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2章 43話 「虫って実は強いよなって話」


どうもこんにちは、キアーラ・カサッツァです。

獅子身中の虫と言う言葉があります。

強者の代名詞とも言える獅子ですらも、体の中に虫が入り込んじゃうといずれは生命を落としてしまう、転じて組織内にいる裏切り者を指す言葉です。

そんな恐ろしい虫ですが、逆に寄生虫が巣くったせいでダイエットに成功したと喜んでいた女性を見たことがあります。虫下で倒せると分かっているとはいえ逞しいものだと思いました。




「そう言われて、はい、そうですかと答えるマフィアはいねぇと思うがね? 常識が足りないんじゃねぇか?」


自制心を捨てて自尊心に極振りしているはずの署長の落ち着いた降伏勧告代に、怪訝な表情を見せながらも王虎は挑発で返す。


「あぁ、もうそう言うのはいいんで。いや、本当に」


あまつさえ署長はこちらのあからさまな挑発に、激昂することなく投げやりに返してくる。その態度はまるで、思い通りにならなかった子供が不貞腐れているかのようだ。


「それと……疑問なんですがね? マフィアってのは一人でできるもんなんですかねぇ? いや、本当に」


肩をすくめながらやれやれと嫌味ったらしく意味深なことを言う。


「……どういう意味だ?」


署長の態度もさることながら、言葉の内容も不可解。

主導権があちらに移ってしまうが、見過ごすことはできない内容に王虎が問いかける。


「そのままの意味ですがね? いや、本当に。まぁ、言っても信じてもらえないと思いますので、サクサクいきましょう。もう、いい頃合いなんで。いや、本当に」


そう言いながら署長は隊員たちの後ろに陣取る。

やはり、何かがマズイ。

こいつの性格ならこちらの問いかけにマウントをとりながら、嬉々として答えるはず。

だがそれどころか、後ろに下がった。

自己顕示欲の塊みたいな奴がだ。

それはもう挑発には乗らない、相手にしないという意思表示だ。


「えぇ〜。抵抗せず、投降してください。もし、王虎君が抵抗をしたりしたら、そちらのお嬢さんに対する指導に熱が入ってしまうかも知れません」


やる気のない業務連絡のように淡々と告げてくる署長。

もはや結果に興味はなく、せざるを得ないので仕方なくやっていると言うふうだ。


「えぇ〜。うちの部下達も指導に熱心ですので、指導の際につい手が滑って銃弾が飛んで行ってしまうかも知れませんね? いや、本当に」


俺を人質にとっての脅し。

だが屈辱を与えた俺にやり返すチャンスだと言うのに、署長のその言葉には熱がない。


___ジリジリと焦燥感が這い上がってくる。

もうすぐ致命的な結果が待ち受けているような、そんな予感。

一人でマフィアができるのかと言う発言。

いい頃合い。それらが指し示すものはなんだ?


考えなきゃヤバい気がする。思考を回せ。ここを乗り切らなくては!

湧き上がってくる恐怖感とも言える感覚に思考がまとまらずにいると、意外なところから声が上がった。


「……抵抗するな。俺たちに撃たせるな。もう、時間切れだ」


驚くことに出どころは隊員の一人だった。


「ここで抵抗しても意味がない。ここから逃げても意味がない。もう既に作戦は全て完了した。残っているのは、俺たちがそちらの子供を撃って、責任を取らされて左遷されるかどうか。たったそれだけの事しか残っていない」


揺るぎない事実を述べるかのように淡々と喋る隊員。

やはりそこには先ほどまでの戦闘の興奮も何もない。

ただただ事務的な響きだけがあった。


意味がないだと? なぜそれをお前らが決める? 決められる?


