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スゥイングしなきゃ意味がない

宮殿の中はまるで時間が顕在化したように辺りに質量を漂わせている。

勇者はその目に意思を宿すと、皇帝の前で二つ名を授かる瞬間が迫っていた。


陛下は幼き御身ながらすでにこの国を象徴する威厳を持ち、静かにその時を待っている。


「勇者ヴァレンタインよ その武勇を轟かす 名に恥じぬ活躍を向後期待する」


宰相の声が広間に響く中、「征夷の勇者」という名が漂い、彼の耳に触れた。

その言葉が辺りに響くと、広間には祝福の歓声が広がった。

勇者ヴァレンタインはその名を胸に刻み、新たな物語を挑む覚悟を固める。


−ラルキア記 3章 旅立ちより−



はい!知ってます。知ってました。

ちなみに3代目を襲名したわけで、2代目よりはやっぱ3代目だよね。収まり的にはさ。知らんけど。


ちなみに前任者は私同様に軍属だ。東方司令総監だった。

勤勉で武勇に優れ、不正を許さず、妻子を愛し、辺境部族の侵略を何度も防いだ。

第二次ニューオール戦争の際には、奪われていた敵陣領地を寡兵で攻略する。

信心深く、出陣前には祈りを捧げ、帰陣後もまた、戦場での垢を落としてから祈りを捧げた。

準大臣大綬章、王家勲功勲章を授与され、生涯軍人として現場で指揮を執り続けた。

享年57歳、多くの仲間に惜しまれながらその生を全うする。

……


さあさあ、きみもあの軍神のような帝国への貢献を期待しているのだよ、という有象無象のモブ声が聞こえてくる。

しかし自分とは主義も趣向も性癖も違う御仁を勝手に重ねられても、どうせい、というそんな心底冷めた気持ちしか湧いてこない。


まあ、若くして将校への道を示すには適した称号だと思うし、同じく辺境での軍務を継続出来るのであれば、軍内部中央の権力闘争とは無縁でいられる点はメリットだ。

それに勇者という免罪符があれば、昇進による嫉妬も多少は緩和されることを思えば、我慢してでも受け入れるべき内容だろう。


そもそも辞退なんて選択肢は最初から与えられていないのだ。


初代のことはよく知らない

物語の登場人物のようなもので、歴史の尾鰭がついた創作逸話しか出てこないから関羽やら、呂布の話を聞いているのとなんら変わらない。

曰く単騎で師団級の軍勢を退けたとか、一振りで山の形を変えてしまったとか

本当に実在していたら、ただの災害だ。


とまあ、軍の守神みたいな戦意高揚のためのマスコットキャラクターと、軍人かくあるべしというというお手本の後を継ぐという、ハードルがストップ高している二つ名を頂いたわけだ。


落ち着いて、もう少し楽観的に考えよう。頑張って複雑に考えても物事は好転しない。

世界は私が想像できるものでなければ、構成すらされない。

多少期待値は高すぎるが、国にとっての英雄となる名を継承できているということは信頼されていると捉えていいだろう。

むしろこの時代においてはオリジナルより、継承型の二つ名のが価値が高いのだ。

あとはそれに見合った功績となるが、ここは要注意である。

目立てば目立つほど利用価値が高くなりすぎて、今度は上が使いたくなるだろう。


影響力というのは、よほど慎重に運用しなければならない。

己の意思で統制できるような器官ではないのだ、ムクムクという生態系を持つ思春期の下半身と、逸らすことに失敗した異性に向ける視線の先となんら変わらない。

今だって高すぎるぐらいなのだ、両腕を縛って、金属製の貞操帯をして、アケメネス朝ペルシアのエジプト支配について思いを巡らせるぐらいで丁度いい。


アケメネス朝ダレイオス1世の治世と黄金の椅子についての考察を進めていると、侍従長が慌てて飛び込んで来るのを視界の左端で捉えた。


そしてどう考えても不要な何名かの伝言ゲームで繋いだ後、ようやく宰相の耳にまで届く。

やれやれ、あの調子だと情報が宮殿に届くまでにどれだけ無駄を経由してきたのやらと心配になってくる。

辺りは儀式の最中にも関わらず、不穏な波紋が広がりみせて、緊張感が漂う雰囲気にただ飲まれていく。


おいおい少しは落ち着いたらどうだ、幼い王も不安げに辺りを見回しているじゃないか

偉いもので宰相はさすがというべきか、眉ひとつ動かさずに一度だけ顎を縦に引いただけだ。

そして目を細めながら、こちらをまっすぐ見てくる。

まるで初めて認識したかのように、あきらかに値踏みされていると感じる。

自分の経験則からいってこれは良くない事、とても歓迎したくないことになるだろうと容易に想像できた。


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