038 冬の間
マイクにカレンの加入を打診すると喜んで了承してくれた。
エントにもカレンを屋敷に住まわせてくれるように交渉したが、好きにしていいとだけ言われた。
カレンは春になれば孤児院から出ないといけない。
それまでは、神官から治癒魔法を習いつつ、屋敷で暮らせるように準備を整えていった。
私は冬の間、身体を休ませ、魔力感知の訓練を続け、魔力紙の作成を続けている。
そしてギルドで小人族アンリとして冒険者登録をした。
カレンに言われて、このまま無取得の隠密でダンジョンに入るのは、バレる危険性が高いと思ったからだ。
マイクやリックが冒険者登録した時に、碌な検査をしていなかったので大丈夫だと思う。
案の定、疑われことなく小人族アンリとして冒険者登録することが出来た。
鉄級冒険者となった私は、銅級冒険者のマイクたちと一緒に11層目に行けるかというと、行ける。
代表者一名が銅級冒険者になっていれば問題なかった。
転移陣も10層目のボスを倒した人がいれば、一緒に飛ぶことが出来る。
なぜ出来るのかは分かっていない。
ダンジョンの七不思議の一つと言われているが、私はステータスで体に刻み込まれるか、レベルで判断していると考えている。
いずれも今の人達は気づいていないシステムが働いていると思われるが、便利なことには変わらない。
ありがたく使わせてもらおう。
なので私もカレンも問題なく11層目からマイクたちとダンジョンに入ることが出来る。
最近は神社に日参している。
春まではマイクたちの武器防具が揃わないことと、カレンが加入することが理由だ。
実質の一時休業状態だが、それだけの稼ぎは得ていた。
マイクたちは冬の寒い中、どこともしれない街の中に消えていく。
私は魔力紙用の紙を手に入れるために神社に来ていた。
名前:アン
年齢:6
地位:孤児 鉄級冒険者
レベル:9
スキル:俊足2 投擲2 短剣術2 夜目2 マップ2 隠密3 魔力感知2
ステータスは新しい地位に鉄級冒険者が加わり、レベルが7から9へ、スキルがいくつか上がっていた。
ボスのホブゴブリンを倒してレベルが大きく上がったお蔭だろう。
魔力感知はあるのに、魔法の項目がないのは疑問点だった。
「キッキッキッ、お前10層目まで行ったな。もっといい魔石をくれたら、ステータス表ももっと詳しくなるぞ」
「なに? どう変わる」
「それは見てからのお楽しみだなぁ。早く見たかったら俺様にじゃんじゃん魔石を寄こせ」
飛び跳ねながら喋る子猿神は、ニヤニヤと愉快そうに笑っている。
正直口の悪い子猿が不愉快だ。だから寄進者がいないんだろう。
まあステータス表と紙は役に立つので利用させてもらうが、それ以外で子猿とじゃれ合うつもりはない。さっさと立ち去ることにした。
帰り道に市場に寄った。
訓練がてらに魔力感知を使いながら歩くと、まだ不安定で酔ってしまう。
それでも様々な人やモノに魔力が宿っているのが分かる。
これを使いこなして、掘り出し物の魔道具でも見つけたいところだ。
所々、魔力を宿した道具を見つけるのだが、使用方法と効果が分からないガラクタにしか見えない物を気軽に買う程、懐事情は良くない。
ステータスみたいな【鑑定】スキルがあれば便利なのだが、私が都合よく持っているわけがない。
結局見るだけで通り過ぎた。
市場を過ぎると、ほかほか白い蒸気が立ち上る屋台から甘い匂いが漂ってきた。
つい目を向けると、筵のような容器の中から蒸気とともに饅頭みたいな食べ物が並んでいる。
寒空の下、暖かい物と匂いに釣られて銅貨3枚で買ってしまった。
ほかほかの饅頭を真ん中で割ると、ナンみたいな皮に包まれて緑色の餡が入っている。
がぶりと噛みつくと、素朴な小麦とほのかに甘い餡の味がした。
何だか久しぶりに甘味を食べた。いや、この人生では初めてか?
買い食いしながら饅頭を食べるなんて贅沢、出来るようになるなんてこれが幸せってやつか。
ちょっとは余裕のある生活が出来るようになったことを嬉しく思いながら帰路に就いた。