「責任を取らされてと言うのは気に入りませんし、勝手に発言したのも気に入りませんが、まぁ良いでしょう。仕事もひと段落つきましたし、左遷は無しにしてあげます」


署長が恩着せがましく隊員に言う。

そして何かを思いついたかのようにニチャリと笑ういながらこちらに言ってきた。



「と言うことで、哀れな部下に免じて投降してください。無職(・・)の王虎君」


無職を強調しながら楽しそうに言う署長。


なんだ? マフィアは職業として認めないと当てこすっているのか?

いや、まてよ? 無職の王虎……最近どこかで聞いたフレーズだな。


俺が思い出せずにふと王虎の方を見ると、王虎はハッと何かに気づいたかのように目を見開く。どう言うことかと声をかけようとすると、その前に王虎が口を開いた。


「……わかった。抵抗しない。そのかわりこの子供は許してやってくれ。本当に無関係なんだ」


「おい!? 何言ってんだ?!」


俺は驚き王虎に詰め寄る。


「冗談や作戦に聴こえねぇぞ! マジに降伏なんてしてどうする?! ここで投降したって命の保証はないし、何よりバンビーニだってどうなる!」


胸ぐらを掴んで睨みつけてやるが、俺は王虎の目を見て息を呑む。

この目は見たことがある。俺にバンビーニを託すと決めた時同じ目だ。

覚悟がガンぎまってグラグラと心が煮えたぎってる目だ。


「どうやら、俺ぁちいとばっかり、やり方を間違えたみたいだ」


その怒の形相にも似た表情とは裏腹に自嘲するかのように言う王虎。


「考えてみたら当たり前だ。譲り渡すなんてのは、どう考えたって流儀じゃねぇ、道理がねぇ、何より分かりやすくねぇ」


そして唸るように言う。


「俺たちは武闘派マフィアだ。シンプルなのがいい。シンプルで分かりやすいのがいい」

今更なにを?


今度は(・・・)力でねじ伏せてわからせろ。誰がボスなのか教えてやれ」


今度……? どう言う意味だ?


「次に会えたら、お前が作ったファミリーを見せてくれ」


そして王虎はニヤリと笑い立ち上がる。

いつのまにか胸ぐらを掴んでいた手は外れてしまっていた。


おいおい、……まるで後を託して死んじまうフラグに聞こえるぜ?

縁起でもねぇ事言うんじゃないよ。

そう茶化そうとしたが、声が出ない。

それすらフラグになっちまいそうで……。


「なに深刻そうなツラしてんだ。大丈夫だよ。殺されはしない。今この瞬間に撃たれてねぇのが証拠だ」


考えが顔に出ていたのか王虎が苦笑しながら言ってくる。


「おいおい。考えんのはお前の仕事だろうに。ヒントはたくさんあったぜ? 俺が気づくくらいにな」


王虎が署長たちの方に向きながら両手を上げる。

ヒントだと?


「恐らく今回の相手が欲しいのは奈落の奴らを治しちまったなにか(・・・)の情報だ。悲しいがそれ以外に俺たちにここまでする価値があるとは思えねぇしな」


憮然とした王虎の表情と不貞腐れた声に、自分の頭が冷えてくるのがわかった。


くそ。どうやら俺はだいぶん錯乱してたようだな。

そりゃそうだ。アイドル活動で警察はうごかねぇよな!

それは警官隊を導入する口実で、本質は別にあるに決まってる。

なんでそんなことに気づかなかったのか……。

デカい相手だってことに思い至って焦ったか?


いや、だが言い訳させて貰えば、次から次へと色んなことが起こりすぎだ!

こちとら幼女だぜ? 脳みそがまだ小さいんだから手加減してくれよ。


俺は愚痴を溢しながら、頭を回す。

恐らく奈落の奴らがケールで治ったのはバレてるだろう。

だから欲しいのはその情報じゃない。

とすると、多分欲しいのは、なんでケールなのかと言う事。


草を食って不治の病が治ったなんてのは意味不明なはずだ。

そこには秘密がある。その事(・・・)だけは知っていた。

いや知らされたが正解か?


秘密があるならその原理が知りたい。どうしてそうなるのか?

