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2章 40話 「大事の前には小事があるって話」

※注意! 今話は、きちゃない行動が含まれます! 苦手な方はご注意ください! 胸糞とかではないです。


どうもこんにちは、キアーラ・カサッツァです。

世の中には面従腹背という言葉があります。

見た目は相手に従っているように見えても、内心は従っていないと言う意味です。

戦国時代の武将は全員これのイメージです。(偏見)

野心がある人は大概そうじゃないかと思うんですよ。

しかし、野心があろうが力があろうが無かろうが、運命と言う抗い難い相手には誰しもが従わされ、選ばされてしまうのではないでしょうか?

それがどんなに苦渋の選択だったとしても。


「たすけてくださーい。ころさないでー」


犬笛だってもっとビブラート効いてるだろうにと、思うくらいに抑揚のない棒読み台詞

を吐く王虎。

もしかしたらこれが王虎の全力演技なのかもしれないが、煽っているようにしか聞こえない。

チラリと署長の顔をうかがうと、案の定顔を赤くしてプルプルし出した。


「おい……もう少し、同情を誘うように言えよ。署長怒ってるじゃん」


小声で王虎だけに聞こえるように言うと、びっくりしたような顔をする。


「何言ってんだ。誰が見てもビビり散らかしてただろうが」


やっぱり全力だったようだ……。

仕方がない、俺がフォローしてやるか。


「ひー、こわいよーゆるしてー」


「……おい。お前こそ子供らしく怯えたように言えよ。石像だってもっと上手く震えるぞ?」


何言ってんだこいつ。どんな悪党だって、今のを聞けば同情する事間違いなしだぞ。

そう思って署長を見ると、真っ赤を通り越して赤黒くなったお顔がそこに。

解せぬ。


「仕方ねぇ、俺のとっておきを見せるしかねぇか……」


悲痛な響きを伴いながらも、自信がありそうな物言いの王虎。

これは期待できるかもしれん。

俺が期待の眼差しを向けると、王虎は一つ頷き口を開く。


「う、うわー。そんなおそろしい顔で見ないでくれー。ビビっちまって漏らしちまいそうだー」


棒すぎる。もう、如意棒よりも棒。

……駄目そうだな、と思ったその時。


___シャー


水を勢いよく噴射した時のような音がしたかと思うと、王虎のズボンにシミが広がって、そして物凄い勢いでビチャビチャになる。


……え? なに? まさか?!


「みっ、見ないでくれぇ!」


今までの棒読みが嘘かのような迫真の叫びを上げ、ガバりとズボンを隠すように丸まり伏せる王虎。

多分マジで恥ずかしかったんだな……。


だがしかし、人として大切なものを賭けた、捨て身の大技は確かに功を奏したようだ。

最初は目を白黒させていた署長だったが、何が起きたのかを把握すると、ブルリと身を震わせ喜悦満面の表情を浮かべた。


成人男性のお漏らしで嬉しそうにする、中年男性……。

この世の地獄かな?


「ほひっ! ほふふふふっ! ぎゃぁっはっは! あの! 泣く子も黙る殲滅の大虎が、俺にビビってションベン漏らしやがった!」


火がついたように大爆笑する署長。王虎を指差しながら聞くに値しない罵詈雑言を並べ立てている。しばらくかかりそうだね。

しかし、殲滅の大虎ねぇ。何だその往年の不良漫画に出てきそうな二つ名は。

気になったので、丸まったままの王虎の背中に問いかける。


「いやぁ、バンビーニを作る時に、クソどもをぶっ潰したんだけどよ。一人残さず全員たいらげたら、いつの間にか呼ばれてた」


顔を上げずに飄々と答えているが全員て。

相手も一角のマフィアだろうによ。やっぱ、ハンパねぇな。

だがまぁ、そんな半端ねぇ大虎も今は羞恥心で丸まっているわけだが。


「そう言うなって……。この歳でお漏らしするのは中々勇気がいるんだぞ?」


「そんなのは勇気とは言わねぇ。しかし、よくもまぁ都合良く漏らせるもんだな」


「こう見えて虎の獣人だからよ。マーキングする為に自由自在なのよ」


そう答える王虎の声はどこか自慢げだ。

お漏らしを自慢する成人男性。

この世の終わりかな?


