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2章 45話 「無駄な抵抗が無駄かどうかは相手が決めるという話」

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願い申し上げます!


どうもこんにちは、キアーラ・カサッツァです。

希望が絶たれると書いて絶望と読みます。

つまり人間が絶望するにはまず、希望がそこに必要ということです。

でも逆に絶望しているからこそ、人はそこに希望を見出すのではないかと思うのです。

だって何もないフラットな状態から、希望が見えたぞ!って意気込むことってないじゃないですか。まず最初に絶望があるんだと思うんですよ。



「おや? 貴方は確か……。パピヨンのところのババ、もといマダムの秘書さんでしたか」


突如現れた人物に怪訝な表情を見せていた署長だが、どうやらフレアさんと面識がある様子。フレアさんであることを認識した途端、体を固くし明らかに強い警戒を見せる。

その様子から緊張しているのが見てとれるな。苦手意識でもあるのかな?

無意識なのか腕を組んで顔を引き攣らせながらも、少しづつフレアさんから距離をとっている。周りの隊員にも署長の緊張が伝播し出したのか、ざわつき始めた。


「映えある警察署署長に覚え置きいただけたのは光栄ですが……」


場のそんな緊張感など気にした様子もなく、フレアさんは笑みを浮かべながら答える。

ただし瞳のハイライトは消えているが。


「マダムに対する侮辱は看過できませんので悪しからず」


まぁね。ババァって言いかけたしね、マダム狂信者のフレアさんが許すはずがないよね。


その眼光だけで鉄板が貫けるんじゃないかと言うくらい鋭い眼差しが署長に向けられる。

この眼差しを一度でも向けられてら苦手にもなろうと言うものだ。


こうなるともうダメだね。署長は蛇に睨まれた蛙の様に脂汗ダラダラで硬直してる。

直接睨まれたわけではない隊員も動きを止める。

王虎とやりあえる猛者たちも、狂気に対する恐怖は拭えずと言ったところか。


「きっ、気をつけよう」


その場にいる皆が硬直する中、とうの本人である署長が震える声を上げる。

へぇ、ちょっと署長の評価を上方修正だ。よくこのプレッシャーに耐えられる。

見直したぜ。


「そ、それで? 今日は一体なんの要件ですか? 見ての通り立て込んでいるんですよ。いや、本当に」


しどろもどろになりながらも、嫌味を忘れないその姿勢。

そこにシビれないし、憧れないけど感心はする。


署長の問いかけにフレアさんがこちらを一瞥して答える。


「……そちらの娘は私どもの家族です。引き渡していただきましょう」


フレアさんが俺を見た一瞬表情を歪めた。すぐに笑顔に戻ったけど。

……ひでぇツラみたいだからな、今の俺。心配をかけて申し訳ない。


しかし、ルナのヒント通りフレアさんが助けに来てくれたか。

時間稼ぎをして正解だったぜ。これで俺も王虎もピンチを脱出できそうだ。

いっときは王虎が捕まることを覚悟したが、なんとかなりそうだ。

俺はホッと安堵のため息をつく。


「……いや、それは出来かねますね。一応重要参考人という形で保護が必要でして。いや、本当に」


しかし、フレアさんの要請に対して、あたふたとビビっていた署長の目が細まり声の震えがとまる。弱気な表情は鳴りを顰め、むしろ威嚇するようにフレアさんを睨め付ける。

ようするにガンをつけている。

自分の面子や利益が侵害されそうになったのでバチこり覚悟が決まった感じだな。


「……何から保護なさるおつもりですか?」


そのガンつけに臆するどころか、さらに目つきが鋭くなったフレアさんが問いかける。

署長の目つきが鋭さを増しイラつきもましていく。


「当然、そこにいるギャングからですねぇ。そちらの少女が極悪なギャングと関係があるとの情報がありましてね、それが事実であれば、公僕として大人として、誤った道に進もうとしている子供を保護して厚生させなければなりません。いや、本当に」


子供の保護などと心にもないことを当然のことかのように抜かす署長。

こいつらがそんな殊勝な事を本当に思っているのであれば、もう少しスラムの環境も良かっただろうよ。その場限りの適当な言い分だ。


「でしたらその必要はありません。その子はその虎男とは全く関係がありませんので。家族の私が言うのです。間違いありません」


当然フレアさんも署長のそんな戯言は信じておらず保護に反対してくれる。

お偉方にもパイプのあるパピヨンが出てきたとなれば、おいそれと俺たちを逮捕したりはできないはずだ。このまま政治的な判断に持ち込めれば、ひとまずこの場を乗り切ることはできるはず。


「ちっ……。しかし、そうは言いますが、家族とはいえ知らないこともあるのでは? その少女が隠していたらなおさらだ」


署長も旗色が悪いのを感じたのか苛立ちに舌打ちをする。

その後もなんとかイニシアチブを取ろうと弁舌を繰り返すが、ここでの討論にもはや意味はない。

難癖をつけて嵌める様な形でこちらを確保しようとしたこの茶番劇が成立するのは、警察の強権という大鉈を振るえたからだ。

警察ほどではないが、根回しもなしに相手をするのが面倒な、フレアさんが出てきた時点でもう、終わりなのだ。


だが、ひとつ気になるのはフレアさんが王虎と俺の関係性も否定した事だ。

その論調では俺はなんとかなるが、王虎の確保を回避するのは難しいのではないだろうか?

王虎の方を見ても、ことを見守るばかりで口を挟もうとしない。

どう言うつもりだ? 逃げるタイミングをはかっているのか?

だが、今の体力では難しいのでは?