だが協力者(・・・)はそこまでは知らない。

じゃあ、知ってそうなやつに聞くしかない。

でも王虎(そいつ)はクッソ強いから正攻法では聞き出せない。

じゃあ、外道な手段でも強行するしかない。

大腕を振って武器を大量に使える奴らに頼むのがいい。


だから警察。


しかしそんなに簡単には警察は動かせない。

使えてその手は一度きり。

それ以上はその道で生きていけなくなる。

だが協力者がいるため、お膳立ては期待できてリスクは最小限と。

してやられて当然の状況だったわけだ。


答え合わせも大事だが、重要なのはなんでそんなことが知りたいかだ。

それを知らなければ、戦うこともできない。


俺たちは___まだ弱い。


「お話は終わりましたか?」


署長の声に思考の海から意識が戻される。


「どうやら本当に投降するつもりのようですね? まぁ、素直にこちらに従うと言うなら、あなたの顔を立てて、アオブダイのお嬢さんの命は保障しましょう」


そう言いながら署長は王虎を拘束するように指示を出し、数名の隊員が王虎を取り囲む。


「わかってると思うが、虫に(・・)気をつけろよ? この状況を上手いこと活用しろよ?」


王虎が俺の方を見ずに言ってくる。


「わかってるよ。獅子だけじゃなく、虎の身中にも虫が湧くとはな」


獅子身中の虫。


___裏切り者。


どうやら今世でも俺は裏切りに合う定めだったらしい。

王虎を獲られるという致命傷を受けたが、まだ致命傷すんでる。

俺たちはまだ死んじゃあいない。

こいつの捨て身の一手を生かして裏切り者から情報を引き出してやる。

今頃、俺たちがいない間に、バンビーニを手に入れて油断しているアイツにわからせて(・・・・・)やらないとな。


「連れて行きなさい」


面倒臭さを隠そうともせずに、どうでもいいとばかりの署長が近づいてきた。

どうでも良くなっているがゆえに注意力が散漫だ。

隊員も緊張して王虎の拘束に専念している。


嗚呼。

この世界ではいついかなる時でも、どんな相手でも油断してはいけない。

この世界はヘルモードなのだから。

この敗北はその教訓として受け入れよう。


だが、それはそれとして___


俺は痛む体に鞭打って、全速力で全身全霊をかけて走り出す。

ワラワラいる隊員たちが目眩しだ。

そして目標に向かって全力ジャンプ!


「はごぉっ!」


頭にぐにゃりとした感触を感じると共に署長の情けない呻き声。

これぞED本田も真っ青のロケット頭突きだ!


鈍痛に膝をつく署長。

顎に向かってロケット頭突きだ!


「ガギッ!」


あわよくば舌でも噛んでほしかったが、残念!


「おい! なにしてる!」


気づいた隊員が慌ててこちらにやってくる。

ついでにお前もロケット頭突き!

あ、捕まっちゃった。残念!


俺は隊員にはがいじめにされながら、まだうずくまっている署長を見やる。


あのさぁ、ラーテルってさ。背中の防御は最強だけど、反対にお腹側は柔らかいのよ。

本来なら地面に面しているから問題ないけど、署長は弱点が丸出しだ。

なんつぅか直立歩行したらダメだろ。


殺されないとわかったならやるでしょ。

痛い目には遭うかもしれんが、王虎を連れていかれる痛さに比べりゃ大したことじゃない。


それはそれとして___きちんと仕返しはさせてもらうぜ。

そして、次に会うときは必ず、タマ(・・)ぁとったるで覚悟しとけよ。

お読みいただき誠にありがとうございます!


今回キキが勝手にはっちゃけたので、この後の展開がプロットから外れてしまいました!

大筋から外れたのでキキちゃんによる危機を迎えた作者。

どうなるのか?!


皆さんの応援が力になりますので、下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を★★★★★こう!

ブックマーク追加と感想もお待ちしております!


おらに力を分けてくれ!

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