恩人だ。今は自分で家事をしている。料理は大好きだ。自分で好きなものを作れるのがとても楽しい。片付けは苦手だけど。そして私の生命の源である推し活。今日もヒナくんを愛でて元気を貰う。

 ヒナくん部屋はヒナくんのイメージカラーのピンクで統一されている。フィギュアやポスター、載っている雑誌、抱き枕等ヒナくんのグッズを出来るだけ多く収集した。今日もヒナくんはかっこよくて可愛い…。この部屋だけは汚くならないように綺麗にしている。ヒナくんの為の神聖な部屋だ。ヒナくん部屋でときめきダイアリーをしてヒナくんに悶える。毎日これを三年間繰り返している。あぁヒナくんヒナくんヒナくん今日も素敵しゅぎるよ〜。

 そんな幸せなヲタ生活を満喫して二週間過ごした後、LINEが美奈子さんから届いた。

 「報告があるから帝国ホテルのディナーに来て。真中で予約してあるから。私と二人ディナーしましょう。」

 「ドレスコードある場所で話したくないです。普通のレストランで話しませんか?」

 「嫌よ。ここのディナーが好きなの。もう予約取ったから来なさい。」

 「ドレスなんて持ってないですよ。」

 「授賞式でよくドレス着てるじゃない。」

 「一人でドレス着るなんて大変すぎますよ…。」

 「個室だから髪ボサボサでもいいから来なさい。」

 「わかりました…。」

 生活状況がバレているから今忙しくて行けませんと言う言い訳が出来なくて困る。仕事している期間以外は基本的に引き篭ってヲタ活している。ニートのような堕落した生活をしているのだ。私はドレスをなんとか一人で着て、四年前に勉強したメイクをし、髪もYouTubeをみてなんとか纏めた。外で声を掛けられたらめんどくさいので家のマンションからホテルまでタクシーで移動した。そして指定されたホテルのディナーの個室へ行った。少しだけ待ち、美奈子さんは時間通りに来た。

 「わぁ……。ドレス着ると本当に綺麗ね。特に何も努力もなくその美貌でしょ?女の敵ね。貴方友達いないでしょ?」

 「失礼ですね。友達ぐらいいますよ。美奈子さんだって美人じゃない。友達いないんでしょ?」

 「私の美人は努力型なの。貴方と一緒にしないでくれる?ムカつくから。あと友達がいないのは必要ないからよ。」

 「友達出来なかっただけのくせに。」

 「どうせ友達いるって言っても数えられるぐらいしかいないんでしょう?」

 「一人だけだけど…。」

 「ほら!友達一人ごときでマウント取ろうとしないでよ!恥ずかしくないの!?」

 「一とゼロは全然違うんだから!」

 「貴方どうせ可愛くてモテモテで困っちゃう〜てタイプだったんでしょ?そのくせ無口で話しかけずらくて…」

 「勝手に想像して学生時代の傷口を抉らないで下さいよ!」

 「そうだったんでしょ?」

 「そうでしたけど!」

 「それでずっと一人で孤立して、ずっと読書して…。」

 「私の学生時代見てたんですか!?もう辞めて下さいよ!!」

 「ちなみに私はカースト上位でモテにモテて女に嫌われていたわ。」

 「でしょうね…。」

 「美しいって罪よね。女の嫉妬とかホントに嫌になっちゃう。悔しいなら努力して美しくなればいいのにさ。ダイエットして、筋トレしてメイクも研究すれば今どき誰でも可愛くなれるのにさ。努力もせずに僻んでくるやつらが大嫌い。」

 「嫉妬が怖いのはわかります…。」

 「だから貴方と一緒にしないでよ。嫉妬で僻んでくるやつも嫌いだけど、そんな人間の底辺はどうでもいいのよ。貴方みたいになんの努力もなく、めちゃくちゃ美人な女が私は一番嫌いなの。」

 「なんなんですか!!急に呼び出されたかと思ったら、私をディスる為に呼んだんですか!?こっちはドレス着てこいって言うからくそめんどくさいのにドレス着てメイクして髪も纏めて来たのに!」

 「どうせ用意したって言っても一時間もかけてないんでしょう?それでこの完成度の美人なんだから。そりゃあムカついて文句も言いたくなるわよ。私はメイクだけで一時間はかけてるわよ。しかも毎日ね。」

 ………女子力が高すぎる。自堕落にヲタ活している私はそれはもうクズにしか見えないんだろう。

 「それだけじゃないわよ。毎日肌の手入れもしているし、体型を維持するために筋トレとヨガも毎日しているわよ。美しくいるって大変なのよ?何もしてなくても美人な迫田玲さん。」

 「私スタイルは良くないですから…顔だけですよ。」

 「スタイルもいいじゃない。胸はないけれどスレンダーで手足も長くてまぁ背は小さいけれど。いいわよね。太らない体質って。」

 「もういいじゃないですか!何もしてなくて美人でごめんなさいって謝ればいいんですか!?」

 「ハァ?なにそれくそムカつくんだけど。」

 「どうしたら正解なんですか!?」

 「決まってるでしょ。正解も不正解もないわよ。貴方の存在が女の敵なんだから。」

 「詰んでるってことですか?」

 「そうね。」

 「じゃあ私は大人しく部屋に引き篭るので……探さないでください。」

 「ごめん。ごめん。帰らないで!あまりにも美人だから虐めたくなっちゃった!ほら!前菜が来たわよ!楽しく食事しましょう!ここの料理凄く美味しんだから!」

 「なにこれ!めちゃくちゃ美味しい〜!!」

 「でしょでしょ!?ここのシェフは最高なんだから!!」

 「やっぱりプロの味は違う〜!最高!!」

 「今日は私の奢りだから!」

 「本当ですか!?ありがとうございます!!」

 「それで本題に入る前にちょっと確認したいことがあるんだけど。」

 「なんですか〜?」

 「貴方と拓人って大恋愛したんじゃないの?」

 「え?別にそんなんじゃなかったですよ?」

 「うーん。でも拓人は玲だけは特別だ。俺達は大恋愛だったって主張しているのよ。」

 「最後の恋愛だったから脚色されてますよ。それ。」

 「だから貴方からも聞きたいの。拓人と付き合った時何をしたのか。」

 「えぇ〜!嫌ですよ。恥ずかしい。」

 「ここのディナー奢ってあげるのになぁ〜。」

 「卑怯ですよ!後出しじゃないですか!!」

 「ただの恋バナじゃない。そんなので恥ずかしがるなんて幼稚園児でもしないわよ。」

 「うぅ…。」

 「さあ!話なさい!」

 「わかりましたよ…。」

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