そう俺が問いかけようとおもったが、署長とフレアさんの会話に不穏な影がさす。


「はぁ、しかしそうは言いましてもねぇ。私も上にね? 言われてやってることですから。わかるでしょ? 貴方も。色々あるんですよ。いや、本当に」


「……わかっております。ですから、家族だけ引き渡していただきます」


……どう言うことだ? パピヨンの家族は女だけだ。男はいない。

それでは王虎を見捨てることになってしまう。

ここからどう挽回するんだ?

混乱する俺をよそに会話は続く。


「はぁ、本当にその少女は王虎君とは無関係なんですかね? いや、本当に。いくら貴方のご家族でも、もしその少女がマフィアなら、この場にいた以上こちらに引き渡していただく必要がありますよ?」


なかばヤケクソの様に言う署長に王虎がとうとう口を開く。


「頭大丈夫かよ? こんな子供がマフィアなわけないだろ? 俺とこいつは全く関係がない。見たこともないやつだ」


それは俺との断絶を示すかの様な言葉だった。

真実を語る必要はないが、今その嘘になんの意味があるんだ?

俺としたことが計算が追いつかない。


そしてその間に署長が王虎の煽りでキレだした。


「んなわけねぇだろうが! どっからどう見ても知らねぇ訳がねぇ! そのガキが俺に何してくれたと思ってんだ! あぁ?!」


毎回理不尽にキレているが、この場合は署長が正しい。

俺と王虎は仲間で、俺はマフィアでバンビーニのボスだ。


「大体、このガキがクソババァの家族ってのも嘘だろうが! てめぇら、適当こいてんだろ! わかってんだぞ俺はよぉ!」


なおも喚き散らす署長。これも署長が正しい。

俺はパピヨンの一員じゃない。

俺はバンビーニの一員だ。


俺がそう言おうとするが、フレアさんが弾かれたような速度で、署長に詰め寄り喉元に手刀を突きつける。いつの間にか爪が鋭く伸びている。

あまりの速度に隊員も反応できていない。


「マダムへの侮辱は許さないと言ったが? 死にたいのか?」


地の底から響いてくるかのような声で問いかけるフレアさん。

しかし署長はその腕を掴むとその腕を押し戻す。


「それはこっちのセリフなんだよ。てめぇをぶっ殺すのなんか簡単なんだぞこっちは。あ? グチャグチャにしてやろうか?」


組み合っての勝負では、猫の獣人たるフレアさんとラーテルの獣人たる署長だと、そのフィジカルの強さで後者に軍配が上がる。

頭に血が上って相手の土俵に踏み込んだフレアさんのミスだ。


「それでは私どもと事を構えますか?」


だが、彼女が優勢なのは戦闘力が高いからではない、バックにパピヨンがついているからだ。

だからこう言われてしまっては署長は彼女に手出しができない。

署長はしばらくフレアさんを睨みつけていたが、忌々しそうに顔を歪めると投げ捨てるようにフレアさんの手を離す。


「………………いいでしょう。既に主目的は果たされています。たかだかブダイの小娘一人くらいくれてやりましょう」


長い沈黙の後、負け惜しみのように、いや実際負け惜しみなのだろう、プライドの高い署長は血を吐くようにそう吐き捨てる。顔は怒りで醜く歪んでいる。


「そうですか。では、遠慮なく」


それに対してフレアさんは何事もなかったかのように涼しい顔をしながら俺の元にやってくる。そして俺の手をとって入り口に向かおうとする。


「いや、待ってくれ。王虎も助けないと」


しかしフレアさんは何も言わずに、俺の顔を見て悲しそうな顔をすると、空いた手で俺の頬を撫でる。


「フレアさん?」


その顔はどうしようもないことを、言いあぐねている様な表情で、嫌な予感がどんどん加速していく。


「王虎がいないと、まずいぜ? だから、助けないと」


理路整然とフレアさんに説きたいが上手い言葉が出ない。

代わりに俺を連れていこうとするフレアさんに抵抗しその場で踏ん張る。


「キアーラさん」


そう呼びかけるフレアさんはむしろ優しげで、こちらを気遣ってくれるのがわかる。

だがその事が、むしろこの後に起こるであろう事を裏付ける。


___なんだよ。フレアさんが来てなんとかなるんじゃんかったのかよ。


フレアさんが王虎の方を見ると、王虎は肩をすくめやれやれと首を振る。

そして俺に笑いかけると署長の方に向かって叫んだ。


「あぁ〜、全然関係ない小娘にかまけてると俺また暴れちゃうかもなぁ。早く逮捕してくれねぇかなぁ」


「……棒読みがすぎます。白々しすぎますよ」


苦笑するようにフレアさんは言い、少し悲しそうな顔をする。


「ちっ。馬鹿にしやがって。おい! そのデカブツを拘束しろ!」


署長の声に隊員たちが王虎を拘束していくが、王虎は抵抗をしない。

何やってんだよ……。

そんなにガチガチに固められたら王虎だって脱出は難しいんじゃないのか? どうすんだよ? フレアさんが来てパワーバランス変わったろ? 王虎が捕まる必要もないだろ?


___もう、頭ではわかっているが、その事実を受け入れる事ができない。


「フレアさん。あいつになんとか言ってやってくださいよ。このままじゃ捕まっちまうぞって」


アホみたいに突っ立ってる王虎を見ながら、フレアさんの袖を引く。

だが無情にもフレアさんからは聞きたくない事実が告げられる。


「我々が助けられるのは貴方だけです。これはそう言う話なんです」

お読みいただき誠にありがとうございます!

2022年一発目の投稿ですが、特に派手な展開はありません!

特別な何かもないっす! 申し訳ない!


そんな作者ですが、今年もよろしくお願いいたします。

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