「するってぇと、なにか? 周りを銃に囲まれて絶体絶命のピンチにお前は縄張りを主張してた訳か?」


「おうよ」


やっぱり自慢げだ。

しかし、あながち大袈裟でもない。

普通だったら、この状況にキンタマ縮みあがって、出そうと思っても出せやしないはずだからな。でっけぇ肝っ玉してなきゃ無理ってもんだ。


「多分、スラムの男どもなら誰でもできるぜ?」


なんだと?


「冬に凍った窓を開けるのに、小便かけて氷を溶かすんだよ。割と必須技術だぜ?」

……冬の寒い時にわざわざ小便かけてまで窓を開けなきゃいけない状況についてはこの際置いておこう。


「あ、やべぇ」


不意に王虎が声を上げる。

なにか問題か? この状況で追加のイレギュラーは勘弁だぞ?


「いや、ちょっと量が多すぎて顔の方まで水溜りが広がってきた。このままだと溺れちまう」


ブホッ! まだ放出中かよ! どんな洪水だよ! 止めろよ! 顔をずらせよ! 甘んじて受け入れるなよ! ツッコミ過多! やめろよ笑かすの! 


俺は声を出して笑うわけにもいかず、口を押さえて必至に耐える。

少しでも口を開けば、ツッコミと爆笑が溢れ出てしまう!

体が酸素を求めて、震えてきやがったゼ!


「おやおや、頼みの綱に失望して、やっと現状が理解できましたか? そんなに震えてしまって、可哀想に。いや本当に」


署長がなんか言ってくが、それすらもツボに入る。

やめろぉ! 明後日の方向すぎる見解をドヤ顔で言うなぁ!

死んでしまう……。このままでは笑い我慢死してしまうっ!


「たっ……たすけてぇっ!」


自然と口から許しを乞う叫びが溢れてしまう。

だって、罵詈雑言のターンが終了した署長が、精一杯格好をつけた角度で髪をかき上げてるんだもの! その状況で俺たちにちゃんと聴こえるように、ちょっと声を張っているんだもの! これは……俺を笑い殺しに来てる!

得意満面の顔がもうおかしすぎる!

苦しくなってきやがりました!


「やっと、らしくなってきましたねぇ。いや、本当に。私が上で貴方達が下。私が見下ろし、貴方達が這いつくばっているのが正しい。これがあるべき姿です。いや、本当に」


え? 成人男性が漏らしているのを喜んでいるのが正しい姿なの?

そうなの?

……プギャァー!


「もう……ダメ、ゆるしてっ……」


「どぉう、しましょうかねぇ! いや、本当にぃ! 誠意を見せてくれたら、考えましょうかぁ! いや、マジでさぁ!」


震える声で懇願する俺に、さらに気をよくしたのかステップを踏んでんのかぐらいの足取りでこちらに向かってくる。テンションの高さも今の俺にはヤバい。


「おやめください! 近づいては危険です!」


そこへシリアスで緊迫した声が響く。

署長の肩を掴み引き止めたのは隊員だ。

職務的に当たり前の対応で当然の行動。

だが、この署長(おとこ)には一般人の当たり前は通じない。

署長は肩に置かれた隊員の手を払うと、当然(・・)銃をブッ放す。


「いまさぁ! いい気分になってんの! それにさぁ! 水を差すなよ! なぁ!」


ワンセンテンス毎に銃弾を叩き込む署長。

しかし件の隊員を殺すつもりはないのか、足を撃つにとどまっている。

まぁ、撃たれる方には何の慰めにもならんだろうが。

何でこんな奴が頭やってんのかね? いや、本当に。


ひとしきり銃を撃って落ち着いた署長が、また笑顔に戻るとこちらを見てくる。

いやらしい嗜虐的な笑顔だ。普通の子供が見たらトラウマ決定だぞ?


つまり……ここだっ!


「ひっ!」


俺は全力の演技で怯えた声を上げると、立ち上がって下っ腹に力を込める!


溢れ出せ! 俺の熱きパトスよ!!

黄金の輝きを持って現世に顕現せよ!

