中編 邪道
何故だろう。
勝負が終わらない。
終わりも遠い。
思い通りに行かない。
不思議ですね。
「ふふふ………貴様の信条、素晴らしい」
パチパチ
「それゃあ、あんがとよ」
少女の誉め言葉に、少女を見据えたまま、額男は礼を言う。
今の状況は、土煙が晴れてお互いが見えるようになっていた。
少女は拍手を止めて、
「だが、勝つのは我だ」
そう言った瞬間。
少女から不気味なオーラが漂いだした。
ゾワ
「っ?!」
額男は背筋が凍った感覚がした。
「どうした?宣言したのに動かないのか?」
少女の言葉に、
その通りだと思った
恐怖を感じた
自身に怒りを感じた
覚悟が揺らいだ
自身を信じられなくなった
逃げるように少女を睨みつけた
少女の表情が見えた
そして、理解した
「ふっ、舐めるんじゃねぇ!」
あの笑顔は、
対等に戦える事に喜びを表す、戦闘狂の笑いだったのだと。
少女の恐ろしくも美しい表情は、額男を勇気付けた。
それと同時に、少女に向かって真っ直ぐに走り出した。
「おいおい、真っ直ぐだと駄目だろう?」
少女がそう言った瞬間、
ザシュ!
額男の肩にナイフが刺さった。
「ッ!!」
ダン!
ガシャガシャガシャガシャ!
モクモクモク
額男は慌てて後ろに飛んで、少女から距離を取った。
「はは、油断したぜぇ」
ザシュ ボタボタ
「抜いたのなら、ささっと掛かって来い」
クイクイ
少女の分かりやすい挑発に、
「乗った」
額男はその場で、瓦礫が積もった地面を殴った。
ドゴン!!!
モクモクモク
辺り一帯に土煙が蔓延した。
「同じ手が通じると思ってるのか?」
「いや」
少女は見えない筈なのに、額男を確実に見ていた。
寒気を感じるな。
だが、それこそが戦い。
とことん、楽しめそうだ。
額男は笑い。
次の一手を打つ。
「はぁ!」
ドン!
ガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャ!!!
ダッ!
ダッ!ダッ!
ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!
額男は走りながら、舞い上がって来た瓦礫を少女に投げ続ける。
「ほぉう、中々良い考えだ。しかし……」
ボッ!
ジューーーー
「我の力の前では無意味」
何かの焼ける音を聞いて額男は「チッ」と舌打ちをして、止まった。
「魔術使えんのかよ」
額男の愚痴に、少女は答えた。
「今気にすることか?」
それも、後ろから………
「ッ?!」
バッ!
気づいた額男は、すぐに後ろを向いたが、
「後ろに何があるんだ?」
少女の声がまた、後ろからきこえたが。
それ所ではなかった。
今、額男の目の前には瓦礫が飛んで来ていたからだ。
ゴン!
「ッ!!!」
ポタ ポタ ポタポタ
「はぁはぁはぁ」
ギリギリで額男は、瓦礫を交わせたが、頬に傷を負った。
「では、次に行くぞ」
少女はそう言って、
ドン!
ピシピシピシピシ……………ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ!!!
天井を崩落させた。
「ッ?!?!」
額男は驚くよりも前に、逃げ出した。
ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ!!!!!
逃げ出したのが功を奏したのか、軽度の傷を負っただけですんだ。
「バカか!天井を崩落させるなど正気の沙汰じゃねぇ!!」
額男は怒りを湧かずにはいられない。
天井を崩落させると言うことは、潰されると言うことだ。
そんな恐ろしい事をやった本人である少女は、
「勝利の為に、様々な手を尽くしただけだ。バカと言われる覚えは無いぞ?」
首を傾げた。
「勝利の為、か………」
額男は思った。
勝利の為に、自身の身すら厭わない者程、恐ろしい者は無いな………だが、俺は諦めない。
たとえ、負けるとしても…………