こい! 黄金の液体の流れゴールデン・ソリッド・スクリーム


___シャー


因みにパンツはさっきミンチになっちゃった館長に剥ぎ取られたままなので、俺のパトスは地面にダイレクトアタック! 立ち上がったのは、そうしないと服に染みるだけで演出効果が発揮されないからだね!


「お前……やるじゃねぇか」


幼女の放尿に感嘆の声をあげる、お漏らし成人男性(王虎)

何かの規制に引っかからないかな?


「お前もその技を使えるとは。どこでそれを?」


掘り下げるなぁ。

何やらマジで大層な奥義のように思えてくるよ。いや、嘘だけど。

しかし、どこで……か。

まさか、パピヨンでのセッションがここで活きてくるとは……。

ある意味ありがとうフレアさん。人生なにが役にたつかわからんもんだね。


さて……ここまでやったんだから、当然(・・)お前は喜んでくれるだろう?

なぁ、署長さんよ。


「ヒャッハァ! ビビりすぎじゃね? ビビりすぎまくり、まくりすぎじゃねぇ?!」


そうだよな? アンタは人の醜態を(あげつら)わずには居られないよな?

言動がおかしくなるくらいに人の失敗や弱った姿が大好物で、上から見下し踏みつけないと気が済まないよな?


「ひどいことしないでぇ」


そして、こう言われたらお前は必ず我慢できない。


「ん〜? どぉしよっかなぁ?」


考えるふりをしながらニマニマと近づいてくる署長。


もう、こいつの中では俺たちは脅威になり得ない。

だって小便もらして自分にビビっているから。

既に勝っているから、後は自分の思い通りになるだけ。

自分は優れているのだから当然(・・)そうなってしかるべき。

不都合なことはなにも起こらず、お楽しみだけがある。


「許してあげようかなぁ? どっしよっかなぁ?」


普通なら警戒してしかるべき、不用意に近づくべきではない。

別に動けなくなったわけでもなんでもないのだから。

だがそんな当たり前(・・・・)はこの署長(おとこ)には通じない。


俺の目の前までやってきた署長は、俺の目の高さまで顔を下げて覗き込むようにすると問いかけてくる。


「許して欲しいか?」


無言で頷いて見せる。


「痛いことされたくないか?」


再び首肯。


「どうしてもか?」


首肯。

そして署長は少し考えるふりをしたあと、ニッコリ笑って口を開く。


「だぁめ! ダメダメダメダメ! だぁあめダメ!」


首が壊れるくらいに横に降りながら、涎を撒き散らしながら嬉しそうに言う。


「お前もボコボコのボコ決定だぁ!」


ほら我慢できなかった。

やめてといえば絶対にやると思ったよ。


「あっそ。じゃあいいや。こっちでなんとかすっから」


「ほえ?」


間抜けな声を聞くと同時に目の前の鼻面に頭突きをかます。

幼女の物とはいえ、全力で頭蓋骨を鼻に叩き込まれればクソ痛い。


鼻を押さえて仰反る署長。

するとあら不思議。俺の目の前には丁度男の急所がこんにちは。

幼女の物とはいえ、全力で頭蓋骨を急所に叩き込まれればバチクソ痛い。

だから迷わずDo it!!


「こっ!」


引き攣ったような短い悲鳴をあげた署長の首を、横から太い腕が締め付ける。


「げぇっ」


署長にカエルのような悲鳴をあげさせたのは当然、王虎。


「なんだかなぁ。やっぱり、今日の俺は良いところがねぇなぁ」


いやいや、大の大人が漏らしたから効果があったんだよ。

今日イチの大活躍だったよ。

俺がそういうと王虎は肩をすくめて、腕の中でもがく署長に話しかける。


「さて、さっきと同じような状況に戻ったが、失敗の責任は取らなきゃいけないんだったか? どうする署長さんよ。あんたも撃たれてみるかい?」


腕で首を固定された署長は頷くことも声を出すこともできず、ただ顔を真っ赤にしながら唸るのだった。




お読みいただき誠にありがとうございます!


命のやり取りしてるのに、そんなこと気にすんのか? みたいな事を表現したらこうなりました。

ふしぎですね?

でも家康も漏らしながら撤退戦をしたらしいですし、普通ですよ普通。

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